一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

5月2日の大野教室(中編)

2021-06-11 01:44:02 | 新・大野教室

第3図以下の指し手。▲2三桂△5六歩▲2四角△3三銀▲1五角△2二銀上▲1一桂成(第4図)

銀桂交換も代償として、▲2三桂は期待の一手。だが大野八一雄七段に△5六歩を利かされた。そこで▲3一桂成はあったかもしれないが、私は黙って▲2四角。△3三銀にも▲3一桂成はあったが、私は▲1一桂成のほうを楽しみにしていた。
△2二銀上にようやく▲1一桂成としたが……。

第4図以下の指し手。△1一同銀▲3三角成△同玉▲2一飛成△6六桂▲4一竜△7八桂成▲3一竜△4四玉(第5図)

大野七段は成桂をつまみ、△1一同銀と指そうとする。そのときイヤな筋が見え、着手を躊躇した。厳密には着手していないので、成桂を戻せば指し直しができる。しかしプロの矜持としてそれはできないところで、大野七段は(まあいいか)と△1一同銀と着手した。
すかさず私は▲3三角成と切り、△同玉に▲2一飛成。これが金銀両取りにもなって、一遍に下手が優勢になってしまった。
△6六桂には一足先に金を取り、△7八桂成に私は▲3一竜の王手だが、ここはもう一枚▲1一竜と欲張っておくべきだったかもしれない。
△4四玉と上がられた局面が意外に難しく、驚いた。

第5図以下の指し手。▲4六香△同銀▲4五銀△同玉▲4六歩△5四玉(第6図)

第5図で▲4六歩と突ければ話が早い。仮に△4六同銀なら▲4五歩△同玉▲3六金△5五玉▲4六金△同玉▲4七銀打から上部を厚くして下手必勝である。だが▲4六歩に△6八金▲同金△同成桂▲同玉△5七角▲7八玉△4六角成となると、これは上手陣が厚く上手勝ち。
こっちは簡単に飛車を成って必勝形と思っていたが、その前は銀桂交換、角銀交換で駒損をしている。△4一金をタダ取りしたようでも、下手も▲7八金を取られている。思ったほど形勢は離れていないのだ。
焦った私は▲4六香から何となく上手陣を薄くしたが、香損はかなり痛かった。

第6図以下の指し手。▲5五歩△6三玉▲6四歩△7二玉▲8三銀(投了図)
まで、76手で一公の勝ち。

私は読み切れず▲5五歩。△同玉と取られてもダメっぽいが、大野七段の指し手に委ねようと思った。
大野七段は△6三玉。これはありがたく、一本▲6四歩が利いた。△同玉は▲5四金までである。
だが△7二玉に指し手が分からない。しかしここで逡巡するわけにはいかず、私は「読み切ってますヨ」というテイで▲8三銀。「そうか……」とつ大野七段はつぶやき、そのまま投了してしまった。

「え? 投了ですか? 詰んでますか?」
と私。
「え? 読み切って指したんじゃないの?」
「いえまだ読み切れてなくて」
「……。詰んでるでしょう。……うん詰みだよ」
「あっ、▲8三金か」
「うんそう」
整理すると、投了図から△8三同玉▲8一竜△8二香▲9五桂△8四玉▲8三金(参考図)。以下△9四玉なら▲8五銀△9五玉▲9六歩までで詰む。

大野七段は第4図の△1一同銀をやはり悔やんだ。ここは△1四歩と様子を聞くのがよく、以下いろいろやったが、下手が容易ではなかった。
しかし、コトはこれで終わらなかった。帰宅してから考えたのだが、参考図で△9五玉とされたら、上手玉は詰まないのではないか? 以下▲9六歩△8三玉▲8五銀は△8三玉である。よって▲9六歩では▲9一竜くらいだが、すると△6八金で下手玉が詰んでしまう。
といって参考図の▲8三金で▲8五銀でも、△7五玉で詰まない。私は呆然としてしまった。
指導対局の勝敗など上手はどうでもいいが、下手の立場は複雑である。私はお情けをかけてもらった気がして、気分がどんよりするのだった。
話を戻して、6局目である。奨励会受験を目指す、いつもの少年とだ。これは総譜を記そう。

初手からの指し手。▲1六歩△1四歩▲7六歩△8四歩▲2六歩△3四歩▲2五歩△3二金▲9六歩△9四歩▲7八金△8五歩▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛(第1図)

少年相手に一度指してみたいのは△4五角戦法である。昭和50年代に谷川浩司五段が連採してブームになったもので、少年の対応を見てみたい。
それで「後手番」になるべく初手▲1六歩と指したのだが、少年は△1四歩。8手目△3二金のときにも▲9六歩と後手番を所望したのだが、やはり少年は△9四歩。どうも面白くない。

第1図以下の指し手。▲3四飛△3三角▲5八玉△8二飛▲7七桂△2二銀▲3六歩△2三銀▲3五飛△4二玉▲3七桂△6二銀(第2図)

第1図まで来たら、少年にどんな対策があるにせよ、▲3四飛と取るしかあるまい。そういえば端歩突きがない同じ局面で、先手だった少年は▲3四飛と横歩を取らなかった気がする。
私は▲5八玉と上がり、▲7七桂。後手番にはなれなかったがこの端歩突きは先手に得が多いはずで、すんなり桂を跳ねられたのは大きい。いまのところ△8六歩は恐くないし、この後▲3七桂~▲4五桂や▲9七角で、5三の地点に殺到することができる。これは早くも作戦勝ちになったと思った。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする