一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第33期竜王戦第5局

2020-12-08 07:58:21 | 男性棋戦
5日・6日は第33期竜王戦第5局が行われた。週末のタイトル戦は朝から晩までABEMA観戦ができるのがありがたい。しかし本局は私の体調不良もあり、それほど中継は見なかった。
第5局は第1局と同じ急戦調の出だしになったが、羽生善治九段が矢倉調、豊島将之竜王が雁木調に落ち着いた。以下、羽生九段が先手の利を活かし、有利に駒組を進める。だがこのくらいの利は終盤の折衝ですぐひっくり返る。まだ勝負はこれからだ。
対局は2日目に入り、豊島竜王が△8七銀と歩頭に打つ強攻を見せた。私たちだったら躊躇なく指すゴリゴリ攻めだが、それを第一人者の豊島竜王が指すとは珍しい。
しかしその後の▲8六歩に豊島竜王が固まってしまい、これは豊島竜王が苦しいのかと思った。豊島竜王、△8二飛。私には手の巧拙が分からないが、こうじっと飛車を引いた手が冷静だったようだ。苦しくても崩れない。これが勝率アップの秘訣と思わせた。
これでも羽生九段が優勢だったが、それはAI上の話。実際は△8七にと金があり、△3六歩の桂取りも残っている。もし△3七歩成が実現すれば左右挟撃で、これは実戦的に後手持ちである。
羽生九段は▲2四歩。少し前までAIが推奨していたが、実際にそう指すとその評価は芳しくなかった。AIも読みの深度でいい加減なところがあって、最初は最善手を評価していたものが、時間が経つと次善手や疑問手に転じることがある。つまりこの辺りはAIが迷うほど難しい局面ということだ。
それからしばらく目を離して再びスマホを見ると、急転というべきか、豊島竜王に評価値が傾いていた。この辺が最近の両者の信用になるのだが、羽生九段が有利の時はまだまだ分からないと思うのに、豊島竜王が有利になると、これはもう逃さないに違いない、という雰囲気になったことだ。
以降は指すたびに両者の評価値が開いていき、これは終わった……と、私はスマホを閉じた。
夜の8時ごろPCを開いたが、もう対局は終わっていた。もちろん豊島竜王が勝ち、タイトル初防衛とともに、賞金4320万円を獲得した。
終わってみれば豊島竜王の4勝1敗。スコアほど内容は離れていなかったと思うが、豊島竜王は悪くなっても崩れず、盤石の指し回しだった。考えてみれば、20年前の羽生九段がこうだったのだ。
羽生九段側から見ると、第1局は52手で負け、第3局は激戦を競り負け、第4局は入院・延期と、すこぶる展開が悪かった。第4局が延期になった時点で、今期の勝負はついていたと思う。
これで羽生九段はタイトル戦4連敗となった。羽生九段は2003年から2004年にかけて、森内俊之九段に竜王戦、王将戦、名人戦と3連敗したが、そのワースト記録を更新してしまった。
羽生九段が全盛のころは毎年タイトルが3つ4つと積み上がり、私などは、100期などただの通過点とフンでいたものだ。そこでこの急ブレーキである。だが考えてみれば、全盛時のライバルだった谷川浩司九段、森内俊之九段、佐藤康光九段らはとっくにタイトル戦から遠ざかっている。羽生九段が齢50でタイトル戦に出続けていることが、すでに奇跡なのだろう。
コメント (3)
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