一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第29回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(前編)

2017-09-22 00:44:02 | 将棋ペンクラブ
15日(金)は、東京都千代田区竹橋で「第29回将棋ペンクラブ大賞贈呈式」があった。
「第29回」とあるように将棋ペンクラブの歴史は古く、1987年11月、故・河口俊彦八段と観戦記者の東公平さんが発起人となり、観戦記の地位向上を目的として、同会が発足した。
以来29年、同会は着実に発展し、いまでは観戦記者の観戦記執筆、棋士の棋書執筆におけるモチベーションのひとつになっている。
ちなみに私が同会に入会したのは1993年。会報への初投稿&初掲載は2002年で、以後、何度か拙稿を載せてもらっている。

今年の贈呈式も私は参加予定だったが、家を出るのに手間取り、東京メトロ竹橋駅に着いたのは午後6時20分ごろだった。
会場は、竹橋直結・パレスサイドビル9階の「レストランアラスカ」。マイナビ女子オープンの女王就位式などで何度か利用された施設だが、私がお邪魔したのは初めてと思う。
受付で8,000円を払う。いただいたプログラムのナンバリングは「26」で、これがのちの抽選会の数字となる。
会場に入ると、開演寸前なのに、あまり人がいなかった。会場はタテに長く、その先の左右にはスペースがありそうで、床面積は広いのに、やや狭く感じた。
Tod氏がきた。お互いカネがないのに、熱心なことである。今の私の心の拠り所、それはTod氏かもしれない。Tod氏が自由人なのが救いなのだ。私は毎日がホントにきつい。
やがて左右から関係者が現れ、定刻に開演となった。
まず表彰式。木村晋介・将棋ペンクラブ会長(弁護士・作家)が大賞受賞者に賞状を授与し、講評を述べる。以下は木村会長のコメントである(うろ覚えなので、意訳あり)。
観戦記部門大賞・内田晶氏へ。「観戦記には、あれを入れてほしい、これを入れてほしいと要望があるんですが、本観戦記はそれをすべてうまく入れて、これが観戦記の王道だなと思いました。景色の描写も入れて、ビジュアル感もありました」
同優秀賞・先崎学氏(九段)は体調不良のため欠席。代わりに日本経済新聞の神谷浩司氏が出席した。
「先崎さんの文章には読者へのサービスがあるが、今回は将棋の手のことはあまり書かれていない。将棋界への熱い思いが描かれています」
文芸部門大賞・後藤元気氏へ。「この本は観戦記の品揃えが素晴らしい。あとがきが書いてある。それらを読むと、時代的背景が浮かび上がってくる。立体的な構成になっています。観戦記を先に読むか、あとがきを先に読むか、どちらでもいいんですが、私はあとがきから先に読むことをオススメします」
技術部門大賞・神谷広志氏(八段)へ。「これは本のタイトル(禁断のオッサン流振り飛車破り)からいいですねえ。技術部門の本でありながら、楽しめる。笑える。記譜の合間のエッセイがおもしろいんです。神谷さんには来年、文芸大賞のほうにも頑張っていただきましょう」
同優秀賞・石川陽生氏(七段)へ。「サンカン(三間)飛車のエポックメイキングな100局を取り上げた。記譜ごとの解説が観戦記であるかのような作りになっていて、読みやすい構成になっています」
特別賞「3月のライオン」の作者・羽海野(うみの)チカさんは、所用で欠席。白泉社の編集者氏が代理出席した。
「知人の小学生の息子に将棋を教えたことがあるんです。そしたらその息子さんからお礼を貰いましてね、それが『3月のライオン』だったんです。最初はマンガだからと高をくくっていたんですが、読みだしたら止まらないんですね。ファン層を拡げるという意味で、この作品の存在は大きかったと思います」
以上、木村会長の簡潔なスピーチだった。

上に述べたように、室内はタテ長なので、参加者は何となく壁際に集中し、マイクの前、つまり中央部分に人があまりいない。しかも照明も暗いので、例年に比べてパッとしない感じだ。
私の左方向には渡部愛女流初段がいるが、彼女は今回の指導棋士である。後で挨拶できればうれしい。
続いて、受賞者のスピーチである(うろ覚えなので、意訳あり)。
内田晶氏「このたびは観戦記の王道と言われ光栄です。最近は『観る将』が増えて、観戦記にも触れられる機会が多くなってきました。
本局は打ち上げの段階で、渡辺棋王に『名局賞の自信がある』と言われました。
それでこの観戦記を書いている途中に、本局が名局賞になったという報がありまして、両対局者のコメントがねじ込めたのがよかったと思います」
日本経済新聞・神谷浩司氏「この将棋は相手が三浦九段で、復帰後の初勝利はいつかという話題がありました。局後先崎さんご自身から連絡があり、自戦記を書かせてくれないか、ということでした。
それで、翌日にはすべての譜の原稿をいただきました」
先崎九段は、一夜でこの自戦記を書き上げたのだ。
実はこれ、当初は野月浩貴八段が観戦記を書く予定だったのを、先崎九段が頼み込んで譲ってもらった、という裏話がある。「このたび先崎さんから連絡があり、この将棋は双方死力を尽くした戦いであり、自戦記でここまで手の内を明かしたことはない、とのことでした。
今改めて読み直して、身を切る思いで書いたのか、と思いました」
私は今回、先崎九段の出席もあるかと期待していた。が、無理だった。しかし神谷氏のスピーチはそれを補って余りあるもので、私はそこに男の友情を見たのだった。
(つづく)
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