一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

トラベルミステリー

2011-02-15 21:19:11 | 旅行記・北海道編
旅、ことに手作りのスケジュールにハプニングはつきものだ。危機に直面したときこそ、冷静な判断が求められる。
余市までの交通手段は断たれたかに見えたが、路線バスがあった。これは北海道に限らないが、バス路線網は鉄道より充実しているのだ。
小樽駅前にバスターミナルがあり、中央バスやニセコバスが余市に通じている。ターミナル内の時刻表を見ると、次の余市駅前行きは11時30分発があった。
案内嬢に聞くと、所要時間は約40分だという。余市から札幌への列車は13時07分発なので、恒例の工場見学は無理かもしれぬが、お土産を買う時間は十分にある。バス代の420円は痛いが、背に腹は代えられない。
それでもまだ若干の不安はあったが、私は余市行きのバスに乗った。予定到着時刻から3分遅れの12時12分、バスは余市駅前十字街に着く。このすぐ前が、ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸留所である。
なぜ私がニッカウヰスキー余市にこだわっているか。ここは2,000円の買い物ごとに1ポイントをくれるポイントサービスがあり、それが規定のポイントに達すると、「竹鶴12年660ml」をプレゼントしてくれるのだ。端数の金額(2,000円未満)も次回に繰り越してくれ、良心的である。ただし有効期間は2年間である。
私が一昨年の秋にここで買い物をしてから、今回のお土産購入で、計算上では「竹鶴12年」がいただける。限定品ではないが、ここまでポイントをためたのだから、これは意地でももらいたいところである。船戸陽子女流二段がニッカウヰスキーを歓んでくれた、という背景はあるが、私が半日時間をつぶしてまで余市に来たのは、そうした理由があったのだ。
入口の受付で名前を記入すると、駒込ジョナサン・Tさん似の受付嬢が
「バスで来られたんですか?」
と私に聞く。なかなか鋭いところを衝いている。JR函館本線が正常に走っていれば、小樽発11時21分の列車は、余市に11時50分に着いていた。工場案内は12時ちょうどがあるから、この列車で来た客は、12時直前に蒸留所を訪れる計算になる。
ところがきょうはそうした客が皆無で、不審に思った受付嬢が私に聞いた、ということなのだろう。
「はい、11時21分小樽発の列車が運休になっちゃいまして…」
私は多少の不満を、受付嬢にぶちまけた。
次の蒸留所見学は午後1時だという。……。これで今回の見学は見送りが確定した。案内嬢は素敵な方ばかりで、今回も楽しみにしていたが、自然の力には勝てない。
私はまっすぐに土産物売り場へ行く。ここでしか買えない白ワインが売られていたので、それを買う。中倉宏美女流二段の喜ぶ顔が浮かんだ。
買うべきモノを買って「竹鶴12年」をもらい、余市駅に入り、構内の土産売り場で、これも恒例のコカコーラ(190mlビン)を買って、飲んだ。まったく、私がやることは毎年同じだ。しかし私を取り巻く環境は、毎年違う。これを再認識するのも、ひとり旅の醍醐味といえようか。
そろそろいい時間なので、隣接している改札口に向かうと、駅員さんが
「12時07分の列車は1時間遅れになっています」
という。
…!! それなら、私が構内に入ったときに教えてくれよ。と同時に私は、やっぱりな…と思った。上り列車が運休なら、下り列車もアブナイ、と考えるのが自然である。上で「若干の不安」と書いたのは、このことだった。
函館本線の長万部-倶知安(くっちゃん)-余市-札幌間は、室蘭本線の長万部-東室蘭-苫小牧-札幌間の「海線」に対して「山線」と呼ばれる。それだけ起伏が激しいわけだが、降雪量も多いのだ。
空は快晴だからピンとこないが、ともかく私の抱いた危惧が現実のものになり、私はまた窮地に陥った。仕方ない、またバス利用だ。
「トクトクきっぷを買ったのに、全然使えませんよ」
私は駅員さんにイヤミをいい、バス停に向かった。ANAのイチャモンおっさんのようだ。しかしこちらは、いらん出費をしているのだ。実際、また420円の出費は痛い。
余市駅前十字街バス停に着くと、次の小樽行きは13時14分があった。
先に待っていたおばちゃんが、ほかのおばさんに
「さっきニセコバスが出たばかりですよ」
と話している。
チッ…。私はクサって、道内時刻表を繰る。きょうの最終目的地は旭川、17時11分着である。しかしこの普通列車には乗れるのだろうか。
私は「1711着」から遡る。するとどうにか間に合うことがわかった。すなわち、

中央バス 余市駅前十字街13時14分→小樽駅前13時54分前後?
函館本線 快速エアポート144号 小樽14時04分→札幌14時36分
同 区間快速いしかりライナー 札幌14時40分→岩見沢15時17分
同 岩見沢15時27分→旭川17時11分

である。まるで計算されたような乗り継ぎだ。しかしこの時間、大抵の観光客は観光地を回っているというのに、私はトラベルミステリーのアリバイトリックを解明するようなことをやっている。若干、自己嫌悪に陥る。
定刻、小樽方面行きの中央バスがくる。しかし余市からの乗客が多く、大型バスは満員になった。
その後も、停留所に止まるたび、客が乗ってくる。ついには補助席まで使う有様になった。まあJR利用の客がそのままバスに移ったのだから、当然だ。
しかしここで、新たな不安が生じた。あまりにも客が多いので、下車時の精算に時間がかかりそうである。バスだって定刻に着くとは限らず、あまり安閑とできなくなった。
しかしそれも杞憂で、バスは予想到着時刻よりはるかに早い、14時46分に到着した。ここまでくれば大丈夫。何しろ日本の鉄道は世界一なのだ。天候などのトラブルを除けば、列車は正確に走る。
小樽から快速列車に乗る。札幌には1分遅れで着き、岩見沢行きに乗り換える。ここでは乗客が多く、立つことになったが、まあいい。
岩見沢にも1分遅れで着き、15時27分、最終ランナーの旭川行きに乗った。
函館本線の札幌-旭川間はJR北海道のドル箱区間で、「特急スーパーカムイ」が頻繁に走っている。普通列車は数えるほどしかなく、この列車を逃すと、次の旭川行き普通列車は、16時57分が「最終」となってしまう。
特急スーパーカムイは最高速度も130キロで車窓の流れも速いが、普通(快速)列車もゆったりと景色が移り、真の鉄道旅行を楽しめる。
財布を拡げると、なぜか1年前にニッカウヰスキー余市の土産物屋でいただいたレシートが出てきた。日付は「2010年2月13日」となっている。ここに端数の金額が書かれていて、精算時にポイントが加算されるのだ。自宅ではどこを探してもなかったのに、いったいどこから出てきたのだろう。…ん? 昨年の2月13日は土曜日である。昨年はニッカウヰスキー余市で買い物をした日に帰京した。なぜ私は14日も観光しなかったのだろう。
…あっ、昨年のバレンタインデーは、LPSAのファンクラブイベントがあったのだ。私はもちろん北海道旅行を優先するつもりだったが、船戸女流二段から、
「北海道はいつでも行けるけど、日曜日のバレンタインデーのファンクラブイベントは、もうないんですよー」
と熱い営業をされ、私はふらふらと13日に帰京したのだった。そういえば一昨年秋の北海道旅行も、船戸女流二段に金曜サロンでの指導対局を受けたくて、土日の観光を飛ばし、金曜日の午後に帰京したのだ。「女流棋士ファンランキング1位」の威光とは、そのくらいのものである。
私の車両には私のほかに2、3人の乗客がいるのみだ。滝川、16時14分着。むかし滝川真子というAV女優がいたことを思い出す。
16時42分、深川に着いた。明日(12日)はここからジェイアールバス深名線に乗る予定だ。…と、車両の前後から、多くの女子高生がどやどやと乗ってきた。こ、これは…!?
(つづく)
コメント (2)
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