ネットの保守派が安倍首相を支持するかどうかで批判合戦を繰り広げているときではない。どんな政権であろうとも、アメリカの影響力からは抜け出せないのである。事前にアメリカからの働き掛けがあって、日韓双方が妥協点を見出すことになったのだ。最終的には日本が一方的に譲歩を強いられ、韓国人「慰安婦」への日本軍の関与を認める破目になった。日本は自らの国家意思を表明できなかったのである。早速、アメリカのケリー国務長官は「(日韓両政府は)この合意の実行によって問題が『最終的かつ不可逆的』に解決されることを明らかにした」との声明を出した▼世界のどこに自らの立場を貶める国があるだろう。アメリカは日本を占領するにあたって、日本人「慰安婦」を提供することを要求し、日本はそれに抗するすべがなかった。そのことは不問に付しておいて、韓国の言いなりになるというのは、あまりにも日本国民を馬鹿にしている。安倍首相がやむなき決断をしたのは確かである▼昭和45年11月25日、自刃する直前の三島由紀夫が市ヶ谷駐屯地で行った演説の最後の言葉をついつい思い出してしまった。「諸君のなかには一人でも俺といっしょに起つやつはいないのかッ」「一人もいないんだな。よし、俺は死ぬんだ。憲法改正のために起ち上がらないという見極めがついた。自衛隊に対する夢はなくなったんだッ。(ゆったりした口調で)それではここで天皇陛下万歳を叫ぶ(皇居に向かい正座し)天皇陛下万歳ッ、万歳ッ、万歳ッ」(猪瀬直樹『パルソナ三島由紀夫伝』)。
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