昨日になってようやく安倍首相は緊急事態宣言を出したが、休業要請の業種をめぐって、政府と東京都のすり合わせが行われていなかったことが露呈した。パチンコ屋やナイトクラブについては、政府サイドが反発しているのだという▼予想した通りであった。安倍首相はことの深刻さを認識していないのである。武漢発の新型コロナウイルスの拡大を阻止できるかは、どこまで踏み込んだ決断ができるかにかかっている。政府が東京都の手足を縛るのはとんでもないことだ。「社会的距離戦略」を実行に移すためにも、パチンコ屋やナイトクラブの営業に規制をかけるのは当然である。それができないのは補償したくないからであり、既得権益として保護したい者たちがいるからだろう▼今が例外状況であることを、安倍首相は認識していないのではないか。これでは緊急事態宣言を出した意味がない。東京都が強引なことをやろうとするのは、それだけ都民の命を守りたいからだ。その後押しを政府がするのが筋である。例外状況においては、自己保存の権利を国家が行使することは認められており、それが結果的に法秩序を維持することになるのである。安倍首相は、中途半端なことで8割もの人たちの活動を制限できると思っているのだろうか。もはや脳天気な政府頼みでは危機を乗り切れない。私たち一人ひとりが自粛するしかないのである。
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その金融の世界にもクジラがいる。例えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もそのひとつである。
4月1日付けで、「約160兆円におよぶ国民の厚生年金と国民年金の積立を管理運用する世界最大規模の年金ファンド『年金積立金管理運用独立行政法人』(GPIF)。新理事長に宮園雅敬氏が就任した。
『GPIFは2019年10月、当時理事長だった高橋則広氏を、女性職員との特別な関係を疑われかねない行為があったと懲戒処分にした。その件を巡り怪文書が出るなど、内部対立があり、高橋氏や他の2人の理事が2020年3月末に退任する事態に発展しました』(金融機関幹部)。前理事長である高橋氏も、宮園氏も農中の専務理事経験者で、2代続けて農中出身者がトップに就いた。(中略)
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界的に株価は乱高下を繰り返している。GPIFの1月から3月の運用損失は最大で20兆円を超える可能性がある。
宮園氏は、ガバナンスの立て直しと混乱する市場への対応という2つの難題にいきなり直面する。新理事長の手腕が問われる」(2020/04/07 文春オンライン・森岡 英樹)。
リーマンショックやチャイナショックによる巨額損失のたびにGPIFの運用は批判されてきた。しかし、それらの批判は、長期運用のGPIFに対して単四半期や単年度の運用損のみをあげつらい、自公政権を批判できそうな材料なら何でも投げつけるという政治的な思惑から生じたものであったから、その後の運用成績の盛り返しによって、いつのまにか“終息”したのである。
だが今、こうした政治的な思惑でない真剣な議論をすべき時が来たのではないか?
なぜなら、新型コロナ後の世界は、これまでの常識(例えば、資産運用では、「長期、分散投資が有利」)が通用しないかもしれないからである。
なるほど、「過去1000年間、ロンドンでの不動産投資は成功を収めている。しかし、アメリカのネイティブアメリカン、メキシコのアズテック族、ペルーのインカ族や、それらの地域の住民は土地を失い、多くは命も失った。すべてが変わってしまった」ことが、この世界には起きるからである。