いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

岡目八目・就活 

2010年11月23日 18時23分15秒 | 日本事情

― 先日私は息子をある私立大学に入れたというタクシーの運転手にあった。その私大は学生数が多くないことを特色にしているところだったので、教育が行き届いていいだろうというと、運転手はいったものである。
「教育なんざあどうでもいいんです。就職ですよ、旦那。あそこは就職の売れ口がいいですからね。何しろ大学出でなけれりゃこれからの世は渡れないからねえ」
 私はもちろんショックを受けたが、考えてみればこれはもっとも明快でかつ率直な世間一般の大学観である。 ―

江藤淳、「大学その神話と現実」、1966年、『江藤淳 著作集6* 政治・歴史・文化』


(ちなみに1966年の大学進学率は短大含めて25%である [出典])


■大学3年生の新卒採用のための就職活動が始まったせいか、最近のマスコミは就活問題の報道が多い気がする。特に来春入社の大卒の就職内定率が低いので余計危機感が広まっているのであろう。

■その習慣に賛成するとは別に、事実の認識(おいらの)の問題として、大学新卒で大企業に就職すると、その先絶対安泰というとは完全保障されるとは言えないが、非正規・バイトやワーキングプアーなどという人生よりは相対的には、安定である。大企業における正規社員の解雇が事実上不可能であるという経験的事実により証明されている。

非正規・バイトとして大企業における"ノン-ワーキングリッチ"現象というのは本当にある。正社員への労働のしわ寄せといった問題があるのだろう、という指摘もあろうが、おいらの見る限り、問題にはなっていない。なぜなら、出世したい正社員は普通に1日12時間働く。そして、休みもめったにとらない。そもそも土日も普通に来る。一方、出世したくない正社員は9時-5時である。そして、すんごい仕事しないし、よく休む。大企業って有給をちゃんととると、土日を含め年に160日(もっとかな?)は休める。さらには、最近(?)、コンプライアンス問題、人権尊重の啓蒙運動で、社員にプレッシャーをかけること(パワハラ)が厳禁されている。なので、出世しないと覚悟を決めると相当何もしなくていいのだ (もっとすごいことがあるのだが、今日はやめておく)。というか、端(はな)からプロジェクトや仕事に関心がない。まだ40歳前後。全く勉強しない。それで、給料はびっくりするほど高い。 いいたいことは、おいらがみたバイト先の例では、一度大企業の正社員になると、1日12時間働く出世コースでも、"ノン-ワーキングリッチ"でも、選ぶことができるということ。ちなみに、給料は両者で3割も変わらない。出世コースの人は仕事(地位・権限)が報酬なのだ。

■そんな大企業の正社員は現世の"お貴族さま"だ。その現世の"お貴族さま"の登用試験こそが、大学卒業予定の3年生が挑戦する関門なんだろう。報道やネットで見聞にするに、とてつもない消耗戦のように思われる。

■そんな先日、50半ばの知り合いが夫婦で大学の保護者向けの"就活説明会"に行ったという話を聞いた。息子は"都の西北"大学に通う秀才ちゃん。夫婦とも大卒。旦那さんは都内の情報産業会社勤務。奥さんも働いている。二人とも企業の内情は当事者として承知。

そんな夫婦で大学の保護者向けの"就活説明会"に参加した知り合いが言うには、「大学の先生は話がだらだらしていて、要点がわからない」、「あんなプレゼンじゃ企業では通用しない」などきついことも言っていました。それに対しおいらは、そりゃ大学のセンセは「学生気分」(それを就職後は払い落さなければならない)の親玉ですからと答えると、わらっていた。

つまり、大学は就職予備校と化しているというぼやきはあたらないわけです。予備校というのは入学試験を通る技能を身につけさせてくれるのですが、大学で大学風の文化的素養を身につけることだけでは、就職の面接を通る態度や技能は身につかないのです。

■今報道などで、就活に成功する学生は親子仲がいい、といういいます。おいらもそんな気がします。面接をはじめ企業となじむ態度、思考、自己表現(話し方)は、学生が家庭で身につけているように思います。直接人から人へと伝播、つまりサラリーマンである親からサラリーマン志望の子供へ伝わっていくのでしょう。これは「サラリーマン」文化の伝承ということだけではありません。

よく、「何度も面接でおとされるが、理由がわからない」とか、さらには「採用の判断基準がはっきりしないので不当である」とかいう声を聞きます。例えば⇒茶番としての就活。これらの悲惨な点は、なぜ面接で通らなかったか本人に知らされないことです。たぶん、重要なのは、言語運用能力。特にオーラルの言語運用能力。実は日本語が不自由な日本人って多いとおもいますよ。

おいらの推定では、話す能力がないことが最大原因だと感じます。日ごろ、大人の人とそれなりに知的な話題を筋を通して議論するということをしていないと、いきなり面接で企業の面接者と話をしても、そりゃ通用しないと思います。知能が高いのにオーラルの言語運用能力が低い人って結構います。それはもったいない。訓練が必要です。

面接に通る人というのはそういう訓練が日ごろから、そして小さい頃からできているのだと推定します。今の若い子は友だち同士でそういう「それなりに知的な話題を筋を通して議論するということ」はあまりしなさそうなので、はやり、家庭でやっている子が面接に"強い"ということになるでしょう。上記の"これは「サラリーマン」文化の伝承ということだけではありません"という意味は、「それなりに知的な話題を筋を通して議論するということ」を家庭で親子でして、ある種の文化的態度を伝承しているという意味です。

思いて学ばざればすなわちクラシ⇒思いてしゃべらなくてもすなわちクラシ

さらには、50歳なかばのサラリーマンだと人事や採用、部下管理など実務の経験があるので、子どもの就活へはいろいろアドバイスができます。親子仲のよい学生が就活に強いという理由でしょう。もっとも大前提として親がサラリーマンということですが。

もちろん、学校、大学でやってもいいのでしょうが、今はそういう雰囲気でもないのだと忖度します。さらには本来すべき議論の訓練も、一部の優秀大学を除いて、できないと思われます。

それで、"大学の保護者向けの"就活説明会"に行った夫婦"と"就活に成功する学生は親子仲がいい"に話を戻すと、あぁあの家は親子が仲がよくて子供が秀才ちゃん(よくしゃべるらしい)なんだなぁと思った次第。

■それで、別においらは、サラリーマン文化や新卒一括採用を称賛したいわけではありません。ただ、新卒一括採用にのりたいけど、困難にぶつかっている人のために、40過ぎてバイトのおいらが、少し書きました。新卒採用とは無縁の人生でした。「岡」目八目って上から目線ですね。「谷底」目八目ってところでしょうか。

☆就活ジョークでこんなのがあった;

面接官、「学生時代一番打ち込んだものは何ですか?」

学生、「就活です」



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