いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

資本制下のfemale blogs -a review-

2006年05月05日 12時13分16秒 | 草花野菜

薫風の筑波山麓 5月4日

■日記、随筆のブログは日本特有なもので、ブログが発祥した米国などでは見られないことだとよく書かれている。うそかほんとかしらないけれど、日本のブログには、良質な日記、随筆が多い。日記や随筆のどういう点がすぐれているかというと、それは書かれていることがどんなに私的であろうと・些細であろうと、あるいは同様に、書かれている感じたこと・考えたことことがどんなに私的であろうと・些細であろうと、それはその人にとっての真実である点である。そしてそういう主観的真実(それは極端な場合、妄想かもしれない)をもった人間が生きているということが事実である。万が一、そのブログ全体がフィクションであるとしても、ある人がそういうフィクションを考え、ブログ化していることは真実なのである。

▼そんな中、このブログでブックマークしていた、すぐり日記 と 雑民厭世記 が閉鎖してしまいました。非常に残念。

■今日言及するブログは、われらが素敵な奥様(30代後半)、日常茶漬事 絶滅寸前哺乳類の記録と、平日は12時間お働きあそばし、かつ出会い系で配偶者をお探しの30代後半(?)女性のブログ浅き夢みしのふたつ。ふたつとも上述の意で優れたブログでありんす。

■素敵な奥様(日常茶漬事 絶滅寸前哺乳類の記録)は、配偶者はま、稼ぐ人なのでだそうで、これでダーリンの稼ぎが悪ければ私はとっくに離婚しております。たとえイケメンでも私は金のないやつとは暮らしていけません。という「リッチな」状況でブログを発信。お育ちは私のいってた大学はそれとなく、女はつかまえた男の値うちで己の価値が決まる、と非常に有り難い事を教えてくれたのでそこそこの生活はさせてもらってる、リッチな素敵な奥様のはずなんだけど、生憎私の半分は怨念と情念で黒くドロドロしたものでできている。のだそうです。おじい様が軍医で最前線に送られ戦死されたので、当時の為政者に憎悪炸裂。あまって、その孫をも「加害者」よばわり。加害者の癖に被害者ぶってんじゃねーよ、東条英機の孫!久々に心の底から腹が立つ。とか、小泉君に8月15日に靖国参拝しろ、なんて言ってる東条英機の馬鹿の孫、民主主義でよかったよなあ、武断主義なら一家眷属皆殺しされてたろうに。そういうことに思いもよらないとこがほんまに馬鹿だ。とかいっちゃう。

■この素敵な奥様は経済的の恵まれているばかりでなく文化的にも洗練されていて、有閑を書に親しみお過ごしになる。そんな富裕高級文化を背景とするので、ビンボーなネットウヨが大層お嫌いである。ネットウヨをはじめとする最近の排外的ナショナリズムはビンボー人により主導されていることはよく語られることである。たとえば、アンチ・リベラル的バックラッシュ現象の背景【追加】「排外主義的愛国主義者には低学歴か低所得が多い」)にあるように。 そして、 お隣ブログと言うのにはどんなのがあるのかなあと出かけて失敗する。ウ-ム、不愉快な奴、発見。と言ったところで私は貧乏そうな右翼が嫌いなだけなんだけどね。 そのみじめったらしさが嫌いなんだよ。貧乏左翼は理解できるんだよ、金持ち右翼も。 でも貧乏でしかも右翼。これが解せん。世の中には私の理解を超えた頭の悪い連中がいるんだなあとちょっと感心。 すごいなあ、何重苦になるんだろう。頭が悪くて貧乏で、性格も歪んでそ-。 きっとお顔も御不自由だわ。ああ、生きてたって意味ないわね、鉄砲玉にでもなって死ぬしかないわね。 とキツイお言葉。

■そんな素敵な奥様は当然専業主婦であらせられるわけであるが、なぜかしら、フェミニズミに御執心らしい。あるいみ、当然か。富裕層の文化サヨ。素敵な奥様を支える「下部構造」は、 従来の近代社会システムでは、女性が市場労働することなく、家事労働に専念できるだけの給料が、「家族賃金」として「男性世帯主」に支払われることになっていた。専業主婦のいるサラリーマン世帯は、配偶者控除、配偶者特別控除、健康保険や年金の免除、八割の企業で行われている配偶者手当てなど、さまざまな保護を享受してきた。その結果扶養者である男性の企業内での優遇が行なわれていた..(以下略)*1にほかならない。(この構造は、実は、この5年で制度上も実態としても崩壊しつつあることは自明であり、そのメカニズムが、フェミニズムというより、経済のネオリベラル化によるものである。)素敵な奥様は、「男性世帯主」が「ま、稼ぐ人なので」今日現在もゆるぎない下部構造の上で、やはり素敵な奥様なのである。

■そんな、素敵な奥様がなぜフェミに惹かれたのか、今後どう展開するかが、素敵な奥様(日常茶漬事 絶滅寸前哺乳類の記録)のひとつの注目点である。みんなで期待しませう! もうひとつの注目点は素敵な奥様の「生憎私の半分は怨念と情念で黒くドロドロしたものでできている」ことですね。魅力的ですね。聞きたいですよね。でも、しばしば、ドロドロ・ブラックは、上記黄色の引用文で見えるように、噴出していますよね。こんな罵倒はネットウヨでもめったに見られない。魅力的です。一方、「ダーリン」と呼称される配偶者には従順で、褒め上げている。この点もブログで際立ってませんか。ふつう、既婚女性のブログでは、冗談でも、「鬼嫁」ぶるのがはやりかと。配偶者・ダーリンには猫なで声で、とってかえして、「低所得で低学歴」のネットウヨや東條孫娘に見せる言動は、むかすおいらがマンガでみた、職業軍人夫人が家庭では主人・軍人にはかしずいておしとやかにしているのだけど、町内の朝鮮人には、豹変し、「あんたたち、日本人として恥ずかしくないようにしなさいよ!」罵倒・説教する場面を彷彿とさせる。ドロドロ・ブラックのゆくえもこれまた目が離せない。

●一方の、注目ブログ、浅き夢みしのお姉さまは、平日12時間働いてしまう「資本のドレイ」さま。このブログがすごいと思ってここに紹介するのは、このお姉さまが平日12時間働く自分に誇りがあると言明されている点。そんなこと珍しくないじゃん、仕事中毒のひと、特に男、なんて会社で普通じゃん、と言われる方。ある意味その通りで、かつ肝心な点が違うのは、仕事中毒の<資本のドレイ>おやじって、過剰労働に内心は自信をもち、あまつさえ、仕事もないのに会社に居残っているわけですが、「過剰労働に誇りをもってます!」なんて言明しないよね。(するのかな? してたら教えて。)

●そんなオーバーワークのお姉さまは配偶者を求めて、ネット・メールでお相手を物色。男性候補者からのメールを晒して、大概が、ワライモノとされる。特にワライモノになるのが高齢(40過ぎ)の男性が若い女性を求める内容のメール。そういう男性は、見る限り高年収なんだけど、そういう男は、女を養えるほどの高収入「家族給」を得る身分なのだから家事労働に専念して、オレさまにかしずけ、っていう御仁なのでしょう。

●それにしてもなぞなのが、このハードワークなお姉さまがどんな男性を配偶者となされたいか?ということ。年収とかイケメンとかそうじゃないとかより、平日に12時間働く女性と結婚したいと思う男性がいるとお考えなのかなということ。これは、男性なら12時間働いてもいいという意味では、もちろん、なく、そもそも賃金労働者が一日12時間労働することを、男とか女とか以前に、一市民としてどう考えているかということですね。それと追加すれば、ブログ内に中国で3週間仕事したとある。このお姉さまは理系の出身で、職務内容は書かれていないが、広い意味でエンジニア関連のお仕事かなと推測する。そこで、中国で/と資本主義活動をすることについてどうお考えも読んでみたいな。素敵な奥様と違って、ちょっと歴史的・文明的立ち位置には無頓着。目の前のことに一生懸命というがんばり屋さんだから。理系なんだから所詮無教養なんだべさ!とのきびすいご意見もあるかとも思いますが、ここは、暖かく見守りましょう。

●このお姉さまは、ホント、ある意味、ジェンダーフリーおねえさまなの。つまりは、むかすは仕事中毒は男に特有で、かつ、おばかなことにはそれをプライドの根拠にして、悪質な場合は、「だれのおかげで、生活できると思ってんだ!」と妻子に怒鳴るオヤズ。そういうお$%が、ジェンダーの垣根を越えておねえさまにも感染!これジェンフリ。いわゆるひとつの「企業のためには男でも女でも」という「経団連的企業家」には歓迎の<男女共同参画>なわけです。とまれ、今後の活動報告に期待したいです。


▲ 日本という国が豊かなのは日本人が貧しいからだという逆説も成り立つ。
                    -ボード・リヤール-


*1 千田有紀 「ネオリベライズムとフェミニズム」『ポストフェミニズム』