さすらい人の独り言

山登り、日々の独り言。
「新潟からの山旅」別館
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さすらいの風景 ブリュージュ2

2008年03月29日 | 海外旅行
ブリュージュは、「死の都」とも呼ばれることがあります。

これは、ベルギーの作家・詩人ローデンバックの著書「死の都」に由来します。この小説は、大きな反響を呼び、ブリュージュの再発見につながったと言われていますが、現地の人は、当然ながらこのような呼び方は好まないようです。

「沈黙と憂愁にとざされ,教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ.愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは,亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった.世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(一八五五―九八)が,限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界」岩波文庫表紙案内より。

現在、岩波文庫は絶版ですが、ちくま文庫「ローデンバック集成」で読むことができます。



「鎧戸もドアも締め終わると、いつものように夕暮れ時の散策に出かける気になった。外は、まだ霧雨が降りしきっていた。秋の終わりによく降る雨で、涙が流れるように、水の織物を成すように、空気を縫い、運河の水面に針を逆立て、濡れた網にかかった小鳥が網目に絡まってもがくように魂を囚え凍えさせるような、真っ直ぐに振り落ちる細やかな雨!」ローテンバック著「死の都」より

私がリューベックを訪れたのも雨の日でした。運河の水面には、雨の波紋が現れては消え続けていました。



また、第二次大戦をはさんで、クラシック音楽とハリウッド映画音楽の分野で活躍したコルンゴルトは、「死の都」というオペラを作曲しており、現代オペラの中ではひそかな人気の作品になっています。

この曲の中では、亡き妻の名前はマリー、街で出会う似た女性はマリエッタと名前は変わっています。オペラの中でも、「マリエッタの唄」は特に有名で、単独でも取り上げられる曲になっています。




石畳も雨に濡れ、足音もひめやかになりました。



バジリック聖血礼拝堂。キリストの血がまつられています。






古い街並みの小路を歩くことが自体が、リューベックの楽しみ方のひとつになります。



ベギン派修道院。ブリュージュの旧市街の景観とは独立して、世界遺産の項目の一つになっています。



聖母教会。13~15世紀に建てられた高さ122mの塔を持ちます。



ミケランジェロ作「聖母子像」があることでも有名です。



ブリュージュは、「屋根のない美術館」とも呼ばれることもあり、歩くうちに趣のある風景が開けます。








いつもは嫌われる雨も、この街には似合ったようです。

「マリエッタの唄」を聞きながら、、「死の都」ブリュージュの風景を思い出しましょうか。

私に残されたこの幸せよ
帰って来てください 私の誠実ないとしい人よ
夕日が生け垣の向こうに沈み
夜になるとあなたは私を照らす光です。
私の不安な胸の鼓動があなたの胸に響くとき
希望は天に向かって翼を広げ羽ばたきます

不安が暗く近づいて来たら
帰って来てほしい 私の誠実ないとしい人よ
あなたの青ざめた顔をこちらに向けてください
死が我々二人を別れせることはないのです
あなたは一度は私から去らねばなりませんが
信じてほしい!
私たちがまたよみがえることを・・・

生身の女性を目の前にして、死んだ妻への思いがよみがえってくる、美しくも哀れな歌です。

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