二日目に、丸一日をかけてハーフドームの山頂をめざすことになった。
ハーフドーム・トレッキングルート(カーリー・ヴィレッジからハーフドーム山頂)
10月7日(土) 5:50 Yosemite Lodge発―6:30 Curry Village―6:58 Happy Isle Bridge―7:20 橋 (Mist Trail)―7:48 Vernal Fall滝口―8:04 橋―8:38 Nebada Fall分岐―8:42 Nebada Fall滝口~9:02 発―9:07 Nebada Fall分岐(Muir Trail)―9:35 Marced Lake Treck分岐―10:15 John Muir Treck分岐―10:45 稜線―11:03 ドーム下部―11:25 ドームショルダ~11:30 発―11:50 Half Dome~12:47 発―13:03 ドームショルダー―13:25 ドーム下部―13:40 稜線―14:05 John Muir Treck分岐―14:50 Marced Lake Treck分岐~15:00 発―17:17 Nebada Fall分岐―15:38 橋―15:57 Vernal Fall滝口―16:23 橋―16:42 Happy Isle Bridge―17:35 Yosemite Lodge 着
ガイドブックには、「もしも私にハイキングにあてる日が一日しかないのなら、迷わずにこのハイクを選択する。ハーフドームこそ、私をヨセミテに誘い、なべての山に登ろうとする欲望を燃え立たせるからである。」と書かれている。
昼間の光景は、私の登頂意欲を燃え立たせた。しかし、自分の技量は、どれ位のものなのか。日本の山をそれなりに登っていると自慢しても、外国ではその経験は通用するのか。入園の際に配られてた新聞のハイキング情報には、最も困難(Most strenous)、登高距離(1464m)とあった。クライミングコースではなく、少なくとも歩いて登れるコースであることだけは確かなようであった。
5時に起床し、出発準備。サンドイッチ、ミルク、ジュースの朝食。登山口のハッピーアイルまでは、無料のシャトルバスがあるが、始発が9時のため、一時間の車道歩きが必要になる。熊が怖くて明るくなるのを少し待ったが、懐中電燈を頼りに歩き出した。目が慣れると、灯りなしでも歩ける状態であったが、車にすれ違う時には、轢かれないように点灯した。道路標識は、車の一方通行の所があり、行き先が書いてない所もあって、昨日ひととおり歩いて周囲を偵察しておいたのが役だった。
カーリー・ヴィレッジのキャンプ場のトイレに寄ったが、清潔でトイレットペーパーも置いてあった。7時にようやく明るくなった。夏なら、7時始発のバスを使ってもう少し、楽をすることができるのだが。
バーナルの滝
バーナルの滝
ハッピーアイルからいよいよトレッキングの開始となる。バーナルの滝までは、コンクリートで固められた観光客も歩ける遊歩道になっていた。途中、橋の上から滝を谷の奥に望むと、John Muir Trailとの分岐となり、その先には増水時に通行止めにするためのゲートがあった。滝の落差分だけの急な登りになった。秋とあって水量は多くないため、Mist Trailという程のことはなかった。急斜面の登りではあったが、石段が組んで登り易くしてあった。息が切れて喘ぎながら、第一目標のバーナルの滝に到着した。
登山口を振り返る
滝の落ち口は石畳になっており、見下ろすと、谷は遥か下であった。谷はまだ暗いが、谷の上にそびえるピークは日に照され始めていた。風景を眺めて息を整えた後、先を急いだ。バーナルの滝の上は小さな池になり、さらにその上にはなめ滝が続いていた。
頭をのぞかせたハーフドーム
明るく照されたハーフドームの頭も顔を覗かせたが、まだまだ高かった。はっきりしているものの砂地の道となり、ここから先は、充分な足拵えが必要になった。橋を渡り、谷の奥に進んだ。
リバティーキャップの岩峰
ネバダ滝
ネバダ滝の落ち口
ネバダ滝のほうが、バーナルの滝よりも豪快な水しぶきを上げて落下していた。再び滝の脇の崖の急な登りになった。道は細かく折り返し、整備はされているが、辛い登りであった。
リバティーキャップ東面
ヨセミテバレーの眺め
ハーフドームへの道から別れて、ネバダ滝の上に寄った。ナバダ滝の上は、岩畳の広場になっており、谷を見下ろし、またリバティーキャップの岩峰を見上げる、休憩するのに最適の所であった。滝に注ぐTenaya Creekには橋がかかり、その向こうから何人ものハイカーがやってきた。
リトルヨセミテバレー
近づいてきたハーフドーム
ネバダ滝の上には、さらに奥に向かってリトルヨセミテバレーが広がっていた。トレイルは、しばらくはほぼ平な道になった。ハーフドームの東に回り込んでいくと、右手にショルダー部、そこから稜線が続くのが見えて、そこが登り口であることが判った。難攻不落のハーフドームにも弱点が見えてきたが、頂上付近は垂直の壁になっているのが不安材料であった。
キャンプ場への分岐から、森林の中のジグザグの登りになった。近くのキャンプ場から出発したのか、他のハイカーにも多く出合うようになった。皆歩くのが速い。日本人登山者の脚力を見せようとしても平地では差は縮められず、斜面が急になった所でようやく追い付くことができた。
シェラネバダの山並み
ハーフドーム
Muir Trailを分けて登り続けると、稜線の一角に飛び出し、西の斜面を見下ろすことが出来るようになった。ハーフドームもそれほど遠くはなかったが、まだ高く聳えている。僅かに登るとショルダー部に続く稜線に出て、周囲の展望が一気に広がった。谷の向こうにはシェラネバダの白い雪をまとった山々が連なっていた。白砂の広い稜線を目の前のハーフドームに向かって進んだ。
ショルダー部への岩場
ドームの基部には、雷雲が発生した際の登山禁止の看板が立てられていた。手も使いたくなる急な登りが始まるが、石段が組まれており、難しくはない。息を整えながら登っていくと鎖が現れたが登りには必要は無く、この程度のものかと安心したが、これは間違いであった。
姿を現したハーフドーム山頂への鎖場
垂直に見える壁
ショルダー部に到着して見上げると、ハーフドームの頭は垂直に近い一枚岩であり、そこに金属のポールが立てられ、てすり状に鎖が張られ、数メートルおきに足場の横木が渡されていた。鎖の間を、アリのようにハイカーが山頂まで列を作っていた。この鎖は、5月下旬から10月中旬まで掛けられており、冬期は撤去されてしまうと新聞には書いてあった。
この様な鎖場は確かに日本には無い。日本の山で難所として名高い剣岳のカニのタテバイも比べられないスケール感である。なによりも、一枚岩のため、足場は、靴のフリクションと岩に埋めこまれたボルトと横木が頼りなのが怖い。
しばし休んで息を整えた。初めは、両脇の鎖を掴んで腕力で登り続けるが、息が続かなくなる。下りのハイカーとの擦れ違いで、片方の鎖にしがみついて待たなければならないのも辛い。ガイドブックには最大傾斜45度と書いてあったが、垂直に感じられた。中央部で傾斜は最大になり、腕も力が抜けてくる。ワーヤーがタルミなく張られているので、腕が脇よりも上がって力が入りにくい。休み休み登っていくと、ようやく傾斜も緩くなって山頂の一角に到着したのが判るが、足がなかなか前に進まない。足が痙攣を起こしかけて、ようやく山頂に到着した。
ハーフドーム・トレッキングルート(カーリー・ヴィレッジからハーフドーム山頂)
10月7日(土) 5:50 Yosemite Lodge発―6:30 Curry Village―6:58 Happy Isle Bridge―7:20 橋 (Mist Trail)―7:48 Vernal Fall滝口―8:04 橋―8:38 Nebada Fall分岐―8:42 Nebada Fall滝口~9:02 発―9:07 Nebada Fall分岐(Muir Trail)―9:35 Marced Lake Treck分岐―10:15 John Muir Treck分岐―10:45 稜線―11:03 ドーム下部―11:25 ドームショルダ~11:30 発―11:50 Half Dome~12:47 発―13:03 ドームショルダー―13:25 ドーム下部―13:40 稜線―14:05 John Muir Treck分岐―14:50 Marced Lake Treck分岐~15:00 発―17:17 Nebada Fall分岐―15:38 橋―15:57 Vernal Fall滝口―16:23 橋―16:42 Happy Isle Bridge―17:35 Yosemite Lodge 着
ガイドブックには、「もしも私にハイキングにあてる日が一日しかないのなら、迷わずにこのハイクを選択する。ハーフドームこそ、私をヨセミテに誘い、なべての山に登ろうとする欲望を燃え立たせるからである。」と書かれている。
昼間の光景は、私の登頂意欲を燃え立たせた。しかし、自分の技量は、どれ位のものなのか。日本の山をそれなりに登っていると自慢しても、外国ではその経験は通用するのか。入園の際に配られてた新聞のハイキング情報には、最も困難(Most strenous)、登高距離(1464m)とあった。クライミングコースではなく、少なくとも歩いて登れるコースであることだけは確かなようであった。
5時に起床し、出発準備。サンドイッチ、ミルク、ジュースの朝食。登山口のハッピーアイルまでは、無料のシャトルバスがあるが、始発が9時のため、一時間の車道歩きが必要になる。熊が怖くて明るくなるのを少し待ったが、懐中電燈を頼りに歩き出した。目が慣れると、灯りなしでも歩ける状態であったが、車にすれ違う時には、轢かれないように点灯した。道路標識は、車の一方通行の所があり、行き先が書いてない所もあって、昨日ひととおり歩いて周囲を偵察しておいたのが役だった。
カーリー・ヴィレッジのキャンプ場のトイレに寄ったが、清潔でトイレットペーパーも置いてあった。7時にようやく明るくなった。夏なら、7時始発のバスを使ってもう少し、楽をすることができるのだが。
バーナルの滝
バーナルの滝
ハッピーアイルからいよいよトレッキングの開始となる。バーナルの滝までは、コンクリートで固められた観光客も歩ける遊歩道になっていた。途中、橋の上から滝を谷の奥に望むと、John Muir Trailとの分岐となり、その先には増水時に通行止めにするためのゲートがあった。滝の落差分だけの急な登りになった。秋とあって水量は多くないため、Mist Trailという程のことはなかった。急斜面の登りではあったが、石段が組んで登り易くしてあった。息が切れて喘ぎながら、第一目標のバーナルの滝に到着した。
登山口を振り返る
滝の落ち口は石畳になっており、見下ろすと、谷は遥か下であった。谷はまだ暗いが、谷の上にそびえるピークは日に照され始めていた。風景を眺めて息を整えた後、先を急いだ。バーナルの滝の上は小さな池になり、さらにその上にはなめ滝が続いていた。
頭をのぞかせたハーフドーム
明るく照されたハーフドームの頭も顔を覗かせたが、まだまだ高かった。はっきりしているものの砂地の道となり、ここから先は、充分な足拵えが必要になった。橋を渡り、谷の奥に進んだ。
リバティーキャップの岩峰
ネバダ滝
ネバダ滝の落ち口
ネバダ滝のほうが、バーナルの滝よりも豪快な水しぶきを上げて落下していた。再び滝の脇の崖の急な登りになった。道は細かく折り返し、整備はされているが、辛い登りであった。
リバティーキャップ東面
ヨセミテバレーの眺め
ハーフドームへの道から別れて、ネバダ滝の上に寄った。ナバダ滝の上は、岩畳の広場になっており、谷を見下ろし、またリバティーキャップの岩峰を見上げる、休憩するのに最適の所であった。滝に注ぐTenaya Creekには橋がかかり、その向こうから何人ものハイカーがやってきた。
リトルヨセミテバレー
近づいてきたハーフドーム
ネバダ滝の上には、さらに奥に向かってリトルヨセミテバレーが広がっていた。トレイルは、しばらくはほぼ平な道になった。ハーフドームの東に回り込んでいくと、右手にショルダー部、そこから稜線が続くのが見えて、そこが登り口であることが判った。難攻不落のハーフドームにも弱点が見えてきたが、頂上付近は垂直の壁になっているのが不安材料であった。
キャンプ場への分岐から、森林の中のジグザグの登りになった。近くのキャンプ場から出発したのか、他のハイカーにも多く出合うようになった。皆歩くのが速い。日本人登山者の脚力を見せようとしても平地では差は縮められず、斜面が急になった所でようやく追い付くことができた。
シェラネバダの山並み
ハーフドーム
Muir Trailを分けて登り続けると、稜線の一角に飛び出し、西の斜面を見下ろすことが出来るようになった。ハーフドームもそれほど遠くはなかったが、まだ高く聳えている。僅かに登るとショルダー部に続く稜線に出て、周囲の展望が一気に広がった。谷の向こうにはシェラネバダの白い雪をまとった山々が連なっていた。白砂の広い稜線を目の前のハーフドームに向かって進んだ。
ショルダー部への岩場
ドームの基部には、雷雲が発生した際の登山禁止の看板が立てられていた。手も使いたくなる急な登りが始まるが、石段が組まれており、難しくはない。息を整えながら登っていくと鎖が現れたが登りには必要は無く、この程度のものかと安心したが、これは間違いであった。
姿を現したハーフドーム山頂への鎖場
垂直に見える壁
ショルダー部に到着して見上げると、ハーフドームの頭は垂直に近い一枚岩であり、そこに金属のポールが立てられ、てすり状に鎖が張られ、数メートルおきに足場の横木が渡されていた。鎖の間を、アリのようにハイカーが山頂まで列を作っていた。この鎖は、5月下旬から10月中旬まで掛けられており、冬期は撤去されてしまうと新聞には書いてあった。
この様な鎖場は確かに日本には無い。日本の山で難所として名高い剣岳のカニのタテバイも比べられないスケール感である。なによりも、一枚岩のため、足場は、靴のフリクションと岩に埋めこまれたボルトと横木が頼りなのが怖い。
しばし休んで息を整えた。初めは、両脇の鎖を掴んで腕力で登り続けるが、息が続かなくなる。下りのハイカーとの擦れ違いで、片方の鎖にしがみついて待たなければならないのも辛い。ガイドブックには最大傾斜45度と書いてあったが、垂直に感じられた。中央部で傾斜は最大になり、腕も力が抜けてくる。ワーヤーがタルミなく張られているので、腕が脇よりも上がって力が入りにくい。休み休み登っていくと、ようやく傾斜も緩くなって山頂の一角に到着したのが判るが、足がなかなか前に進まない。足が痙攣を起こしかけて、ようやく山頂に到着した。