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パリ、カフェ、子育て、サードプレイス、
新たな時代を感じるものなどに関して
徒然なるままに自分の想いを綴っています。

フランスの都市計画 インフォーマルパブリックライフ

2014年10月12日 | インフォーマルパブリックライフ


 私がフランスの好きなところは 変わらないところは変わらない
だけど変えるところは意外にも びっくりするようなスピードで
進化させていく そんなとこ。

 「フランスっていつ行っても変わらないよね」という人がたまにいるけど
それは大間違いだと思う。街並、それは変わらない。
変わらないようにできている。だけど中身はぐわっと変わる。
私が留学した2001年はフランスには環境問題に興味のある人は少しだけ で
有機野菜のマルシェなんかもパリにたった1つしかなかったけれど
10年ちょっとたった今 意識は思い切り変ったようで
どこの街でも ちょっとあるけばビオの店。ワインもビオワインがやたと増えた。
そういう変化 だけでなく フランスが世界に誇ってもよさそうなものは
都市を変化させてることで これもこの10年くらいですごく変っているようだ。

 パリに貸し自転車ヴェリブがあるのはわりとよく知られてる。
この10年ちょっとでおきたパリの変化としては、ヴェリブだけでなく
貸し自動車、トラムの新設、私の留学時代から始まったパリプラージュ。
(これはもともと高速道路が走っていたセーヌ川右岸に砂をしきつめ
海岸のようにしてのんびり散歩を楽しもうというもの。街のど真ん中に
砂浜が出現し、デッキチェアが並び、しかもそこに半裸の男性達が
日焼けしようとごろ寝しているという姿に度肝を抜かれたものだ)
このイベントは大成功をおさめ、今では北のウルク運河の方まで広がっている。
久々に訪れたウルク運河(サンマルタン運河の北にある素敵なところ)には
船の学校や足こぎ式のボートも新たに用意されており、パリが
水の都であることに目覚めた様子が伺える。
今ではセーヌ川に通勤、通学用の船便も用意されているようだし、
オルセー美術館の隣のセーヌ右岸にはやたらめったらカフェが並び
(こんなのもなかった)無料でチェスやらゲームにこうじられる
スペースが用意されている。セーヌからの風、その横で飲み物を飲み
のんびり誰かと遊んでいられる・・・もちろん子供だって全然OK
その心地よいゆるさといったら!
これをインフォーマルパブリックライフと言わずして何と言おう?




 やっぱりフランス人は都市の使い方がうまい。
都会でのリラックスした過ごし方。広場にある昔ながらのカフェだけでなく
広場 人の集まる場 をいかにしてつくっていくか。
私はこのセーヌ川に1年前に開設されたというゆるい遊び場にまた度肝を抜かれ
なんだかやるせない気持になった。この国にはかなわない。
どんなに私たちがヨーロッパ風の真似をしたって、これには絶対かなわない。
隣にはセーヌ、水面には船を改装したカフェがゆるゆると浮かんでて
見上げれば美しいアレクサンドル3世橋がこちらを見下ろしている。
私は散々マリークレールの東京取材で「東京の水辺のカフェ」とやらを
探したけれど(そしてほとんどいいのがなかった)この国から来ている人に
それをたとえ見せたところで そりゃあ絶対かなわない。
やっぱり日本は日本らしさで勝負するしか道がない・・・と
思わされてしまった圧倒的な美しさと そのゆるさ。

 気取らない だれも気取らない 気取るための場所ではない。
ここはカフェ・ド・フロールじゃないんだから。
公園でピクニックも 別に誰も気取っていない。
格好をつけるためじゃなく 自分が気持いいと思うこと
自分だけでなく友達も 家族も楽しいと思うこと
自分の気持に素直になったら そんな場が生まれていくのだろうか。

 「セーヌ川沿いでのんびり ごろごろできたらしあわせだよね」
そんなことを思った人が圧倒的多数になれば きっと街は変ってく。
ブルゴーニュ地方の首都、ディジョン市は10年前から都市改造を始め
3年前から都市の中心地から車を追い出してしまったらしい。




 ディジョンはけっこう大きな都市で 車がないと相当歩くはめに
なるけれど それでも2本のトラムと小型バスだけ中に通して
あとは全てを追いやった。市場や配達にいく車だけが許可をもって走れるらしい。
「でも・・・住民は本当に満足してるんですか?」
と観光課の方に聞いたところ、「満足してるわよ!静かになったし
安全だし、路上駐車がないから道が広くなったのよ」と嬉しそうに
答えてくれた。中世の街並がしっかりと残るこの都市は
随分静かでまるでヴェネチアにいるようだ。
もちろん市の中心部の大きな広場には車は通っておらず
数件のカフェのテラスが広場をゆったりと囲んでる。真ん中では
はしゃぎまわる子供達。まさにまばゆいばかりの光景だった。

 フランスは問題を抱えてた。今だって全て解決しているわけじゃない。
都市の中に溢れた車、クラクションを鳴らす日々、排気ガス、そして狭い道。
そんな中、ディジョンはじめ、様々な都市が解決に向けて動いてる。
車を追い出すのは簡単じゃない。自分が車に乗っているならなおさらそうだ。
パリから外に行くときの激しい渋滞、それにトラムが拍車をかける。
今度はバスが拍車をかける。ナンシーという街から外に出ようとしたときも
2車線しかない道路のうち1車線がバス専用レーンになっていたから
まったく車が進まなかった。「だからね、こうやって車に乗ってる人の
やる気をくじく作戦なんだよ」ため息をつきながらローランが言う。
まだまだ問題はあるものの、それでも解決しようと前に動く。
パリの公園には共同菜園スペースもできていて、それも市内で増えてるらしい。
問題がある、でもそれを問題だ!と声に挙げ、そこから解決していく姿勢。
それでいつか 人々の笑顔が増えるなら それは素敵かもしれない。
パリはあまりに大きすぎ 車を追い出すのはそう簡単ではないだろうけど
またきっと変化が起こるのだろう。フランスのインフォーマルパブリックライフ、
リラックスした都会の生き方、もっとしっかり探りたい。

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