白石勇一の囲碁日記

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Master対棋士 第38局

2017年05月08日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
明日から本因坊戦挑戦手合が始まります。
勢いのある本木克弥挑戦者、どんな戦いを見せてくれるのでしょうか?
楽しみですね。
幽玄の間で中継されますので、ぜひご覧ください。

さて、本日はMasterと柁嘉熹九段(中国)の対局をご紹介します。
柁九段は1991年生まれの26歳、世界戦のLG杯などで優勝経験があります。



1図(実戦黒13)
Masterの黒番です。
まず、黒1が珍しい手です。
この手自体は所謂模様の接点です。
左上黒の構えを広げつつ、上辺白が勢力に育つことを防ぐ手で、好点と言えます。

しかし、こういう場面では黒Aなどと開いておくことが殆どでした。
白からBやCと圧迫されるのがきつく、黒1より価値が高いと見られていたからです。
ただ、右上黒はほぼ生きているので、手を抜くのも一理ある考え方です。
今まで全く打たれなかったのが不思議なぐらいかもしれません。





2図(実戦白14~黒19)
右下黒4、6の構えも、これ自体は何の変哲も無いようですが、意味を感じます。
Masterは黒6でAのスベリを、全60局中1局も打っていません。
その理由は、周辺への影響力が少ないからだと思われます。
この碁で言えば、黒6に石があれば黒△への援軍になります。





3図(実戦白20~黒25)
Masterは常に全局的に価値のある手を選びますが、狭い所を無視している訳ではありません。
黒6に注目しましょう。
この手では黒Aが素直ですが、すかさず白6からハネツいで来るでしょう。
逆に黒6と下がっておけば、黒Bの渡り、Cの三々入りが残ります。
狭いながらも根拠の要点なのです。





4図(実戦黒49~白50)
手順が進み、黒1、白2となったところで左辺の戦いは一段落です。
この結果、白は左上、左下隅を確保しましたが、黒は左辺を低く連絡しただけに見えます。
しかし、白△が宙に浮いているのがポイントで、Masterはこれを白の大きなマイナスと判断していると考えられます。

これ自体は当たり前のことですが、では実際に数字に直すとどのぐらいになるのでしょうか?
これは人間には難しすぎる分野です。
経験による勘で判断するしかなく、それが正解に近い人ほど強いということになります。
ところが、Masterはこういう分野を最も得意としています。
人間との対局でいつの間にか形勢に差が付いているのは、主にこうしたところの判断力の差が原因になっています。





5図(実戦黒69~黒77)
後に黒はタイミング良く左辺白の攻めに回りました。
黒9まで、自然に左上一帯の黒地が盛り上がっています。
こうなってみると、私にも黒の打ちやすさが感じられます。

本局は白が隙無く打った印象でしたが、やはりどこかで差が付いていました。
お互いに妙手や奇手の類は殆どありません。
活用法としては、棋士同士が打った碁を並べるのと同じように、全体の流れを追うのが良いでしょう。
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