白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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一力遼碁聖について

2020年08月16日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)

皆様こんばんは。
本日は初めて七大タイトルを獲得した、一力遼碁聖(23)について書きたいと思います。

一力碁聖は河北新報社社長の息子として生まれました。
河北新報は宮城県で圧倒的なシェアを誇る地方紙で、売上高は約200億円です。
凄い出自ですが、囲碁はあくまで個人競技ですから、本来はそれほど注目されることはありません。
しかし、一力碁聖はプロ入り前から河北新報の後継者と目されていたこと。
そして、河北新報はプロ棋戦である碁聖戦のスポンサーであること。
この2点により、一力碁聖は特異な道を歩んできました。

そもそも、囲碁棋士は専門性の高い職業です。
トーナメントプロとして活躍するためには実力が全てですから、囲碁の世界が全てという人がほとんどでした。
多くの棋士が10代で入段争いをするため、高校に行かないということも当たり前の選択でした。
中国ではさらに極端で、年端もいかない子供を一族総出で応援し、プロ修行させることも珍しくないと聞きます。

こんな世界ですから、棋士になった後も当然ながら囲碁一筋になります。
トーナメントプロとして成功する棋士は一握りですが、ほとんどの棋士は囲碁だけで生計を立てています。
囲碁以外の副業を持つ棋士が全くいないわけではありませんが、数少ない例外と言えます。

しかし、一力碁聖は普通の棋士とは違いました。
高校、大学と進学し、新卒で河北新報に入社したのです。
このことは、囲碁の世界で暮らす人々に大きな衝撃を与えました。
なにしろ、一力碁聖は十代後半の頃から一流棋士であり、若手棋戦や早碁棋戦で数多くのタイトルを獲得していたからです。
囲碁界では名家に生まれた人も囲碁の天才も珍しくありませんが、二足の草鞋を履くとは・・・。

一力碁聖の歩みは、必ずしも生まれや才能だけによるものではないと思います。
世の中の変化によるところも大きいのではないでしょうか。
近年は棋士を目指しながら、あるいは棋士になった後に高校や大学に行くケースが急増しています。
将来の可能性を広げたいということでしょうね。
そうなると、囲碁界全体の空気も変わってきます。
もし一力碁聖の生まれが10年か15年早かったら、同じ道は歩まなかったのではないでしょうか?

囲碁の競技寿命は長いです。
羽根直樹元碁聖は44歳ですし、50代や60代でタイトルを獲得した棋士もいます。
しかし、特殊な環境により、一力碁聖の棋士としての活躍期間は本来より短くなるかもしれません。
それでも、一力碁聖は囲碁界にとって非常に大きな存在になっていくと考えています。
囲碁界の大きな弱点として、外の世界で情報を発信できる人が少ないということがありました。
一力碁聖にはそれができると思います。

ともあれ、当面は囲碁界での活躍に期待したいですね。
安定感が非常に高くなっているので、世界戦でも結果を出せるのではないかと思っています。
これからが棋士としての本領発揮の時期ではないでしょうか。



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