白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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書評・第8回 ひと目の詰碁

2017年08月27日 23時59分59秒 | 書評
皆様こんばんは。
今回ご紹介するのはこの本です。



死活は碁の基本です。
死活の間違いは勝敗に直結しますし、序盤・中盤で石の強弱を判断する能力にも大きく関わって来ます。
ですから、囲碁の上達法として第一に挙げられるのが詰碁を解くことです。

しかし、最も重要な分野でありながら、多くの方が苦手意識を持っているのがこの詰碁です。
長年勉強しているのに初段の壁を越えられない、という方は多いですが、必ずと言って良いほど共通しているのは「詰碁が苦手」ということです。
毛嫌いして全くやらない、という方も珍しくありませんね。
それでは決して有段者になることはできません。

もちろん、詰碁に苦手意識を持ってしまう気持ちもよく分かります。
例えば、追い落としや打って返しで石を取ってください、といった問題は最終的には石を打ち上げるので、正解・失敗が明確に分かります。
しかし、詰碁はそうではないので正解・失敗が分かり難く、最初に何をして良いかも分かり難いのです。
また、多くの方は勝手読みをする傾向が強いですね。
自分の手に対する相手の対応も考えなければいけないのですが、それを自分の都合の良いように考えてしまい、正解を見付けたと思い込んでしまうのです。
そして、答えを見ると間違いばかりで詰碁が嫌になってしまいます。
結果、頑張って詰碁に取り組んでも身に付かないということにつながります。
他の分野にも共通していることですが、嫌々やってもなかなか伸びないものです。

では、楽しく取り組むためにはどうすれば良いかというと、解きやすい問題集を選ぶことです。
その点、本書はまず各問のヒントが非常に充実しており、何をすれば良いのかが明確になっています。
また、正解は一手だけ示せば良いので、全てを読み切れなくても大丈夫です。
結果、正解率が高くなり、楽しく取り組むことができるでしょう。

段々難易度が上がって行く構成になっており、後半は初級者にはなかなか気が付かない手筋なども出て来ますが、一手だけ見付けるなら決して不可能ではありません。
勘で当てるぐらいの気持ちでも良いので、気楽に挑戦して頂くと良いでしょう。
間違っても全く問題無く、解答を見てなるほどと思えればちゃんと身になっています。

本書は楽しく詰碁を解ける良書です。
2003年の発売以来、かなりのロングセラーになっています。
ただし1つ注意点があり、本書は入門レベルの方には難しいです。
最初の数問を眺めてみて、簡単と感じられなければもっと難易度の低い問題集を選ぶと良いでしょう。
いずれ解けるようになるので、買っておいても損はないと思いますが・・・(笑)。