白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

半目

2017年07月30日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は国手山脈杯のペア戦が行われましたが、日本ペア(柳時熏九段上野愛咲美初段)は台湾ペアに惜しくも半目負けでした。

半目というのは最小差であり、悔しさもまた特別です。
仮に、私がまず勝てそうもない棋士・・・例えば井山六冠と対局して、1目半や2目半の負けに終わったとしましょう。
その場合、もちろん内容にもよるでしょうが、善戦したとしてそれなりの満足が得られるかもしれません。
しかし、半目負けになったとしたらどうでしょうか?
間違いなく悔しさが先に来るでしょう。
何しろ、後半のミスの大半に敗因の烙印を押されてしまうのですから・・・。

囲碁界で生まれた重大な半目勝負の例を挙げてみましょう。
第2期棋聖戦最終局で、藤沢秀行棋聖加藤釼正本因坊(加藤正夫名誉王座)に半目勝ちして棋聖を防衛します。
その後藤沢棋聖は連覇を6まで伸ばし、名誉棋聖の称号を得ます。
一方、加藤名誉王座はその後も数多くのタイトルを獲得しますが、棋聖だけはついに手が届きませんでした。
棋士人生を左右する、史上最も価値のあった半目勝ちと言っても過言ではないでしょう。
「1億円の半目」などと言われたのも頷けるところです。

ですが、加藤名誉王座も半目に泣いたことばかりではありません。
第21期十段戦では趙治勲十段を3勝2敗で破っていますが、なんと勝った碁は全て半目です。
合計1目半でタイトル奪取と、ここでは大変な幸運に恵まれました。

では私はどうかと言えば、やはり大きな半目勝ちもあれば無念の半目もあります。
これまでの17局の半目を振り返ってみますと・・・。

2006/04/20 白石勇一 初段 白半目 工藤紀夫 九段
2006/09/28 首藤瞬  四段 黒半目 白石勇一 初段
2008/08/07 白石勇一 二段 白半目 宮崎龍太郎六段
2008/12/18 淡路修三 九段 黒半目 白石勇一 二段
2009/09/03 白石勇一 二段 黒半目 鈴木伸二 初段
2009/11/19 白石勇一 二段 黒半目 片岡聡  九段
2010/07/01 白石勇一 三段 白半目 山田晋次 五段
2010/10/07 首藤瞬  七段 白半目 白石勇一 三段
2011/02/24 白石勇一 三段 白半目 林子淵  七段
2011/05/26 加藤充志 八段 白半目 白石勇一 三段
2012/10/04 堀本満成 三段 白半目 白石勇一 四段
2013/10/03 白石勇一 五段 白半目 前田良二 七段
2014/02/27 白石勇一 五段 白半目 伊藤優詩 二段
2014/06/16 宮沢吾朗 九段 白半目 白石勇一 五段
2016/04/21 白石勇一 六段 黒半目 大森泰志 八段
2017/02/02 白石勇一 六段 黒半目 鈴木嘉倫 七段
2017/07/27 安達利昌 四段 白半目 白石勇一 六段

このようになっています(左が勝者)。
後から振り返って重要な半目勝ちの碁と言えば、2010年の山田晋次五段との対局です。
内容的にも苦しく、幸運な半目勝ちでした。
この碁は新人王戦の本戦トーナメントの1局であり、負けていればそこで終わりだったのです。
この半目勝ちの価値は高く、今後更新されることは無いでしょう。

また、翌年に加藤充志八段に負けていますが、これが最も悔しい半目負けです。
本因坊戦最終予選の対局であり、勝てばリーグまであと2勝というところでした。
勝っていればリーグ入りできたかと言えば、全くそうは思えないのですが、それにしても痛い半目でした。

半目差は運であると言われています。
誰しも幸運に恵まれることもあれば、不運に泣くこともあるでしょう。
半目負けしたとしても、そういうこともあると、割り切って次の対局に向かうのが正解ですね。




ですが、私に2回半目勝ちしている人だけは許せません。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする