白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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夢百合杯・1回戦

2017年06月19日 22時11分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は竜星戦の予選があり、幸運にも2連勝することができました。
次は若手と当たるので望み薄ですが、頑張りたいと思います。

さて、本日は第3回夢百合杯の1回戦が行われました。
オープン戦ということもあり、今回何とDeepZenGoが参戦!
棋戦にAIが参戦することには賛否両論でしょうが、人間を超える瞬間を確認できることには意義があるかもしれません。
AlphaGoの進化はあまりにも急激過ぎ、人類置いてけぼりでした。

DeepZenGoの1回戦の相手は、韓国の申旻埈五段でした。
相当な打ち手ですが、DeepZenGoが危なげなく勝ったように見えました。
私の印象ですが、打ち筋がMasterに似ているように感じます。
強いAIの打ち筋は、似たところに収束して来るのでしょうか?
今回は勝ち負けよりも、そういうところに注目して行こうと思っています。

そして、日本勢は高尾紳路九段河野臨九段余正麒七段が出場しました。
結果は余七段が敗れたものの、高尾九段と河野九段が勝ち、2回戦に進出しました。
高尾九段の相手が世界戦優勝経験者の江維傑九段であることを考えると、上々の結果でしょうね。

高尾九段は素晴らしい内容で圧倒していましたが、得意の筈の終盤でかなり乱れていましたね。
現在2人しかいないタイトルホルダーとしての出場は、物凄いプレッシャーがかかるのでしょう。
日程的にも厳しい戦いになりますが、2回戦以降もぜひ頑張って欲しいですね。

高尾九段の対局は幽玄の間で、DeepZenGoの対局はニコニコ生放送で解説されました。
当ブログでは、河野九段と余七段の対局のハイライトシーンをご紹介しましょう。



1図(河野-陶戦1)
河野九段(黒)と陶欣然六段の対局です。
赤で囲った部分の布石はMaster(AlphaGo)流です。
左下の空き隅への三々打ちも、Masterの影響ですね。
そして、右下黒△の三々入り・・・。
これはもう、見慣れた方も多いでしょうね。

河野九段は堅実という印象があると思いますが、序盤からかなり工夫します。
AIの打ち方も積極的に研究して取り入れているようです。
ただ、空き隅への三々打ちは、河野九段はAIの台頭以前から時々試みていたことを付け加えておきましょう。





2図(河野-陶戦2)
その後、黒1と仕掛けて行きました。
白Aとつないでくれれば嬉しいですが、白の多いところなので、当然ながら白2と反撃!
見た目は黒が心配に見えますね。





3図(河野-陶戦3)
しかし、黒〇は捨て石でした。
黒△まで左下隅と連絡し、白△一団を薄くしています。
結局この白の一部を千切ることになり、優勢を確立しました。
河野九段の大局観が光った1局でした。





4図(余-高戦1)
余七段と高三段(黒)の対局です。
右下でコウ争いをしていますが、白2が気が付き難いコウ立てでした。
黒Aと受けると、白Bとコウを取り返されてコウ立てが無いので・・・。





5図(余-高戦2)
黒1と解消する一手ですが、白2、4の封鎖が先手になり、眼2つに苛めてから白10と回ると、左辺が大きくなっています(黒5は6の左)。
上手い構想と思いました。
ただ、勝ちに結び付かなかったのは残念でしたね。

2回戦は21日(水)に行われます。
幽玄の間で中継されますので、日本勢の応援をよろしくお願いします!