囲碁の果樹園(囲碁の木がすくすく育つユートピアを目指して)

人間とAIが集い囲碁の真理を探究する場の構築をめざして、皆様とともにその在り方を探っていきます。

コスミツケ

2018-03-18 08:32:34 | 実験

囲碁AIの影響で見直されているコスミツケの手法の機微を、天頂の囲碁7を使って調べてみました。

図1の手順で、黒2と白3の交換は白を強くして悪いというのが古来の通説でした。天頂の囲碁7の候補手のなかにも黒2はいっていません。

そして、図1の局面評価も、読み始めでは黒48パーセントで若干黒不利なのですが、読みの手数が増えるにつれて図2(A)の黒1の評価が高まり、黒50パーセントに改まります。つまり、天頂の囲碁7としては、読んでみると図1は思ったよりも黒にとって有力ということになります。

図2(A)の黒1の後の変化を調べました。基本は、図2(B)の白2という穏健策が全くダメなことです。黒9までの結果は隅の黒地が大きすぎます。コモクのツケヒキ定石から生ずる類似系(C)と比較するとよくわかります。(C)のわかれの優劣は全局の配置によりますが白有力、(B)ははっきりと黒有利です。なお、この(C)で白2と黒3の交換は大きな利かしで、この交換の有無によって天頂の囲碁7の局面評価値に5パーセントの差が生じます。数値の意味や正しさは別として、従来感覚的に表現されていた利かしの効果が数値によって示されるのは興味深いところです。

図2(A)がだめであれば、図3(A)の白2からの戦いが必然に思われますが、ツケヒキ定石の場合とは違い、白からは第三の選択肢として(B)の白2がありました。黒3のワタリを許してから白4のツケは不思議な手順ですが、黒からの最強手段(C)の黒1に対して白2の反発ができるのがミソのようです。白6となれば、白Aと黒Bの交換が見事に働いてしまいます。

 

さらに面白いのは、図3(B)は白4までで一段落で、図4のように大場が優先されることです。

右上の形は新定石になりそうですが、従来の定石と少し違った趣があります。それは、この状態で一段落である、つまり黒からも白からも一手の価値が第一級の大場ほど大きくはない、という判断には深い読みの裏付けが必要だということです。周囲の状況によって読みの結果が変わるため、運用は容易ではありません。囲碁AIの影響で今後開発される新定石では、「定石その後」の処方箋の重要性が増してきそうです。