当店の「大人の人間学塾」の9月の課題図書にしました。14歳と中学生が考えるにもってこいのテーマ16に焦点を当てていますが、読者を中学生に限定するのにはもったいない内容で、学び多い1冊です。
まずは、副題の前半である、「どう考え」です。じっくり考えなくても、生きていけるほど、便利で至れり尽くせりの世の中になっています。逆に言えば、考えさせないような仕組みが出来上がっていると言っても過言ではないでしょう。あるいは、「長いものに巻かれろ」で、考えずに、人の判断に流される方が楽であると思っている人も多いでしょうが、
「自分で考えたこと、自分の頭を使って自分でしっかり考えたことというのは、決して忘れることがない。」
「これからの人生、すごく大変なことだけれども、常に自分で考えなくちゃいけない。」
「考えるほどに、いろんなことが見えてきて、君は考えるのをやめられなくなるはずだ。」
というスタンスで生きていくことこそ大切です。考えれば、
「本当の価値は、いつどこでどんな時でも同じ価値でなければならない。(中略)本当の価値、きみの人生とって本当に大事なものは、きみの中にこそある。」ということに繋がります。
次に、後半部の、「どう生きるか」に関しては、
「人が生きてゆくのは、よい人生を生きるためだ。自分にとってのよい人生、幸福な人生を生きることが、すべての人の人生の目的だ。」
ということが、間違いなく、本命です。そして、「幸福とは、職業や生活のことではなく、心のこと。(中略)心が幸福になるのでなければ、人が幸福になることは、絶対にできない。」つまり、心の平安が幸福への第一歩でしょう。そのためにも、「自然」や「宗教」の稿で書かれていた、
「君がその体で生きているということそのことが、自然のことだ」
「自分がいまここに存在しているということが、それ自体で、奇跡的で絶対的な出来事なのだと気づく」
という認識が大前提になると思います。すべての生が奇跡的な存在であると信じれば、争いや差別もなくなるでしょう。
『14歳の君へ―どう考えどう生きるか』(池田晶子著、毎日新聞出版社、本体価格1,143円)