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そして、星の輝く夜がくる

2014-11-19 18:20:40 | 

  阪神・淡路大震災から20年が来年1月にやってきます。ノンフィクションや写真集、絵本はこれまでにも多く出版されてきましたが、小説はまだ数少ないですね。原田マハさんの『翔ぶ少女』以外にないかなぁと探していたところ、新聞記事で真山仁さんのことが書かれていて、この本を知りました。この本の奥付は今年3月11日、東日本大震災3年目でした。

 主人公は神戸市出身の小学校教師・小野寺徹平。2011年5月に、被災地にある遠間第一小学校に、応援教師として神戸から赴任。彼は17年前の阪神・淡路大震災で被災し、妻と娘を亡くし、茫然自失の状態でしたが、「あの時の辛さに耐え、生きる喜びを子どもたちに伝える」ことを自身の使命として教師を続けてきました。神戸市西区の小学校に勤務していましたが、校長との諍いから、東北にやってきました。

 「忍耐強い」という東北人の気質や、復旧、復興に懸命な親に対して、子どもたちが無意識な遠慮をしていると気付いた小野寺先生は、子どもたちらしさの喜怒哀楽を前面に出すように指導します。被災し、復興までの経験を活かした彼の行動は、保護者や同僚教諭と軋轢を生みます。しかし、使命の実現のために動いた小野寺先生の力で、子どもたち、そして、保護者、校長を始めとする先生方の「心の復興」の端緒に付けるようになります。

 2012年1月17日の神戸市中央区の東遊園地での「1.17のつどい」を描く場面では、小野寺自身の被災の様子も書かれています。「明日も生きる勇気をもらいに来るんや。一生懸命がんばるから、天国から応援してなって」という、彼の上司であった森永先生の言葉は、東日本大震災での被災者へのエールかもしれません。

 経験が希望を生み、子どもたちに笑みがよみがえる。気持ちが高揚すれば、夜空を見上げる余裕も生まれ、だからこそ、「星の輝く夜がくる」と確認できる。一歩一歩ですが、止めない歩みは幸せを呼びます。

『そして、星の輝く夜がくる 』(真山仁著、講談社、本体価格1,500円)

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