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板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい

2015-09-06 15:52:57 | 

 「言葉」は人に大きな影響力を持つことはわかっていても、それを上手に使う人は少ないかもしれません。

  医師とがん患者の間の隙間を埋めるための試みとして創設された「がん哲学外来」。順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授の著者が、がんを罹患し、不安感を募らせている患者に、副作用のない「言葉の処方箋」を提供しています。この処方箋は、励ましや応援ではなく、患者の思考を前向きに変えてあげる、つまり、人間の根源に触れる問いかけをしていく問診です。

 余命いくばくという診断をされた患者とその家族にとって、うつ状態になるのは当たり前。しかし、 「命が何より大切ではなく、命のある限りやるべきことがあることを自ら認識する」ことに主眼を置いて語りかける。そして、 「死しても生きるとはどういうことか」「死から生を見つめる」視点は健康な人にも重要です。そのバックボーンとして、内村鑑三、新渡戸稲造、南原繫、矢内原忠雄、吉田富三の五人の言葉、箴言を読み込み、タイミングよく患者へ答えていく外来は人間学の新潮流かもしれません。

 語られた言葉の中で、私にとってピカリと光るものを紹介します。

 「あなたは、ただそこにいるだけで価値ある存在です ~ 『to do』よりも『to be』を大事にする」

 「自分以外のものに関心を持つと、やるべきことが見えてくる」

 「自分だけの箴言を持てば不安や寂しさが解消できる ~ どんなにお金がなくても言葉は贈れる」

 「川の流れの源部分の源流は細く、足を広げれば簡単に渡ることが出来る ~ 大切なものの本質は案外小さい ~ 根本を見据える必要がある」

 「よい師、よい友、よい読書 - 人生の三大邂逅のうち、最後の最後に一人でできるのは読書です」

『明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい』(樋野興夫著、幻冬舎、本体価格1,100円)

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