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板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

脱皮成長する経営

2018-04-03 15:08:25 | 

  「共創」という言葉をキーワードに検索していたら、本書に遭遇しました。副題にある、「無競争志向がもたらす前川製作所の価値創造」の、前川製作所さんの社名を全く存じ上げなく、しかし、読み進めると、とても興味深い経営をされている企業であることを知りました。

 産業用冷凍・冷蔵装置、食品・食肉加工装置、エネルギー、ケミカルという4主要事業を展開するグローバル企業。産業用途がメインで、非上場なので、私にとっては知り得てませんでしたが、一般にも関係するであろう、フィギュアスケートやカーリングなどの会場の冷却装置では欠かせない存在です。1924年(大正13)に冷凍機輸入、設置業者からスタートし、製氷事業に進出し、冷凍機製造へと発展し、事業拡大しています。企業規模が大きくなればなるほど、町工場のDNAを深堀していく姿勢を堅持しています。それは、

①顧客に寄り添う ②多能工 ③ユーザー感覚 ④恥の文化(「できません」はタブー) ⑤自前主義

を体現しています。顧客の課題に対して、経営者感覚でスピード感を持って対応する、セミオーダーもしくは完全オーダーの製造業として、無競争のジャンルを自ら創り出していっています。

 また、書名にある「脱皮」は、「組織の文化を更新し、新たな製品で新しい顧客を対象として、新しいビジネスモデルで成長を遂げる」と定義されており、既存の土俵から少しずらした、新しい土俵を築き、展開しています。ここには、顧客のことを一心に思い、考え、行動し、顧客の課題解決に奔走する人材の育成が欠かせません。AI時代になればなるほど、「考える」ことが大切になり、考える集団を自社に持つことがどれだけ成長に貢献するか自明かと思います。脱皮は考える結果です。私たちも考え尽くして、脱皮するイメージを持ちたい。

『脱皮成長する経営』(恩藏直人・永井竜之介 著、千倉書房、本体価格2,400円)

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