猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

読売世論調査で、教育基本法改正案に賛成66%

2006-05-19 02:42:12 | 教育・教科書・学力
 教育基本法改正に関する私のスタンスは、1ヶ月ほど前に『教育基本法改正案に自公合意―”愛国心”がお題目に終わらないように』の中で詳述したとおりである。かいつまんで言うと、いくら心情としての愛国心を高揚させたからといって、社会の乱れが直ちに解消すると考えるのは早計であり、国家社会の構成員たる責任を自覚するという理性的な面こそ教育により養うべきだろうというものである。現在の日本人に欠けているのはこの部分であって、国家社会のために奉仕するという精神こそが重要なのである。愛国心という言葉を盛り込んだからどうこうなるという性格のものではない。
 さて、教育は国家百年の計に属する分野である。それを、教育基本法改正をめぐって政局沙汰にしようなどとは論外である。民主党は、愛国心の表現などで与党に楔を打ち込もうとしていると見られている。しかし、いちいち同じ土俵に乗って大袈裟に反応することのないよう、この点は自民党にも敢えて苦言あるいは直言を申し上げておきたい。与党は、国家百年の計を思い鷹揚と対応すべきなのである。民主党の鳩山幹事長は、改正案に「他国を尊重」とある部分に関して「拉致という行為を犯した北朝鮮も尊重しなければならないのか」と追及した。これなどは、私が前述の記事の中で「ためにする議論をしようと思えばしやすい部分」として指摘した部分である。鳩山氏の指摘はためにする議論であって、「尊重する=全てを容認する」であるわけがない。しかし、与党案も、そういう妙な解釈を生み出さないためにも、社会的正義を追求することを前面に出すように改める余地はある。現行の第1条にあった「正義」を前文にもっていったのは不満である。その他に、変な解釈を生みそうなのが、「男女平等」と「国際社会の平和と発展に寄与」である。前者は、本来はおかしな話でも何でもないにもかかわらず、奇矯なジェンダーフリー論者の論拠を与えかねない。削除を要求したい。後者は「地球市民」育成の根拠にされかねない。国家という社会構成単位に重きを置いてバランスをとる必要がある。
 国民世論の趨勢はどうかというと、讀賣新聞の世論調査で教育基本法改正案への賛成が66%に達したそうだ。それも勇気付けられることには違いないが、改正案に盛り込まれた条項の中で重要と思うものを挙げた調査結果がさらに興味深い。同調査によれば、「『豊かな情操と道徳心を培う』の追加」と答えた人が48%で最も多く、以下「『公共の精神を尊ぶ』の追加」36%、「『国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う』の追加」29%、「『職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う』の追加」「『我が国と郷土を愛する』の追加」各26%などの順だった。国民の多数が考えていることは、素朴な愛国心よりも、道徳心の涵養や公共心の育成と言ったところにあることが読み取れる。改正反対派に塩を送るようでこういうことを言うのは気が引けるが、あえて語弊を恐れずに言えば、多くの右派にえらく叩かれている現行の教育基本法の下で教育を受けた国民が極めて健全な良識を備えていることを見れば、現行の教育基本法が諸悪の根源であるかのごとく主張するのは誤りであろう。現行の教育基本法を魔女狩りの魔女のように扱ってみても不毛なだけで、もっと総合的な観点から教育を再構築すること必要である。教育基本法改正がこれほど大きな政治課題になってしまうと、改正が成立したらそれで満足して先に進まないなどという結果になりはしないかと危惧するものである。



(参考記事1)
[教育基本法改正案「賛成」66%…読売世論調査]
 読売新聞社が13、14の両日に実施した全国世論調査(面接方式)で、16日から国会審議が始まった教育基本法改正案について、「賛成」と答えた人が「どちらかといえば」を合わせて66%に達した。
 「反対」は、「どちらかといえば」を合わせて14%だった。
 支持政党別に見ると、「賛成」は、自民支持層で76%、公明支持層で8割に上り、民主支持層でも63%を占めた。社民、共産支持層では「反対」が多数派だった。無党派層では「賛成」が58%だった。
 年代別に見ると、「賛成」は20歳代が73%で最多。50歳代が最も少なかったが、それでも61%に上った。
 改正案は、現在の基本法に様々な項目を加えたほか、一部の規定を削除した。その中でとくに重要だと思うものを、八つの中から複数回答で選んでもらったところ、「『豊かな情操と道徳心を培う』の追加」と答えた人が48%で最も多かった。次いで、「『公共の精神を尊ぶ』の追加」36%、「『国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う』の追加」29%、「『職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う』の追加」「『我が国と郷土を愛する』の追加」各26%――などの順だった。
(読売新聞) - 5月17日3時10分更新

(参考記事2)
[教育基本法 衆院審議入り 「愛国心」で与党分断]
揺さぶる民主 自民「羊頭狗肉」
 終盤国会の最大の焦点である教育基本法改正案は十六日の衆院本会議で、小泉純一郎首相が出席して趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。政府提出の改正案は、現行法にない「愛国心」の表現などで公明党に譲歩したため、自民党内の一部に不満が残っている。この日は早速、民主党の鳩山由紀夫幹事長が与党間にくさびを打ち込む作戦を展開した。
 「多くの自民党の皆さんも、私と同じ気持ちをお持ちなのではないか」
 鳩山氏は改正案が「愛国心」の表現について「我が国と郷土を愛する態度」としている点に疑問を表明。さらに、「他国を尊重」とある部分に関し、「拉致という行為を犯した北朝鮮も尊重しなければならないのか」とたたみかけた。
 これに対し、首相は「態度は、心と一体として養われるものと考えている」と強調。さらに「他国を尊重とは、特定の国を指すものではない」と答弁した。ただ、それではなぜ「心」ではなく「態度」としたのかや、「他国」に北朝鮮は含まれるかは、明確にしなかった。
 鳩山氏が指摘した点は、与党の教育基本法改正検討会が非公開の“密室協議”で案を決め、自民党の文部科学部会などで反対が相次いだ部分。「内心では、鳩山さんの言う通りだとうなずいた自民党議員は多いはず」(文教関係議員)との観測もある。
 自民党の関係部会では、「尊重」との表現について「せめて『理解』ではどうか」との意見も出たが、修正は認められなかった。ところが、民主党の対案には、自民党の保守派や同党を支持する宗教団体などの意見を意識して「他国や他文化を理解」との文言が盛り込まれたからだ。
 こうした民主党の攻勢に、自民党幹部は「愛国心を前文に書くだけの民主党案は羊頭狗肉(ようとうくにく)だ」と民主党案に反発する。
 自民党の細田博之国対委員長が、役員連絡会で「日教組に甘い民主党案がよいという議員もいるようなので注意してほしい」と発言する一幕もあった。十六日開かれた自民党の国会対策会議でも「民主党案を分析してきちんと対応を考えなければならない」(関係者)との結論に達したという。
 ただ、自民党執行部は、教育基本法改正案の閣議決定までに比較的スムーズに党内手続きを終えているため、昨年の通常国会で郵政民営化法案の採決の際に「造反議員」が続出したような混乱は想定していない。
 むしろ、党執行部は、今国会での改正案成立のためには会期延長が不可欠であるにもかかわらず、小泉首相が会期延長を否定する発言を繰り返していることの方を懸念しており、官邸と与党との間での水面下の駆け引きが活発化しそうだ。
     ◇
 16日の衆院本会議での鳩山氏以外の論戦のポイントは次の通り。
 【愛国心】
 保坂展人氏(社民・市民連合) 「愛国心」の表現で、文科省が教員や子供の心の内面に土足で踏み込んで権力を振るう恐れがある。
 首相 歴史的、文化的共同体としてのわが国を愛することだ。時々の政府や内閣などを愛するという趣旨ではない。教育上の目標として規定しており、児童や生徒の内心に立ち入って強制するのではない。教育勅語の復活を意図するものではない。教員は法令に基づき職務上の責務として指導を行うもので、思想・良心の自由の侵害になるとは考えていない。
 【改正の理由】
 下村博文氏(自民) 改正案提出の理由は。
 首相 少子高齢化など教育をめぐる状況が変化し、道徳心や公共の精神などの重視が求められる。新しい時代の教育理念を明確にし、国民の共通理解を図るためだ。
 太田昭宏氏(公明) 家庭や学校教育の在り方のみに問題があるかのような議論がある。
 小坂憲次文科相 家庭、学校、地域社会の三者がそれぞれ責任を自覚し、心身共にたくましい、次世代を担う子供たちを社会全体ではぐくむことができるよう努めたい。
(産経新聞) - 5月17日4時8分更新


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2 コメント

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実際 (PJ)
2006-05-20 10:35:20
教育が一番大事なのかも知れませんね。

愛国心にしても、歴史にしても、天皇の存在にしても、女性の体を大事にするにしても、全部を阻害することが出来るのが教師とは・・・。おそろしいぃぃぃぃ・・・。
PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-05-22 23:19:47
全くその通りで、教育は重要です。ただし現代国家においては政府が何でもかんでも全てコントロールできると考えるのではなくて、国民の常識が反映できるような制度作りが重要なのだろうと思います。世論調査などを見ておりますと、国民の良識をもっと信用してよいのではなかろうかという気がします。