猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

年金を完全一元化した場合の負担の試算

2005-10-29 00:12:57 | 医療・年金
 「年金一元化」と一口に言うが、自民党の主張は一階部分に相当する国民年金を除いて二階部分の厚生年金や共済年金を一元化するというものであり、民主党案は国民年金も含めて完全に一元化するというものである。ただし、民主党案は「ゼロ階部分」とでも呼べる全額税負担の「最低保障年金」なるものが加わる。「ゼロ階」と呼びたい理由は、所得の多い人にはそれが給付されない点である。両案ともに一長一短あると思うが、技術的な実現性からいえば自民党案に軍配が上がるのではないか。もっとも、賛否はともかくとして何らかの理念を感じるのは民主党案の方であろう。
 その民主党案をそのままシミュレートしたものではないが、完全一元化した場合の負担がどの程度になるかという試算が発表されたので、ご紹介したい。それによれば、現行制度並みの給付水準を維持するためには、保険料率を年収の20%、消費税率は当面7%程度にする必要があるとのことだ。消費税の使途は福祉目的化したとしても年金に限られるわけではないから、さらに高い税率となるのは間違いない。二ケタ台ということになろう。完全一元化の利点は保険料の未納問題への解答となりうる点、問題となるのは自営業者の所得を正確に捕捉することの困難さである。
 現行の自民党案が望ましいのか、それとも完全一元化まで踏み込むべきか、こればかりはまさに国民的議論が必要としかいいようがない。年金改革に関する与野党間協議を早急に再開せねばならない。年金制度改革は超党派で臨まなければ必ず失敗に終わり子孫にツケを残すことになる。


(参照記事)
[年金一元化、保険料率20%・消費税7%で給付維持]
 公的年金を国民年金も含めて完全に一元化する場合、現行制度並みの給付水準を維持するためには、保険料率を年収の20%、消費税率を当面は現在より2ポイント高い7%程度にする必要があることが、駒村康平・東洋大教授らの試算で明らかになった。
 保険料率を現行の厚生年金が想定する18・3%とする場合は、定年の65歳への完全延長や女性の就業率向上により、制度の支え手を増やすことなどが必要になる。保険料率を15%にとどめた場合には、給付水準の引き下げに加え、消費税率を現在より4ポイント高い9%程度にする必要がある。
(読売新聞) - 10月26日3時5分更新


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4 コメント

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年金のための負担増は国民も納得するようですね (tsubamerailstar)
2005-10-29 10:58:00
年金は社労士とかFP、確定拠出年金の資格取得でちょろっとやったのですが、まぁ、複雑で難儀しました。(汗)



>もっとも、賛否はともかくとして何らかの理念を感じるのは民主党案の方であろう。



確かにそれはそうですね。もっとも、これやるんだったら現行の二階建て年金が導入された61年改正の段階でないと難しかったでしょう。



>「ゼロ階」と呼びたい理由は、所得の多い人にはそれが給付されない点である。



ここが最大の問題点なんですよね。つまり「第二の生活保護」ということになってしまう訳で理念・趣旨的なものが大きく崩れてしまいます。在日外国人が帰国する場合には脱退一時金として一部を返したり、年金通算協定も各国との間でだいぶ整備されてきましたが、それらえも全部おじゃんになってしまいます。

厚生年金と共済年金の統合は、後者の母集団が減ってきますので必要なことだろうと思いますが、基礎年金部分までというのは所得の細くの面が一番のネックですね。現実問題として大きいのは未納問題ですから、徴収の窓口を国税と一本化させて、未納者には納税証明を出さない等の措置を取ることだろうと思います。徴収のノウハウに関しては国税に勝てる組織はありませんから。(爆)

tsubamerailstar様 (猫研究員(高峰康修))
2005-10-29 22:43:25
コメントありがとうございます。

年金は全く複雑で、正直言って勉強するのに手を焼いています。「生兵法は怪我のもと」にならないかヒヤヒヤしながら記事書いています。

民主党案の理念は要するに「所得再配分」なんですよね。それで、年金制度に「第二の生活保護」が紛れ込んできている。最低保障年金というからには、一律に給付すべきと思います。財源を税にするなら、高額所得者に給付しないとなれば「再配分」の度が過ぎるというものです。

あっ!未納問題への対策として徴収の窓口を国税と一本化するというのは民主党の提案に確かあったはずです。そういう突破口から与野党協議を始めるべきですよね。
今日はそれで年金の本を読んでおりました (tsubamerailstar)
2005-10-30 22:54:23
研究員様こんばんは!とにかく、改正になってしまうと前の知識は役に立ちませんので、今日は昼からだらだら年金の本を読んでおりました。



簡単な仕組みとしては、「年金があっという間にわかる本」という社労士のコーナーに売っている真島何とか著の本がよろしいかと思います。経過措置等の流れをつかむ意味でも。

年金数理的な部分はそれが専門の資格であり、これはちょっとフツーはですねぇ。(汗)



徴収の問題に関しては、国民年金も市町村から社保庁に移してかえって悪くなったという経緯もあります。地縁的なものがかえってよかったんですねぇ。

縦割り行政の悪しき弊害ですが、61年に国民皆年金・皆保険体制が整備されたにも関わらず、40年以上もこんな簡単なことに気づかず、挙句の果てには、二階建て年金導入後は未納者のツケは被用者が損を食らっているのです。

徴収の窓口一本化というのは、年金の中身そものもののといった思想的な議論ではなく、行政改革の一環という単純なテクニカルタームでありますから、そういう簡単な話を手土産に「やったやった!」と協議始めるのは確かに賛成ですね!

tsubamereailstar様 (猫研究員)
2005-10-30 23:51:47
なるほど!そういう実務的な資格対策本が分かりやすいのですね。今度買って読んでみます。

そうなんですよね。改正されると役に立たなくなるのが手痛い。税制なんかも気づいたら全然違うものになってたりして、古い知識をもとに物書いたら恥さらしで怖いです。

民主党の前原さんは改革競争したがってるようなので、徴収窓口一本化の案などを携えて積極的に協議に応じてくれるといいのですが…。

色々教えていただいて本当に感謝です!