感染症診療の原則

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症例から考える、日常診療におけるHIV感染症の早期診断 Q&A

2018-10-17 | Aoki Office
Q1. 医療者が早期診断をする事が重要であるとともに、高リスクの方をどのように検査に結びつけるかも重要だと思いますが、それについてはどういった取り組みがなされているのでしょうか?

A1. 日本において最もリスクが高いのは男性同性間性交渉を行う方々であり、ここを対象とした啓蒙・検査キャンペーンは、メンバーに当事者を含む厚労省研究班などを中心に、検査イベントやコミュニティスペースでの啓蒙、スマートフォンアプリへの広告掲出などの形で継続的に行われています。全国平均と比較して大都市部でHIV感染症診断時のエイズ発症比率が低めとなっていることから、このようなキャンペーンは一定の成果をあげているものと思われます。問題はこのようなキャンペーンが届かない方々で、特に非都市部や高齢層、外国人では自身の感染リスクに気付かないまま体調を崩してしまうことも想定され、病院での検査の役割が非常に大きくなります。

Q2. 第4世代のスクリーニング検査が行われる施設で、確認検査でPCR検査に加えWB法を行う意義はあるのでしょうか? WB法2についても行うべきでしょうか?

A2. HIV-1 PCR法が陽性となった場合にはHIV-1感染症の診断が確定しますので、診断のためにWestern
Blot法を行う意義は確かに大きくないかもしれません(現在の日本の診断アルゴリズムではスクリーニング陽性時にはWestern
Blot法とPCR法を両方行うことが推奨されています)。急性感染症状がある場合には、Western
Blot法が陰性あるいは判定保留であれば急性感染を強く疑う根拠となるので、意義はあると思われます。

HIV-2感染症では一部の抗HIV薬が選択できないためHIV-1感染症との鑑別は重要ですが、現在のところHIV-2の流行が主に西アフリカ地域に限局していますので、HIV-1の感染が確定し、HIV-2流行地域との接点がない場合には、日本においてHIV-2
Western Blot法をあえて行う必要はないのではないかと思います。

Q3. HIV検査は保険請求できるのでしょうか? また、非専門医がHIV検査を行って保険請求しても査定されないのでしょうか?

A3. 現状では術前や入院時などのHIVスクリーニングは保険請求できませんが、一部の臨床状況においては保険請求できるとされています。「医科診療報酬点数表に関する事項(通知)(平成24年3月5日保医発0305第1号)」に、「間質性肺炎等後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病が認められる場合やHIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合,既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合は、本検査(注:HIVスクリーニング検査)を算定できる」と記載されています(それまで「既往がある場合又は疑われる場合」の文言はなかった)ので、たとえば術前検査で梅毒や(性感染症としての)B型肝炎の既往がわかった場合には算定できることになります。

自分の感染リスクを自覚していない未診断のHIV感染者が専門医を選んで受診することはありませんので、専門医が行った検査ではないという理由だけで査定されるということはないはずです。

Q4. 帯状疱疹でHIV検査しても保険請求できないのではないでしょうか。

A4. 帯状疱疹だけを理由にHIVスクリーニングを行っても保険請求できない可能性はありますが(Q3の通知における「間質性肺炎等後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病」に含まれるかの解釈が難しい)、追加問診で性感染症の既往が聴取されれば認められるはずです。「問診でHIV感染リスクが聴取された場合」にも保険で検査を行うことができれば検査機会の増加につなげられる可能性があるので残念ではありますが、適切に問診が行われた上で検査に進んだかを査定側が知るすべがない以上(このような問診内容を症状詳記に記載することは適切ではないと思われる)、現状ではやむを得ないのかもしれません。このような場合は、病院では自費検査になってしまうことだけでなく、保健所など無料匿名の検査機会が用意されていることを是非お伝えいただければと思います。

Q5. 新宿で感染症科の標榜に来られる方では上気道炎症状でもHIV感染を疑う背景と思います。都心でない地域でも、急性上気道炎の方は多く来られます。全員に性的接触を問診することはありません。どんな症候があった時に上気道炎がHIV感染症の初期と考えるのでしょうか。

A5. 新宿であってもそれ以外の地域であっても、急性上気道炎症状で受診される方のほとんどは急性上気道炎だと思います。また、その受診者がHIV感染者であったとしても、急性HIV感染症で受診する頻度より、たまたま合併した急性上気道炎で受診する方の方が間違いなく多いはずです。全例で初診時にHIV感染症を疑って性交渉歴を訊ねるのは現実的ではないと思いますし、急性HIV感染症を身体所見だけから絞り込むのは難しいですが(Wood
E. JAMA 2014;312(3):278-85.)、症状が強い時や長引く時(再度受診した時)にはより時間をかけて診療するでしょうから、まずはその時に訊ねることから始めてみるのはいかがでしょうか。
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