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子どもの脳梗塞と感染症(水ぼうそう、そのあとで その3)

2012-02-25 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
水痘エンデミック国(常時流行国)では、のちのちの帯状疱疹のことが心配だ・・・ということを先に記事にしましたが、水痘が流行し続けることで他にもいろいろ問題が生じる、、、の例としてこどもの脳梗塞がありました。

小児科の先生方から情報をいただきましたので(いつもありがとうございます)この機会に勉強しようと思って調べてみました。
小児のことはなかなか手が回らないのでこのような機会はとてもありがたいです。

水痘になることで高まる他の健康問題のリスクのひとつに「脳梗塞」があります。

街角で話題にしたら、「おとしよりの病気じゃないの?」と思われる方も多いと思います。

なぜ。そして、いったいどのように?

まず症例から。 
愛知県の症例をみつけました。

どのように受診してきたかというと、「こどもが転んで頭部打撲。そして失語症、片側麻痺」

救急外来でこんな話からはじまったら。・・・・なんだろう。とにかくCTだ。MRI・・・。

診断の難しさ、長期にわたるリハビリなど、とてもたいへんです。

日本で水痘はオールシーズン流行しているためか、学会などでも話題になっています。

「水痘罹患4か月後に脳梗塞をきたした1例」(高知県)日本小児科学会雑誌 114(3)2010年3月
「水痘不顕性感染後に脳梗塞を発症した1例」(富山県)日本小児科学会雑誌113(9) 2009年9月
  こちらも 突然の左片麻痺,左顔面神経麻痺で発症、です。


全体像をみてみましょう。
米国の事情ですが、、、2011年の年末に出たレビュー。全文アクセスできます。

Pediatric stroke: a review Emerg Med Int. 2011;2011:734506. Epub 2011 Dec 27.

成人との違いが背景のところに詳細に書かれています。

小児の梗塞では10-25%が死亡、25%が再発。66%はその後中枢神経系の症状や後遺症が残る。
統計的には小さな数字だが、診断が難しく過小評価になっている。

成人よりもより多様な原因でなることが把握されています。
このうち予防可能なものはどれだけあるのでしょうか。

感染症との関連について記載がありました。

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5.3. Infection
Varicella infection within the past year can result in basal ganglia infarction [56, 57]. HIV infection can cause stroke secondary to HIV-induced vasculitis, vasculopathy with subsequent aneurysms, or hemorrhage in the context of immune thrombocytopenia [58, 59]. More commonly associated organisms include mycoplasma and chlamydia, as well as enterovirus, parvovirus 19, influenza A, coxsackie, Rocky Mountain spotted fever, or cat scratch disease [58, 60]. Five to twelve percent of children with bacterial meningitis, TB meningitis, and viral encephalitis will have a stroke due to local vasculitis and thrombosis. A history of drinking raw milk or visiting a farm may point to a diagnosis of neurobrucellosis [61]. Head and neck infections, such as mastoiditis or periorbital infections, remain important causes of CVT [2, 31].
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さっそく水痘との関連文献をみてみましょう。

56. Askalan R, Laughlin S, Mayank S, et al. Chickenpox and stroke in childhood: a study of frequency and causation. Stroke. 2001;32(6):1257–1262.

57. Sébire G, Meyer L, Chabrier S. Varicella as a risk factor for cerebral infarction in childhood: a case- control study. Annals of Neurology. 1999;45(5):679–680.

ひとつめ。2001年発表ののカナダの2つの小児病院でのコホート調査。
Chickenpox and stroke in childhood: a study of frequency and causation.(Stroke. 2001 Jun;32(6):1257-62.)

 生後6カ月から10歳まで
 AISの前、1年以内の水痘感染があったかどうか

このコホート調査では、70例のAISのうち、22例(31%)に水痘感染がありました。健康な子どもでは9%でした。水痘発症群での危険因子は、basal ganglia infarcts (P<0.001), abnormal cerebral vascular imaging (P<0.05) AISの再発も非水痘群と比較して高くなっていました (P<0.05)。
幼いこどものAIS症例では、水痘感染群は非感染群と比べて3倍発症リスクが高くなっていました。再発率は2倍でした。

2つめはベルギーからの報告で、有為に水痘発症群でのリスクが高かったとのことです。


もう少し症例をみてみましょう。
Stroke After Varicella-zoster Infection: Report of a Case: Case Report 
<a href="http://www.medscape.com/viewarticle/727899_2">Medscape


A 5-year-old girl with no history of immunologic or neurologic disorders was admitted to our hospital because of left sided hemiparesis and aphasia of gradual onset.
The history had begun 10 days previously with episodes of weakness of the left arm and dysarthria with mouth drooping that lasted about 5 minutes.

On the day of admission, she developed weakness of the left lower leg and walking difficulties.
The patient did not have a fever or changes in mental status. On admission she was alert, oriented, and able to describe the event.
Physical examination revealed mild drooping of the left corner of the mouth and left arm weakness.
She walked normally; tendon reflexes were normal but mild hemiparesis of the left leg was present.
There were no other neurologic or physical abnormalities, nor nuchal rigidity. Echocardiogram and electrocardiography were normal. Electroencephalography showed slowing of the delta waves in the right derivations.
The patient's medical history was unremarkable except for chickenpox at age 1 year and reactivation of VZV infection
localized at the trunk 3 months before admission.

(このあと様々な検査結果が解説されています。続きはリンク先で)

関連項目についてUpToDateの著者を検索していたら2011年4月のレビューがみつかりました。全文読めます。

Neurological Disease Produced by Varicella Zoster Virus Reactivation Without Rash
Curr Top Microbiol Immunol. Author manuscript; available in PMC 2011 April 14

VZV(水痘-帯状疱疹ウイルス)による健康リスクをあらためて考えました。

こどもの脳梗塞。救命できたとして、リハビリの課題、や中枢神経系の障害が残る、学習障害が残るという長期的な問題も。
いくつかある因子のうち、感染症予防として水痘ワクチンはとても重要ですね。
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2 コメント

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予防接種は大事 (ヘルペス)
2012-02-27 11:34:53
感染症ブログ
拝見させて戴いています。
専門的で非常に難しい時もありますが
勉強させて戴き
感染症の知識が少しは増えた様な気がします。
水痘1~その後までを 改めて続けて拝見し 早々に予防接種を済ませました。
ありがとうございました。
ありがとうございました (小児科鈴木)
2012-03-02 10:35:11
前回の水ぼうそう・・・でコメントした鈴木です。大きく記事にしていただきありがとうございました。
水痘以外にも脳梗塞のリスクとなる感染症が多くあることなど、勉強になりました。

水痘と麻痺については、日本からの報告で、以下のようなものがあります。
In a survey of infectious diseases in our region, the frequency of varicella with delayed hemiparesis was roughly 1:6,500 varicella patients.
Pediatr Neurol. 1990 Jul-Aug;6(4):279-81.
Varicella with delayed hemiplegia.

もう20年前の報告ですが、このころから水痘と麻痺の関連が言われていたとすると、もっと本気で水痘対策に取り組んでいてもよかったのではないかと思えてきます。
とはいえ、水痘ワクチン後に脳梗塞、というのも報告はあるようなので、一概にワクチンとも言えないのかもしれませんが。
まだまだ若造の生意気な意見ですみません。

これからも記事を楽しみにしています

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