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セックスで広がるMRSA USA300

2008-01-15 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
市中感染のMRSAが米国で問題になっており、毎日「スーパー・バグ」関連のニュースがならんでいます。
スポーツ交流試合などを通じて全米に広がっているという仮説があるそうですが、スポーツで感染するならもっと密接なコンタクトの性的接触などは問題になるだろうと考えることができます。

これに関連して、ゲイのセックスを通じてMRSAが広がっているという調査結果が
Annals of Internal Medicineの2008年2月19日号に掲載になります。

ゲイ同士のセックスでうつるなら男女間でもうつりますし、他にもいろいろ考えられますが・・・。

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Emergence of Multidrug-Resistant, Community-Associated,
Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Clone USA300
in Men Who Have Sex with Men
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調査期間は2004年から2006年で、採取された検体から分離されたMRSA(USA300クローン)でのリスク因子が検討されました。
調査が行われたのは、サンフランシスコの9の病院(人口ベース調査)、サンフランシスコとボストンの2の外来(横断研究)。
MRSAがUSA300かどうかは、PFGEとDNAシークエンスで確認。

サンフランシスコでは多剤耐性USA300の分利率は10万人あたり26(95%
CI, 16ー36)で、このインシデンスは同じ郵便番号地域に住む人との比較において男性とセックスをする男性では8倍高くなっていました。

男性-男性のセックスは多剤耐性MRSAであるUSA300感染の危険因子で、相対危険度は13.2倍(CI, 1.7-101.6] P <0.001) 。 この調査は後ろ向き研究で、危険な性行動についてのアセスメントは行われていません。
男性とセックスをする男性でのUSA300 MRSA感染は珍しくなく、性行為を通じて拡大していると考えられます。
どのような努力がこの感染拡大の制御に必要か、他の性感染症の制御と同じようにさらなる調査研究が必要、、、と研究者はまとめています。

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このCA-MRSAですが、もともと元気だった高校生が死亡したニュース、また「毎年エイズよりもたくさんの米国人がこれで死亡」というようなニュースがながれたあたりから、パニック的な反応も相次いでいます。
学校を閉鎖して消毒するような地域もあります。

先日お話をうかがったUCバークレーのRiley先生によると、米国の学校では「タオルを共有しないように」というレベルの注意喚起が行われているそうです(しかしエビデンスはないとのこと)。

ロイターニュース(英語)
http://news.yahoo.com/s/nm/20080114/hl_nm/staph_men_dc;_ylt=ApVfqilNZKGlKi1k8A0Yv4oQ.3QA
Annals of Internal Medicine 2008年2月19日号
http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200802190-00204v1
オーストリアで報告されたUSA300(2007年)
http://www.forth.go.jp/official/071102_01.html

なんといいましょうか。

ご飯を食べる前には手を洗いましょう。
ベッドに入る前は必ず全身よくあらってからにしましょう・・以外に何か介入はあるんでしょうか。2月に来日するティアニー先生に聞いてみたいところです。
(写真と記事は関係がありません。念のため!)
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