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化けるとき

2011年12月02日 03時19分37秒 | スポーツ

 スポーツ選手が、突然ひょいっと上のレベルに上がる瞬間、時期がある。今年の男子テニス錦織圭とか、、、別にプロスポーツ選手じゃなくても、中学高校の部活でもある(うちの次男にもあったような気がする)。
 このあいだのフィギュアスケート・グランプリシリーズ第6戦ロシア大会で優勝した羽生結弦もその口。しかし、“化ける”にはそれなりの予兆というか、下地があるのだ。
 ジュニアではグランプリファイナルと世界選手権で優勝していて、そのとき既にトリプルアクセルが完璧に跳べていたくらいだから、元々実力はあった。今季は「『シニアの戦い方』を身につけた」と見ているのがこちらのコラムフリーで「欲を出し過ぎず、4分半の間、その瞬間ごとに最良のものを判断していくことが必要」とアドバイスされ、着氷の状況からあえて予定とは違うジャンプ構成を瞬時に選択、GOEでプラスを稼いで高得点につなげたという。
 後半のジャンプの予定に「トリプルアクセル+3回転トウループ+2回転トウループ」があるというのがすごいんだけど^^; 男子選手の中にはケビン・バン・デル・ペレンのように3回転の3連続とか跳んじゃう人もいるから、不可能ではないのかも。しかし、16、7歳でこれを予定に入れるだけでびっくり
 続くジャンプ、予定では「3回転ルッツ+2回転トウループ」「3回転ループ」のところ、ルッツを単独にとどめ、ループにトウループをつけた。連続ジャンプの場合、1つ目が高難度なほど全体としても難しいんだろうけど、それが点数に反映されるわけではない。難しいルッツにつけても比較的易しいループにつけても、2回転トウループの点数は同じ、プログラム全体での足し算だ。
 結局、「どれもクリーンに跳んだ」と看做され、加点の合計が勝利に結びついた、という結論。昨年、4回転の予定が“クリーンな”3回転になってしまったことで、「2回跳んだ3回転ジャンプが3種類になった」として最後のジャンプが無効になる失敗があったが、この落ち着きはもう別人
 コラムでは主にジャンプの判断について述べているが、ステップで転倒した直後についても見逃せない。英語の実況は転倒すると"Shame."と反応、この日の4回転でもそう言ってたが、ステップ転倒時は「アワワ」みたいな声。何を選手といっしょに慌ててるのかと思ったが(笑)、後で見返すと"Up, up, up!"と言ってる。「立って、立って!」と応援してくれたらしい。
 その声が届いたのか(?!)、すぐ立ち上がってステップの後半はちゃんと滑った。演技後のインタビューで「とにかくステップをやったという形にしなきゃと思いました」と言ってたが、このステップはレベル1のGOEマイナス0.9ながら、無価値の0点ではなく0.90点。これも絶対大きかったはず。

 冷静に戦えたことも“化けた”部分だけれど、私が注目したのは演技構成点。SPの英語の解説で「2nd markもいい点が出るだろう」と点が出る前に言及。6点満点時代、芸術点を2nd markと言ってたのを思い出すが^^;
 実際、フリーはスケーティング技術の8.00を筆頭に全部7点台後半、平均7.83。フェルナンデスの8.13、アボットの8.34には及ばないけど、ブレジナやガチンスキーより上。SPでは7.51平均だった。
 ちょうど1年前の昨年のロシア大会では、SPで6.47、フリーで6.62平均。今年2月の四大陸選手権SPで7.13、フリーでは7.33平均と、じんわり上昇。今季第3戦の中国大会ではSPで7.28平均、フリーで7.43平均と、着実に上げてきていた。
 羽生同様、今季“ブレイク中”のフェルナンデスも、昨年のロシア大会では6.47、6.59という水準。ヨーロッパ選手権SPは5点台もある平均6.28、フリーがやっと7点くらい。世界選手権でもまだSPで6.67、フリーで6.57というあたりだった。それが、パトリック・チャンをおさえてSPトップに立った今季のスケートカナダでは、SP7.82、フリー8.11と急上昇。
 つまり、フィギュアスケートで“化ける”ときは演技構成点の底上げが必須なんじゃないだろうか。ガチンスキーも昨年のロシア大会では6点台半ばだったが、ヨーロッパから世界選手権にかけて7点台が出るようになり、もう今季は着実に7点台半ば。ジュニアとシニアの最大の差は、実はこのへん
 ちなみに、小塚崇彦が“調子にのって”グランプリファイナル進出した2008年を見ると、スケートアメリカSPで7点ちょっと、フリーで7.12くらい。フランス大会SP7.06、フリー7.21。ファイナルではSP7.38、フリー7.33。その前年のスケートアメリカでは6点台が1つか2つの平均5.6から5.9くらいだったから、この“原則”はあてはまりそう(笑)
 今季、中国大会やフランス大会で4回転をばしばし決めたがファイナル進出は逃した宋楠(Nan SONG)、四大陸や世界選手権までに今はまだ6点台の演技構成点の底上げができるか? 中国男子は世界選手権に1枠しかないが、ジュニアでファイナル進出の閆涵(Han YAN)が4回転跳ぶし演技構成点で7点台出せて(JGPイタリア大会フリー)、今年3月に15歳になってるからシニアの選手権にも出場資格あり、という強力ライバル。どっちが先に本格ブレイクしてくるか? ちょっと注目

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