魚のぶろぐ

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クロボシヒラアジ

2023年10月23日 21時01分34秒 | 魚紹介

今朝Twitter...じゃなかったXでクロボシヒラアジを検索していて、だいぶカイワリやシマアジと混同されていた。しかもシマアジやカイワリをクロボシヒラアジと誤同定しているケースも目立った。どこぞのAIによる自動判定のせいなのか、それとも誰かがデマを流布しているのか。どちらかはわからない。だからシマアジやカイワリとの見分け方なるものを考えていこうと思って記事を書こうとしたら、なんとわが「魚のぶろぐ」にはクロボシヒラアジの記事がひとつもないではないか。ということで、今日はスズキ系・アジ科・アジ亜科・マブタシマアジ属のクロボシヒラアジのご紹介。

日本産のマブタシマアジ属魚類は3種が知られている。マブタシマアジは入手しているのでこの種も機会があればまたいつかご紹介したいが、もう1種のミヤカミヒラアジは全く見たことがなく、日本でも九州の定置網で何回か上がったのみという非常にまれな種とされる。いつかはお目にかかりたいアジの仲間である。クロボシヒラアジの特徴はいくつかあるが、マブタシマアジ属魚類のほかの種と見分けやすいポイントとしては鰓蓋の黒色斑である。この黒色斑が小さく、より上方にありかつ大きく目立つミヤカミヒラアジと見分けやすいが、同定形質として使えるかは微妙。クロボシヒラアジでは上顎が1列でミヤカミヒラアジは帯状となっている。もう1種のマブタシマアジは鰓蓋の黒色斑がないことにより見分けられる。

鰓蓋の黒色斑については日本産の本属魚類で黒色斑を有するものはこのクロボシヒラアジとミヤカミヒラアジのみであるが、ほかの属にもこの模様があるのは多数いる。体高がやや高めのもののみを上げてもマルヒラアジ、ヒシヨロイアジ、ギンガメアジ、ミナミギンガメアジなど。ただし顔の形状や模様などの雰囲気同定でも見分けられるし、九州をのぞくほとんどの地域ではクロボシヒラアジはほぼお目に罹れない(もっとも御徒町駅前の食料品店では本種はそこそこ並ぶようであるが)。黒い点があるからクロボシヒラアジと勘違いされたのであろう。しかし黒色点が入ることがほとんどないカイワリも本種と間違えられることがあるのはなんでだろう。

稜鱗(ぜんご)は39-51枚、ミヤカミヒラアジ(35-45)よりも多く、マブタシマアジ(48-69)よりも少ない。尾鰭は黄色で美しい。

クロボシヒラアジは紅海を含むインドー太平洋に広く生息し、ハワイ諸島にも分布する(本当か?)。また紅海からスエズ運河を経て地中海にも入っている。日本においては九州沿岸、とくに鹿児島県ではよく見られる。宮崎県においても門川湾や贄波の定置網で漁獲されており、両県での流通が多くみられる。しかしほかの県ではまったくといいほど見られず、高知県でも、お世話になった愛媛県宇和海の定置網でも見たことがない。地中海で分布を拡大したときは簡単なようにみえたが、日本近海ではアジ科の種が多様であり、本種の勢力が入り込む隙間がないのかもしれない。近縁属で1属1種のマテアジも以前は鹿児島でたまに見られたらしいが、最近は全く見られないようである。

アジ科の魚は「味がいい」ことから名前がついたとされるが、本種も刺身にして美味しい。日本では九州や一部の店舗で並ぶのみであるが、東南アジアではほかのアジの仲間とともに市場に並ぶ重要食用魚である。今回のクロボシヒラアジは鹿児島の田中水産 田中 積さんより購入したもの。いつもありがとうございます。


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