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叫《さけび》

2007-02-25 23:49:10 | 映画
(C)2006「叫」製作委員会


今回の記事は『叫』《さけび》(監督:黒沢清)です。
謎の赤い女に悩まされる刑事とその謎を描いた、黒沢監督初の本格ミステリ。
黒沢監督独特の映像センス、不安感を掻き立てる演出、不可解な物語などなど。黒沢監督らしさがよく出てました。


■内容紹介
連続殺人事件発生、容疑者は刑事。
「俺、何やった…?」


湾岸地帯の埋立て地で殺人事件が発生する。
被害者は赤い服を着た髪の長い女性で、身元は不明。暴行や物取りの形跡は無く、死因も海水による溺死という特異なものだった。
刑事である吉岡はその殺人事件の捜査に当たっていた。

夜中、吉岡は自分のコートのボタンが無いことに気付き、事件現場を訪れる。
現場の水溜りでボタンは見つかった。
しかし、その夜から吉岡の視界に赤い服の女が度々現れるようになる。そしてその女の悲鳴が吉岡を悩ませた。

事件の捜査を続ける吉岡だが、どういう訳か被害者の遺留品や事件現場から自分の痕跡が次々と見つかり出す。
赤い服の女は吉岡を無表情に見つめ、耳を劈くような不気味な悲鳴を上げる。
「知らない……、本当に知らないんだ」

吉岡は不安で堪らなかった。そんな吉岡を春江は優しく慰めるが、その視線はどこか遠い。
2人の関係は随分と長いが、距離感は微妙なまま。しかし、吉岡は春江を心のより所にしていた。

そんな中、第2、第3の殺人事件が起こる。被害者の死因はどれも最初の赤い服の女の時と酷似していた。
事件の容疑者は程なく捕まるが、彼等と自分に共通点がある事に吉岡は気付く。
それは吉岡の持つ過去の記憶と関係があった……。

誰も思い出したくない、嫌なものが見えるよ

叫img01

叫img02



■感想
↓カッコ内の空白部分はネタバレです。反転注意!

くはー! まさか黒沢監督の新作映画を年に2本も観れるとは思っても無かったよ。
嬉しさのあまり、公開2日目にすっ飛んで観て来ました!
(本当は初日に行きたかったんですが、前日の無茶がたたりダメでした)
(追記:上抹消部:僕がアホでした。前作LOFTの公開は2006年9月。年明けてるじゃん。僕のワケ分からん記述で混乱した人、ごめんなさい)

今回の映画は黒沢監督らしさが色濃く出ていました。
映像面の美しさは前作『LOFT』の方が素晴らしかったけど、ストーリー面は今作の方が良かったです。
やはり黒沢清×役所広司のコンビは名コンビですね。黒沢監督が描く、心に暗い悲しみを持った主人公は役所さんが演じるとすごくシックリきます。

黒沢監督の映画は、観終わった直後は「?」となってしまうことが多いですが、すこし時間が経って思い返してみると、「こういう事だったのかな」という自分なりの考えが湧いてきます。そして、2回、3回と見た時に1回目とは少し違う印象を受けたりする深い映画です。今回の『叫』もそんな映画だったと思います。
(もちろん、まだ2回、3回とかは見てませんが。でも、これはDVDが出たらまた見てみたい。そしてその時、きっと違った新しい印象を受けると僕は思っています)

観ている人をじんわりと不安にさせてくるという演出は、さすが黒沢監督。今作もスゴイ。
また、切ない感じのラストは心に沁みりました。

今回の映画はどことなく、『CURE』に似ているなあ。
役所さん、刑事だし。次々起こる連続殺人、罪悪感を持たない容疑者達、などね。
だけど今回は強烈な"赤い女"が登場します。それが物語をまた違った雰囲気にしてくれています。

この"赤い女"がもの悲しくもあり、不気味でもあり、(狙ってはいないんだろうけど)コミカルでもあり、何とも強烈です。
物語上、赤い女にちょっとした仕掛けがあり(吉岡を苦しめる赤い女と殺人事件の最初の被害者が別人ということ)、また、思わず、えーっ! という行動を赤い女が起こしたりと、なんだかスゴイ。
彼女の悲鳴も耳を劈くようなという形容詞がぴったりなぐらい強烈です。

衝撃的な事が突然起こり、だけど起こった事の衝撃さに反し、淡々と描かれているシーンもいくつかあり、じわりと驚かされます。
(黒沢監督はこの手法をよく使います。僕はこの手法が好きです。変に感情を込めすぎない力加減が絶妙です。そして先が読めないという驚きもある)

優しく、悲しく、だけどどこか冷めている春江(=小西真奈美)も良かったです。
僕は、彼女の秘密にはかなり後半まで気付きませんでしたが、その兆候は所々にあったんですね。(シックスセンスほど見事じゃないですけども。だけど、それでも、やっぱり驚かされるし、切なくなります。こういう事実は
この秘密を知っている状態で、もう1度見るとまた違った印象をうけるかも知れないなあ、そんな事を最後に思いました。

観終わった後、疑問点は幾つか残りましたね。
最大の疑問点は吉岡の同僚刑事・宮地(=伊原剛志)ですね。最後のアレは一体なに? どういう事なんだ、一体……。

ちなみに、この映画には、時効警察の霧山君がゲスト出演しています。(嘘)
また春からドラマ化するみたいだし、楽しみにしてますよ。霧山君!


映画データ
題名叫《さけび》
製作年/製作国2006年/日本
ジャンルミステリ/ホラー/幽霊
監督黒沢清
出演者役所広司
小西真奈美
葉月里緒菜
伊原剛志
オダギリジョー
加瀬亮
平山広行
奥貫薫
中村育二
野村宏伸、他
メモ・特記ヴェネチア国際映画祭正式招待決定
おすすめ度★★★★
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
+⇒公式サイト
+⇒叫(さけび) - goo 映画
叫(さけび) | エキサイト:シネマ(映画・試写会)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ダーリン/Oh-Wellさんへ (ichi-ka)
2007-04-29 00:14:12
コメントありがとうございます。
長いコメント、全然迷惑じゃないですよ。むしろありがたいです。
黒沢清監督は今現在、僕が一番好きな日本映画監督です。一見淡々としているようで、不思議と心をざわつかせる黒沢監督の映画にはすっかり魅了されてます。
『叫』のオダギリ君を霧山くんと表現してくださってるあたり、黒沢映画以外でも好みがあいそうですね。
こちらこそ、宜しくお願いいたします。
*こんにちは (ダーリン/Oh-Well)
2007-04-28 15:16:24
☆ichi-kaさん、こんにちは。
先述は当方へのご来訪を頂きありがとうございましたm(_ _)m

こちらのエントリーを拝読した際、本作『叫』の妙味を掬い取られていることを感じ取らせて頂けたことはもとより、黒沢映画(/黒沢ホラー)にある世界観やその醸し出すものの受け取められよう、黒沢映画に在っての役所広司の演じる役どころの大きな魅惑等々についての記述に共鳴を抱きTBさせて頂いた次第です。

>映像面の美しさは前作『LOFT』の方が素晴らしかった…

僕も同様に感じました。勿論、一つには、前作の主舞台となるのが美しい湖を擁した静かな森、そして、この地に佇む洋館であり、一方の『叫』は殺風景な東京湾岸埋立地であるということ、この部分での必然的な差異ということなのかもしれませんが…。

>ストーリー面は今作の方が良かったです。

前作は、可也の数の観客にトンデモ系の映画として受け止められていた(笑)かと思うのですが、この『叫』は、前作よりずっと多くの観客を最後まで惹きつけるストーリーがあったのではないかと僕も思います。ウェブ上のレヴューなどを読んでいても、ストーリー面を掬い取って真摯に解釈しているケースが前作よりずっと多いかと僕は受け止めています。そして、僕もそうなのですが、「もう一度観ておきたい」との思いを表明している人も前作よりずっと^^多いですよね。

そう、映画終盤での霧山くんの狼狽ぶり^^なども印象的なものでしたし、加瀬亮のこちら側から向こう側への文字通り水先案内人のような役どころの妙味も忘れがたいですね…。

長くなってしまい申し訳ありません。また、黒沢清映画はもとより、あれこれの映画で御交遊頂ければ幸いです。今後とも宜しくお願い致します。

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