鶴岡地区医師会だより

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【山形】鶴岡と酒田で崩れた医療バランスを立て直すには‐三原一郎・鶴岡地区医師会理事に聞く◆Vol.1

2019-12-09 10:43:16 | 日記
【山形】鶴岡と酒田で崩れた医療バランスを立て直すには‐三原一郎・鶴岡地区医師会理事に聞く◆Vol.1


##前文
山形県庄内医療圏は、南の鶴岡市と北の酒田市と周辺の3町により構成されている。地域の基幹病院として、鶴岡市には鶴岡市立荘内病院が、酒田市には日本海総合病院がある。この両病院の棲み分けをはじめ、庄内医療圏における地域医療の課題や地域包括ケアシステムの構築状況などについて、一般社団法人鶴岡地区医師会理事の三原一郎氏に話を聞いた。(2019年10月7日インタビュー、計3回連載の1回目)

##本文
――山形県の庄内医療圏について、地域医療の現状や課題をお聞かせください。

 近年、鶴岡と酒田における医療リソースや機能の「バランス」が崩れてきたことが課題だと考えています。鶴岡市の人口は約13万人、酒田市は約10万人と、周辺町村を加えると規模はだいたい同じですが、鶴岡は城下町、酒田は商業の町ということもあり、文化が違いからくるライバル関係が多少なりとも根底にあると思っています。そのような関係のなか鶴岡には市立荘内病院があり、酒田には酒田市民病院があって、以前はそれぞれで医療が完結していました。

しかし2008年――医師不足や地域医療崩壊が声高に叫ばれていた時期に、酒田市民病院と山形県立日本海病院が合併して日本海総合病院ができました。当時、市立病院と県立病院が合併するのは珍しいことで、全国的にも注目されましたが、酒田に大きな病院ができたことをきっかけに、庄内医療圏の医療提供のバランスが崩れてきたのです。

医師数で比較すると、酒田の日本海総合病院には約140人、鶴岡の荘内病院には約70人と、倍の開きがあります。現在では鶴岡の患者の約2~割(推測)が酒田へ通院するようになりました。かつて鶴岡と酒田それぞれで完結していた医療のバランスが崩れてきた、というのはこういう意味です。庄内医療圏全体で地域医療を考えていかなければならない時代になってきました。


――庄内医療圏の今後の地域医療のあり方について、どのようにお考えでしょうか。

 個人的な考えとしては、荘内病院と日本海総合病院との役割分担についての議論をすべきではないかと思います。その背景にあるのは、やはり人口減少です。鶴岡市の人口は2008年には14万896人いましたが、10年後の2018年には12万7736人となっており、毎年1300人ずつのペースで減っています。酒田市も同様です。人口が減るということは、患者数も減るということですよね。

 今後の患者減を考えれば、いずれは急性期医療をどこかに集約しないければならないかもしれません。ただ、急性期をすべて酒田の日本海総合病院に移してしまうと、庄内地域の南側に住んでいる人にとっては、アクセスに支障を生じます。心筋梗塞や脳卒中など急を要する疾患への対応が間に合わなくなってしまうかもしれません。ですから荘内病院に急性期機能の一部を残すという考え方もあるでしょう。また、日本海総合病院と荘内病院を統合し庄内の中心地に移転するという構想もあり得ます。

――日本海総合病院といえば、地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」がありますが、そことの連携はいかがでしょうか。

今のところ、日本海ヘルスケアネットは酒田市およびその周辺地域に限定しており、荘内病院を含む南庄内(鶴岡)地域は参加していません。両病院の統合はハードルが高いかもしれませんが、鶴岡地域も日本海ヘルスケアネットに参加し、お互いに医師を融通するとか、機能分担を模索するというのも今後の在り方だと思っています。

元来、荘内病院は外科系とくに消化器外科や小児科に強みをもつ病院で、庄内医療圏のなかでもこの分野では中核を担う存在です。一方で、常勤医を欠く呼吸器内科や心臓血管外科など荘内病院で対応するのが難しい疾患もあり、荘内病院だけで急性期医療を完結するのは難しい状況にあります。荘内病院にも日本海総合病院にもそれぞれ得意分野はありますが、どうやってお互いの強みを活かしながら共存していくかというのが今後の課題です。

機能の集約という文脈において荘内病院が危惧しているのは、慢性期病院になってしまうことなのだと思いますが、それを回避するためにも、将来を見据えたお互いの話し合い場が必要ではないかと思っています。


――庄内医療圏の救急医療についてはどうでしょうか。

現状で、救急医療において困っているという話は聞きません。救急隊は基本的に鶴岡の人は荘内病院、酒田の人は日本海総合病院に搬送しています。何か特殊な事情があった場合はそれに応じた病院に振り分けられます。

ただ、将来的に急性期医療が日本海総合病院に移行したとして、その後の鶴岡地区の救急体制を考えると、やはり緊急性の高い患者については、鶴岡市民のためにも荘内病院に対応できる機能を残すことが望まれます。

これらの将来設計についてはまだ何も議論されておらず、今後お互いが歩み寄り検討していくべき課題だと思います。また市立である荘内病院を鶴岡市民はどう考えているのか、どう活用していきたいのかを改めて問うていくとともに、市民が荘内病院をバックアップする体制も整える必要があるかもしれません。

◆三原一郎(みはら・いちろう)氏
東京慈恵会医科大学を1976年に卒業し、同大の皮膚科に入局。1979~81年にニューヨーク大学に留学し、皮膚病理学の研鑚を積む。帰国後は東京慈恵会医科大学附属病院での勤務を経て、1993年に郷里の山形県鶴岡市で三原皮膚科を開業。1996年に鶴岡地区医師会理事、同情報システム委員長に就任。その後、山形県医師会常任理事、日本医師会のIT関連の委員会委員等を経て、2012年度に鶴岡地区医師会会長に就任。現在は鶴岡地区医師会の理事を務める。

【取材・文・撮影=伝わるメディカル 田中留奈】

https://www.m3.com/news/kisokoza/712909


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