石橋みちひろのブログ
「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。
 



いや、まあしつこいというか、執念深いというか・・・。

昨年、政府の産業競争力会議が雇用規制緩和の議論を始めたときに、「裁量労働制の適用拡大」がメニューに載せられていました。「第1次安倍政権の時に、ホワイトカラーエグゼンプションの導入に失敗したから、今回はさすがに懲りて、裁量労働制の拡大という戦術に転換したのだろうか?」と思っていたのです。しかも、去年はその後、解雇規制の緩和や国家戦略特区の議論に忙しくて、裁量労働制拡大の話も具体化して来なかったので、少し安心していたのですが・・・。

しかし・・・やっぱり諦めていなかった!!!

今年4月、再び、「労働時間改革」が産業競争力会議の議論の俎上に上ってきたのです。しかも今回は、ホワイトカラーエグゼンプションのスペシャル版。なんと、一定の条件下(労使合意と本人希望・同意)で、一般社員までもが対象になり得るような案だったのです。これじゃ「過労死促進法案だっ!」と批判すると、5月末の会合では一部修正した案が示されたのですが、これがまた酷い内容・・・。呆れてモノが言えないとはこのことですが、来年の通常国会に法案提出予定なんて言っているので、今から声を上げて、断固、阻止していかなくてはいけません。

現行の労働時間規制

まず、ごく簡単に、現行の労働時間規制のおさらいをしておきましょう。

労働基準法では、1日8時間、週40時間という法定労働時間を定めています。しかし、労使の合意があれば、一定の条件下で、法定労働時間以上の残業や休日出勤を行うことができます。そして、法定労働時間以上の時間外労働部分については、割増賃金が支払われなければなりません。

言ってみれば、労使合意をして、残業代さえ支払えば、いくらでも残業をさせることが出来るというのが現行制度なのです(=実は、これが労働時間問題の本質なのです)。

ところで、この労働時間規制、会社の役員は対象外ですし、部長や課長など、管理監督者についても適用除外になっているのはご承知の通り。さらに、「みなし労働時間制」というのがあって、その中で「専門業務型」と「企画業務型」の二つの『裁量労働制』が規定されています。一定の条件下ではありますが、その対象になれば、管理監督者以外の社員でも労働時間規制の適用外(実際の残業時間ではなく、みなしの残業時間で賃金計算)になります。ただし、これはあくまで労働時間規制の枠内で、労使の合意によって一定時間を残業したとみなすもの。労使の合意や労基署への届出が必要ですし、法定時間以上の残業時間相当分や、深夜や休日の労働時間については割増賃金の対象になるというのがポイントです。

産業競争力会議で示された案

5月末の産業競争力会議で示された修正案、提案したのは産業競争力会議の「雇用・人材分科会」で主査を務める長谷川閑史氏(武田薬品工業社長、経済同友会代表幹事)ですが、実際にこの案を作ったのは経済産業省の官僚という話も聞こえています。産業界の意向を最大限に反映した制度にするために頑張ってるのでしょうかね(苦笑)

「一般社員まで残業代ゼロにするのか!?」と批判された4月の案を一部修正して、「全ての労働者が対象ではなく、限定された労働者に導入する」ことを強調していますが、まさに突っ込みどころ満載です。まあ、本来、自分の裁量で成果や労働時間など決められない一般労働者に、労働時間規制の適用を除外にして「完全成果主義」を導入し、残業代なしで(成果を達成するまで)いくらでも働かせられるようにしようというのですから、まっとうな議論は成り立たないことは当然ですが・・・(大苦笑)

以下、いくつかポイントを示しておきます。

(1)対象が曖昧!

 まず、制度案は「限定導入」であることを強調していますが、実際は、具体的に誰が対象になるのかは明確にされていません。「職務経験が浅い、定型・補助・現業的業務など自己裁量が低い業務に従事する社員は対象外」とする一方で、「(a)中核的、専門的部門等の業務、(b)一定の専門能力・実績がある人材、(c)将来の幹部候補生や中核人材等が対象」としていて、結局は、経営側が後者に該当すると判断されれば幅広く対象となる危険性があります。

 ちなみに、(c)の将来の幹部候補生や中核人材等なんていうのは、企業によっては相当数の若手一般社員も対象になり得るのではないでしょうかね? だって社長さんたち、新入社員に「将来はうちの会社を背負って立つ人間になってくれ」って言うでしょ?(苦笑)

(2)本人の希望・選択なんてまやかし!

 制度の適用は「労働者本人の希望・選択」に基づくことになっています。これ、もっともらしく聞こえますが、当然、経営側は、半ば強制的に同意を求めてくるでしょう。さらには、選択の有無で、その後の昇進、昇格、昇給に差を付けてくることが容易に想定されます。

 だって、そもそも、対象となるのは「能力のある人材」とか「幹部候補」とかなんですよね? であれば、むしろ処遇に差が付くのが当然とも考えられます。そうなると、それを拒否できる若手社員がどれだけいるでしょうか? 断るというこは、「自分は無能で、一生ヒラでいい」と宣言するようなものじゃないですか? 実際、いったん断ったらその後ずっと干された、なんてことが起こっちゃうんだと思います。

(3)ブラックユニオンを奨励!?

 制度案によれば、導入は原則、過半数組合をもつ企業に限定するとしています。何だかとってもうさん臭い部分です(苦笑) これも一見、いいように見えますが、もし本当にそういう制度になった場合、どういうことが起こるでしょうか? 例えば、どうしても導入したい経営者が、いわゆる御用組合を結成して、強制的に労使合意をさせてしまうことも考えられます。先日ある会合で、連合の方が「ブラックユニオン奨励法案だ」と非難されていましたが、その危険性もあるのではないでしょうか。あっ、これ、昔で言う「イエローユニオン」ですかね。

 また、結局は、過半数の従業員代表との合意でもOKになってしまうのではないかと思いますが、そうなれば全く実効性ある歯止めにならないことは、残念ながら現行法の枠内でも証明されてしまっていますね。

(4)効率的に短時間で働いて報酬確保!なんて経営者がやる気になれば今でも可能!

 恐らく何が何でも「労働者にとって素晴らしい案だ」ということを示したいのでしょうが、制度案は、導入すれば「職務・成果に応じた適正な報酬確保」とか、「効率的に短時間で働いて、報酬を確保できる」とか、そのメリットを一生懸命に強調しています。

 しかし、 ここには大きな矛盾があります。大体、明確な成果とその対価、そしてそれに通常必要な労働量をどう適正に計量するのでしょうか? それが可能な一般労働者なんて、一体、どれだけいるのでしょうか? さらに言えば、それが可能だとすれば、それをなぜ、現行制度の枠内(裁量労働制やフレックスタイム制)でやろうとしないのでしょうか? 

 大体、効率的に短時間で働くなんていうことは、経営者がその気になれば、現行の労働時間規制の枠内でいくらでも労使間で決めて実行出来る話です。先ほど確認したように、労働基準法というのは労働時間の上限に一定の歯止めをかけ、割増賃金の支払などを定めていますが、下限を定めているわけではないのです。規制の枠内で、労使が協議して所定内労働時間を定め、処遇を定めるわけですから、所定内労働時間以内で成果を達成したら、その分、残りの勤務時間は遊んでいていい、なんてことはやろうと思えばすぐできます。そうしないところが、まさに虚構なわけです。

(5)長時間・過重労働の防止・・・それが一番重要だ!!

 極めつけは、制度案が「健康確保のため、『労働時間上限』『年休取得下限』などの量的制限の導入」を謳っている点です。「なんだ、分かっているじゃないか!」と感心しちゃいけません。だって、謳っているだけで、何ら具体的な提案はしていませんし、一番最後にいかにもとってつけたように書かれているんです。本当はこれが一番、今、やらなきゃいけないことなのに!!!

 繰り返しますが、現行法の下では、労使合意さえ結べば、労働時間はほぼ青天井です。ちゃんとした労働組合がない職場では、過半数労働者の合意なんてほとんど形骸化してますから、中には経営者が勝手にとんでもない残業時間を労基署に登録している職場もあるんじゃないかと思います。だから、過重労働がなくならないし、過労死や精神疾患が蔓延しているし、仕事と家庭との両立が難しいし、女性が働き続けるのが難しいんです。

 つまり、今必要なのは、まず、年間総実労働時間に法的な上限を設けること。それ以上は、残業も休日も含めて決して働かせてはいけないということを決めることです。その上で、一日の勤務の終わりと次の日の勤務開始との間に、一定時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバル規制」を導入すること。さらに、絶対週休日を確保すること。現状は、変形休日制の下で月に4日、休日を与えればいいことになっていますが、それを7日に1日は絶対に休日を設けることをルールとして決めるんです。

 労働時間規制というのは、働く者の命と、健康と、生活を守るためにあるべきものなんです。そしてそれは、本来、経営者だって管理監督者だって同じであるはず。全ての働く者のために、これ以上働いちゃいけないっていう規制は設けるべきなんです。

 そういう最低限のことをちゃんとやった上で、その枠内で、労働者の働き方や希望に応じた裁量的な働き方が検討されるのはやぶさかではありませんが、今、政府がやろうとしていることは、順番が違うというか、全く真逆の案。つまり、労働者のためにやろうとしているのではなく、企業の都合のためにやろうとしていることが見え見えなのです。

今後の展開

以上のポイントをまとめると、(1)今、やるべきは、労働時間規制を強化することで、それをやらないままに労働時間規制の適用除外を一般労働者に拡大したら大変なことになる、(2)限定導入などと言って、はなから全然限定になりそうもないし、一旦導入されれば、将来的に対象が拡大されるのは目に見えている、(3)結局は、残業代(そして労働コスト)を抑制したい(一部の?)企業経営者のために労働者を犠牲にしようとしているに過ぎない、ということになるでしょうか。

今後、6月にも公表される予定の成長戦略第二弾に、この「労働時間改革」なるものが書き込まれる予定とのこと。その方向性に基づいて、労働政策審議会で具体的な制度設定議論が行われ、来年の通常国会にも労働基準法改正案が提出される運びとなるのでしょう。最終的に国会での勝負になれば、与党がまた数の力で強引に成立を図ることも予想されます。まずは何と言っても、6月から年末までが最初の勝負になるでしょうから、ぜひ連携して取り組んでいきましょう。

それにしても、解雇規制の緩和、労働時間規制の緩和、派遣労働の緩和、有期雇用規制の緩和、外国人単純労働者の受け入れ規制の緩和などなど、次から次へとよくもまあ出してくるものです。これらが全部実現した時、一体、どんな労働環境になっているのでしょうか? その悪影響を最も強く受けるのは、これから社会に出る若者や女性など、弱い立場の労働者です。働く者の安心を守るためにも、断固、闘っていかないといけませんね!



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