石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

フィリピン出張報告

2011-07-12 20:58:51 | 活動レポート
マニラから持って帰ったフィリピン風邪が、この東京の猛暑の中でぐずぐずと身体の中に閉じ困る中、気持ちはもう通常モードに戻って国会内を走り回っています。

が、まずは先週のフィリピン出張の報告をちゃんとしておかなければなりません。2年ぶりに訪れたフィリピンで、何を見てきたのか、労働者や生活者の状況は良くなっていたのかなど、皆さんも報告を楽しみに待っていて下さったに違いありませんからね。

もちろん、UNI-Apro地域大会レセプションでの来賓挨拶は、今後も記憶に残る舞台となりましたが、それ以外にもざまざまな活動を通じてフィリピンを感じてきました。


UNI-Apro第3回地域大会、初日レセプションで主賓として挨拶する模様。英語と日本語の一人逐次通訳中!(2011年7月5日)


ということで、以下、参議院民主党に提出した報告書を基に作成した概要報告です。ぜひ、お時間あるときにお読み下さい。なお、児童労働撲滅プロジェクトのサイト訪問については、別途、詳細に報告したいと思いますのでしばしお待ちを!


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海外渡航・視察活動報告書
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1.渡航場所 フィリピン マニラ
2.渡航者 石橋通宏(参議院議員)
3.渡航期間 2011年7月5日~10日(5日間)
4.渡航目的
1) ユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI)アジア太平洋地域組織(Apro)第3回地域大会への来賓参加
2) フィリピンにおける経済・社会情勢の変化、日本のODAの効果、日比経済協力協定(JPEPA)の次期改訂に向けた課題、などに関するヒアリング調査

5.主な活動内容
① UNI-Apro第3回地域大会への参加
② 国際労働機関(ILO)フィリピン事務所訪問
③ 在比日本大使館 卜部日本大使表敬訪問
④ フィリピン労働雇用省(DOLE)カクダック次官との会談
⑤ フィリピン海外雇用庁(POEA)カオ長官との会談
⑥ 労働組合訪問:KMU、FFW、APL、ALU、TUCP
⑦ NGO訪問:CTUHR(労働組合権・人権擁護センター)
⑧ 国会議員との会談:Mr. Raymond Mendoza 下院議員
⑨ 児童労働撲滅プロジェクトサイトへの視察訪問

6.活動の主な成果

(1)UNI-Apro第3回地域大会
  • UNI-Apro第3回地域大会に来賓として招かれ、初日レセプションにおいてアジア太平洋地域19カ国から集まった約600人の参加者に対し、以下の内容で挨拶を行った:①東日本大震災に際してアジア太平洋地域の多くの仲間たちから温かい支援が寄せられたことへの感謝、②現在、国を挙げて被災地の復旧・復興に取り組んでいるが、特に地域経済の立て直しや雇用創出が不可欠であり、政府・与党としても様々な支援策を講じていることの報告、③今後、被災地だけでなく、日本全体の経済・社会の再生に向けて、労働組合出身者として、またILO勤務経験者として、働く者や生活者のことを常に考えながら頑張っていく決意、④アジア太平洋諸国の方々にも、ぜひ日本を訪問して日本の再生を応援して欲しいとの要請、など。
  • また、各国の代表たちと個別に懇談し、親睦を図ることができた。
  • なお、4年に一度の開催である本地域大会に、日本からはUIゼンセン同盟、自動車総連、情報労連、JP労組、JSD労組など、10組織から75名が参加。今大会で、情報労連・加藤友康委員長が新しくUNI-Aproの議長に就任した。

(2) フィリピン労働雇用省および海外雇用庁
  • 2008年に発効した日本フィリピン経済連携協定(JPEPA)に基づく「フィリピン人看護師・介護士の研修・訓練制度」は、2009年に第一陣の受け入れが始まり、3年目の今年から見直しの時期を迎える。現行制度には、日本側・フィリピン側双方からさまざまな問題・課題が指摘されており、今後、課題を精査した上で、両国にとってより良い制度となるような改訂が必要である。
  • 特に、この研修・訓練制度は、フィリピンのNGO・労働組合団体から「フィリピン人労働者の搾取である」との批判が多く、次期改訂に向けては、これら社会団体を含むより多くの当事者から十分なヒアリングを行うことが必要だと思われる。可能であれば、政党間・政治家レベルの二国間協議を実施することも視野に入れられるべきではないだろうか。
  • なお、在比日系企業における労使関係について、労働雇用省としてはこの間の改善度合いに概ね満足しており、現在は、韓国系や台湾系企業と比較しても良好な状況にあるとの説明があった。ただし、地元労働組合やNGO団体などからは、引き続き一部の日系企業で労使関係に問題があるとの報告を受けており、OECD多国籍企業ガイドラインの遵守を含め、今後もしっかりとした対応が求められる。

(3)アキノ新大統領就任後のフィリピンの社会・経済事情
  • 各種団体等からのヒアリングを通じて、ここ2年間、とりわけ昨年の大統領選挙後のフィリピンの経済・社会情勢については、①経済指標は上向いているものの、社会的な発展に結びついていないこと、②そのため大統領の支持率が継続的に低下してきていること、③大統領としては今後、公約に掲げた貧困対策などの生活者支援策を着実に実施し、国民生活の底上げを早期に図っていかなければ、今後さらに支持を失い、政治情勢が混沌とする可能性があること、などが明らかになった。
  • とりわけ、教育の荒廃は甚だしい。人口増加率が高く、児童数が急増する一方で教育費の増額は抑制されており、学校・教室不足、教員不足が深刻化している。児童数の多い地域では、一クラスの児童数が100人を超える例や、一日3クラス制を取っているケースも報告されており、教員の疲弊、家庭への財政負担増、落ちこぼれの増加、ドロップアウトの増加などが甚だしい。日本のODA支援は、草の根無償による小規模な校舎の建設に限定されており、今後、大規模校舎の増設や、教員養成、スクールバスなどの交通手段への支援などが検討されるべきである。

(4)日本のODAについて
  • なお、日本はOECD諸国の中でフィリピンへのODA拠出が最大の国である。その日本のODAは、①経済成長のためのインフラ整備、②貧困対策を含んだ生活改善、③ミンダナオの和平、を目標の三本柱としているが、それでは実際、日本の巨額のインフラ整備事業が、どれだけフィリピンの一般国民の貧困解消、生活改善につながっているのか、あらためてしっかりとした検証が必要である。



2006年から2009年までの3年間勤務をした、国際労働機関(ILO)フィリピン事務所を訪問。かつて一緒に働いた役職員たちから歓迎を受ける。(2011年7月6日)



フィリピン海外雇用庁(POEA)カオ長官との会談。日比EPAに基づくフィリピン人看護士・介護士派遣スキームについて意見交換。(2011年7月7日)



労働組合APL本部で、APL幹部役職員と。フィリピンの労働情勢、労働法改正議論の模様などについて意見交換。(2011年7月8日)



労働組合ALU―TUCP本部で。会談では、とりわけ福島原発事故の模様や、今後のエネルギー政策の動向について興味が集中した。なお、左端がレイモンド・メンドーサ下院議員。(2011年7月8日)



現地の労働組合権・人権NGOであるCTUHR事務所で。隣がデイジー所長。新大統領が就任してからも超法規的殺人は続いており、この1年間ですでに4人の労働組合活動家が暗殺されているとのこと。(2011年7月7日)



TUCPの幹部役職員たちと。右から二番目は、現在、ILOデリー事務所で労働者活動専門家として勤務する友人のアリエル・カストロ。(2011年7月8日)