石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

ICTタスクフォース「過去の競争政策レビュー部会」の動向

2010-04-30 22:03:25 | 雑記
総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース(以下、ICTタスクフォース)」は、その後も会合を重ねてきていて、4つの部会でも段々と論点が整理されてきています。中でも、「過去の競争政策のレビュー部会」は、「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」と合同で第7回会合(2010年3月29日)、第8回会合(4月15日)、第9回会合(4月20日)、第10回会合(4月27日)と会合を重ね、原口総務大臣が示した「光の道構想」をベースに議論を深めてきています。

第7回会合では、それまでの部会での議論をまとめつつ、「光の道構想」についてその論点(案)を提起。第8回会合では、「光の道構想」を実現するための検討を部会の下で進めている「『光の道』整備の在り方検討作業チーム」(作業チーム)が、それまでの検討状況について報告をしています。

「光の道構想」の重要な目標は、2015年までに:

    1. 超高速ブロードバンド基盤の普及率を現在の90%から100%へ
    2. 超高速ブロードバンド基盤の利用率を現在の30%から100%へ
を実現しようというものですが、その際に課題になる点として

    • 超高速ブロードバンドの定義(30Mbps程度で良いのではないか)
    • 超高速ブロードバンドの手段(無線も一定の役割を果たせる)
    • 基盤未普及エリアの整備方法(一定の公的支援が必要)
    • ユニバーサルサービスの在り方(新しい定義と維持方法が検討されるべき)
などが挙げられています。

そして、メディアの大きな注目を浴びたのは、この作業チームの報告を受けて行われた第9回会合でした。この第9回会合では、関係事業者からのヒアリングが行われ、ソフトバンク、KDDI、NTTを含む7事業者が「光の道構想」への意見提起を行ったのですが、そこで大きな論議となったのが、「アクセス網の分離→アクセス網管理会社の設立」の是非(目標を達成する上での有効性)という点。特に、ソフトバンクが行ったプレゼンで「メタルを光に全面的に置き換えれば、低額で光サービス提供が可能」とした主張が問題になりました。

当初、一部のメディアではこれを「NTT対競合事業者」などという構図で表現していましたが、実際は「アクセス網を持つ事業者対持たない事業者」という構図ですね。ケイ・オプティコムは、プレゼンの中で明確にアクセス網の分離に反対していますし、会合後に行われたなどの電力系通信事業者6社の合同記者会見でソフトバンクの主張に疑問を呈しています。なお、この会見で「光の道構想」の実現に向けて下記の問題が提起されています:

    • 公正競争環境の下、民間事業者が設備・サービス両面で競争する必要がある
    • インフラ未整備地域では、公的支援を基本に民間事業者が整備する
    • インフラ整備済みエリアでは利活用の議論が重要
    • 国の支援を前提とした光回線敷設会社の設立や、FTTHの1分岐貸しは、投資インセンティブを損なうため行うべきでない
    • 全家庭一斉のFTTH敷設は、使われない設備を大量に作ることになる
    • アクセス議論とNTT事業会社統合の議論は別
 (参考)
 「NTT対競合の構図ではない」、光の道で電力系通信事業者6社が共同会見

その後も、ソフトバンクの主張については、実現可能性と主張の根拠への疑問と言った観点からもさまざまな疑問・質問が投げかけられているようです。

 (参考)
 「ソフトバンクの『光の道』論に全面反論する 佐々木俊尚」
  
 「ソフトバンク孫社長が仕掛ける
『NTTの構造分離』への疑問 町田徹」

そういう中で4月27日、第10回会合が行われたわけですが、委員の中からは「3割の利用率を10割に上げるのは無理」という「光の道構想」の基本理念を疑問視するような意見も飛び出し、ここに来て再び方向性が見えなくなってきたという感じもあります。

私見ですが、「光の道構想」というのは、ICTネットワーク&サービス全体のパッケージで、いかにあまねく公平に高度なICTサービスを国民に提供し、生活を豊かにするかという議論であるべきだと思います。にも拘わらず、部会の議論が「アクセス網」の議論に矮小化されているように感じられるのが残念です。

加えて、過去の競争政策レビュー部会の本来の趣旨は、過去のICT競争政策が果たして日本の成長や国民の豊かさに寄与してきたのかどうかを客観的に評価した上で、今後の競争政策を議論する場であったはず。その点でも、議論があいかわらず国内の競争促進、廉価なアクセ得提供という点にのみフォーカスされている気がします。

部会は、5月中旬にも中間とりまとめを行う予定になっています。当面は、この中間とりまとめに向けた論議動向を注視していきたいと思いますが、兎にも角にも、中長期的な観点とグローバルな視点の中で「日本の情報力と国民の利益」を増進させる方向性で議論を進めて欲しいものです。

なお、第10回会合に提出された資料で「諸外国の動向(pdf)」というのがあって、ここに主要国のブロードバンド政策の動向が分かりやすくまとめられています。興味のある方、ぜひどうぞ。