Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

形式知としてのオーシャンリテラシーと暗黙知としての在来知をどのように融合させるか?

2020-04-08 | ゼミ

Ocean Literacy to Mainstream Ecosystem Services Concept in Formal and Informal Education: The Example of Coastal Ecosystems of Southern Portugal

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2019.00626/full#F2

 

を4年のゼミ生が中心となり講読した。ポルトガルのリアフォルモサで行われている,海洋リテラシー教育の紹介記事である。興味深い点として,1つはエコシステムサービスは定義されてから数十年になったがまだ浸透していないのは,十分な教育が行われないからであり,それを補うために海洋リテラシー教育が必要であるとしているところ。もう1つは学校カリキュラムの膠着が起きていて詰め込み教育の懸念があった。それを打破すべく,専門性の融合が求められるようになり,日本でいう総合的な学習の時間が始まったこと。さらに,カリキュラムの中で,地域の文脈を取り入れながら学校教育を行うよう義務化されている。そうした総合科目を実践する上で,オーシャンリテラシー教育が重要であるとして, リーズ(“Environmental Education Network for Ecosystem Services” (REASE) )が始まった。学校教育ということで,組織的に行われている。

 世界中の科学者によって,海洋リテラシーやエコシステムサービス(最近では,NCP)が定義されている。これは科学者によって定義された世界共通の形式知(explicit knowledge)であると言ってよいだろう。一方で私達は世界中の各地域で生活しておりローカル性を強く持っている。大変な多様性があり,それぞれの文化を形成している。それは,長い間時間をかけて構築されたものであり,いわば地域の独自の暗黙知(tacit knowledge)が備わっている。伝統的な風習などはその地域にとって欠かせないものでありこれからもそう簡単に変えられない重要なものである。今までは,その暗黙知の状態で良かったのである。しかし,なぜ,オーシャンリテラシー,エコシステムサービスが定義されたのか。それは,地球規模の解決できない大きな課題が生じているためなのである。それにいち早く気がついた人びとが,科学者という専門家の集団である。彼らが考え出した暗黙知は,科学者の間で浸透し合意を経て形式知として誕生した。だが,それらの形式知は,地域にとってはまだ暗黙知と融合していない。来年から海洋科学の10年がはじまる。いわば海洋分野に特化したSDGsであり,SDGsの達成の一環である。どれだけ,両者が協働できるのか,そのためのサポートはどうあるべきか,これはもはや個人的なレベルの段階ではない。世界全体,つまり世界の各国によって構成される国連が主導してはじまるわけであり,それぞれの国家もしっかりとその旨を理解して国を上げて取り組むようにしていかないとその協働的な取り組みは達成できない。もう秒読み段階に来ているのだ。

 



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