『博士の愛した数式』(小川洋子著、新潮社)を読む。
以前リーマン予想のことを描いた『素数に憑かれた人たち』(ジョン・ダービシャー著、日経BP社刊)を読み非常に面白かったので遅まきながら文庫化されたのをきっかけに手にとった。
こういう小説の書き方もあったんだと感心したのが率直な読後感であった。そしてこれまでどうしてこういう小説がなかったんだろうという疑問も湧いた。記憶が80分しか持続しない、それ故断片的な日常で生きている数学者とその世話をする家政婦と彼女の息子の交流が描かれる。「完全数」、「友愛数」などの数学用語が作品の随所に効果的に埋め込まれていて、物語の進行にアクセントを与えている。
友愛数が端緒となり、数を媒介とした博士と私の関係が展開していくというのが新鮮だ。友愛数というのを博士から教えられて、自分で友愛数を探してみるという「私」の姿は、ちょうど初めて数学の世界の面白さを手探りで探し始めた生徒のようだ。驚きから知を愛することが始まるというソクラテス的展開がそこに描かれている。数の世界に興味ともっていくとともに、それを通じて博士に対する愛情もふくらんでいく様子が、まるで蔓が互いに絡まり合ってらせん状に生長する植物のように描かれている。
単に人と人との関係だけでなく、永遠に滅びることのない数の世界と限りある生を生きる人間との関係というものも考えさせられその分物語に深みがでているように思う。
以前リーマン予想のことを描いた『素数に憑かれた人たち』(ジョン・ダービシャー著、日経BP社刊)を読み非常に面白かったので遅まきながら文庫化されたのをきっかけに手にとった。
こういう小説の書き方もあったんだと感心したのが率直な読後感であった。そしてこれまでどうしてこういう小説がなかったんだろうという疑問も湧いた。記憶が80分しか持続しない、それ故断片的な日常で生きている数学者とその世話をする家政婦と彼女の息子の交流が描かれる。「完全数」、「友愛数」などの数学用語が作品の随所に効果的に埋め込まれていて、物語の進行にアクセントを与えている。
友愛数が端緒となり、数を媒介とした博士と私の関係が展開していくというのが新鮮だ。友愛数というのを博士から教えられて、自分で友愛数を探してみるという「私」の姿は、ちょうど初めて数学の世界の面白さを手探りで探し始めた生徒のようだ。驚きから知を愛することが始まるというソクラテス的展開がそこに描かれている。数の世界に興味ともっていくとともに、それを通じて博士に対する愛情もふくらんでいく様子が、まるで蔓が互いに絡まり合ってらせん状に生長する植物のように描かれている。
単に人と人との関係だけでなく、永遠に滅びることのない数の世界と限りある生を生きる人間との関係というものも考えさせられその分物語に深みがでているように思う。
大体に於いて書物が映像化されると雰囲気が違ったりして気落ちさせられることが多いのですが、これはちょっとキャストを見て期待しています。どうかな。
博士が無条件にルートを愛する姿、今小学生が次々と殺されているその容疑者たちにも見習ってほしいですね。