探偵ガリレオ

 『探偵ガリレオ』(東野圭吾著、文春文庫)を読む。
 テレビドラマとして放映されている原作の短編集を読んでみた。謎解きのポイントに物理や化学の知識を応用するというスパイスを利かせたミステリーでなかなか面白い。ミステリーファンではないので詳しくはないが、利用されるトリックにさまざまな技術や化学物質などが応用される例は少なくはないと思う。こうした知識はあまり高度で専門的すぎると謎解きをされてもまるでわからず意外性にかけることになるし、あまり初歩的だとしらけてしまうので、そのあたりの勘所がむつかしいだろう。そのあたりは作者はなかなかうまく応用してうまくストーリーを作っていると感じた。
 ホームズ役を演じる主人公が物理学科の准教授という設定で、難事件を解く際に突然あたりかまわず複雑な計算式を書きだし快刀乱麻を断つ如く解決するという毎回お約束の演出には、苦笑させられるが、このあたりは特殊な科学的知識をもつ人の特殊性を際立たせようとする意図が感じられる。
 使われている小道具はレーザーや衝撃波など現代風のものであるところが新鮮味があるのだろう。こうしたものは一般の多くの人が名前くらいは聞いたことがあるが、実際にはどう使われているかよくは知らないというものであるのが、大事なところでもあるだろう。ある程度は普及していないと小説のなかで使っても認知されないだろうからである。逆に大衆小説にさまざまな科学的知見が使われるようになるのにその発見や発明がなされてからどれくらいの時間経過が必要であったかを調べてみるのも面白いかもしれない。
 一般にはこのような技術や知識自体は中立でそれを使う人の価値観によって役にも立てば、害にもなるという解釈がされている。だから通常こうしたドラマにはマッドサイエンティストの登場が要請される(テレビドラマの「壊死る」での犯人など)。たしかこの小説の題名にもなっているガリレオも「神なき知育は知恵ある悪魔を生む」といっていたし、アインシュタインも「知識は方法や道具に対しては鋭い鑑識眼をもっているが、目的や価値については盲目である」と述べていた。まあしかしこれらの言葉は科学者の立場からの発言だから知識自体は価値とは関係なく、それとは独立に探求されて然るべきだという価値観の表明とも受け取れるわけである。
 こうしたドラマや小説がこの時代でどのように評価され受容されるのかはその時代の科学に対する印象を表現しているともいえよう。

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コメント
 
 
 
ガリレオ (かわうそ亭)
2007-11-13 21:36:19
ごぶさたしてます。
わたしもテレビの第一話を見て(面白かったので)、さっそく『探偵ガリレオ』と『予知夢』を読んだ口です。
原作のほうは男ですが、ドラマはワトスン役を柴咲コウに改変したのが手柄になっているように思います。
「こうしたドラマや小説がこの時代でどのように評価され受容されるのかはその時代の科学に対する印象を表現している」というのはおっしゃるとおりだと思います。
この点に関しましては、ええと、「テレビぴあ」によりますと(笑)「好きです!理系男子」という評価でございました。はは。
 
 
 
もてるのか?理系男子 (烏有亭)
2007-11-14 07:07:53
かわうそ亭さん、コメントありがとうございます。
「好きです!理系男子」ですか・・・その手柄は原作者の湯川のモデルの佐野史郎ではなく、福山雅治を起用したことが手柄になっているのではないでしょうか(笑)。
 
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