ふうるふうる・たらのあんなことこんなこと

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「いのちと放射能」を読んで その1

2011-10-12 14:30:44 | 原発

中浦和“ふうるふうる”のたらです。
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 「いのちと放射能」(柳澤桂子 ちくま文庫)は、生命科学を研究してきた柳澤さんが、1986年4月のチェルノブイリ原発事故をきっかけに『「放射能は生き物にとって非常におそろしいものである」ということを一人でも多くの人に理解してもらえるようにつとめることが自分の責務である』と思って書きあげたものです。
 柳澤さんは、「放射能の本当の恐ろしさは、突然変異の蓄積にあると思います。原子爆弾や原子力発電の事故によって、地球が壊滅してしまわない限り地球は汚染され、すべての生物において突然変異の蓄積が進みます。その結果、何が起こるのかということを予想するのは難しいでしょう。」と言っています。
 これは1988年11月に地湧社から刊行され、2007年にちくま文庫にはいった本なので、福島第一原発事故をむかえてしまった現在では、体内被曝や被曝量と健康被害についてなどもっと詳しい情報が流れています。でも、この本に書かれていることは基本的な情報としてわかりやすいのではないかと思うので、私なりにまとめ、他で調べた補足を入れたものを記載します(緑色の文字が補足です)。
 もし記述に誤りがあれば、それは私の理解不足によるものです。ごめんなさい。ご指摘いただけたらありがたいです。

●放射線と放射能
  放射線は物質を通り抜ける強い力をもつもの。放射能は放射線を出す能力のこと。放射性物質とは放射能をもつ物質のこと。
* 懐中電灯に例えると、光が放射線、懐中電灯が放射性物質、光を出す能力が放射能にあたる。
 
  放射線には物質を突き抜ける力が異なる三種類がある。アルファー線は薄い紙一枚も突き抜けることができない。ベータ線は厚さ数ミリのアルミ板でさえぎられる。ガンマ線は数センチの鉛板でないとさえぎれない。

 放射性物質の原子は不安定な性質をもち、アルファ線やベータ線、ガンマ線などの放射線を出しながら、別の安定性の高い原子へ変化していき、最後には放射線を出さなくなる。放射能の強い物質ほど一定の時間でたくさんの原子がこわれる。
 放射性物質が放射線を出す能力(放射能)が元の半分になるまでの期間を半減期といい、例えばヨウ素131の半減期は8日、コバルト60は5年、ストロンチウムは28年、セシウム137は30年、プルトニウム239は2万4千年である。
* ウラン238は45億年。

 放射能を浴びたときに受ける影響を共通の尺度であらわしたのがシーベルトという単位で、人間が短時間で全身に放射線を浴びたときの致死量は6シーベルトとされている。
 0.25シーベルト(250ミリシーベルト)以下になると目に見える変化はあらわれないが、体内では着実に変化が起きている。
* 1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=100万マイクロシーベルト(μSv)

●細胞一つひとつにある人間を成り立たせている情報テープ
 人間のからだは60兆個の細胞でできており、細胞一つひとつに情報テープが入っている。その情報テープは総司令部のようなもので、一つひとつの細胞の総司令部が正しく働くことで、人間として生きていける素地(例えば、二足歩行すること、手を器用に使うこと、ものを考えること、食べ物を消化してそのエネルギーを使うことなど)ができあがる。
 この情報テープは46本に別れていて、デオキシリボ核酸(DNA)という糸のような長い分子でできている。DNAの糸は2本が対になり、らせん状になっている。
 2本の糸の間をつなぐものに、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4つの分子がある。
 人間の1つの細胞の中にあるDNAは、ATGCが30億個もつながったもの。言うなれば、DNAという情報テープは30億個の文字から成り立っている。
 人間が人間であるのは、DNAが親から子に正確に伝えられるから。父親のDNAをもつ精子と母親のDNAをもつ卵子がひとつになって子どもが誕生する。

●放射線が情報テープを傷つけてさまざまな問題を引き起こす
 微量の放射線を浴びると、細胞の中の情報テープが切れたり、ATGCによって書かれている文章に間違いがおきたりする。遺伝子に起こるこのような変化を突然変異と呼ぶ。そして、盛んに分裂している細胞ほど放射線に弱い。
 放射線によって損傷を受けた細胞が傷を持ったまま増えるといろいろな問題が起こる。
 細胞は、増殖する過程で情報テープが正確にコピーされ、新しい細胞にその情報テープが組み込まれるが、放射線によって間違いが起きると、間違いがそのままコピーされていく。
 胎児のときから成長期にかけては細胞が盛んに分裂するため、影響は深刻である。
 たとえば胎児期に放射線を浴びると、細胞分裂がうまくいかなくなって死亡したり、染色体に異常がおきて奇形が引き起こされたりする。子どもが生まれるまでに合計0.5シーベルト(500ミリシーベルト)の放射線を浴びると、突然変異が2倍になるという報告がある。
 放射線によって細胞をガン化させる情報が書き込まれると細胞がガン化して、大人でも胎児期と同様の速さで分裂をはじめる。
 いちばんこわいのは、情報テープについてしまった傷が、卵子や精子を通していつまでも子孫に伝えられてしまうことである。

●微量の放射線でも危険
 放射線による被害を防ぐために、許容量(限界線量、線量限度)が定められている。これは、それだけ浴びても安全という値ではなく、「それくらいまでは仕方ない」という値である。
* 職業人(原子力関係の仕事、放射線を扱う仕事に就いている人)人については1年間に0.05シーベルト(50ミリシーベルト)と定められていたが、2011年3月11日に起きた福島第一原発の事故に際し、この値が0.25シーベルト(250ミリシーベルト)に引き上げられた。一般人の許容量は1年間で0.001シーベルト。
* 放射線を浴びると、被曝したあとすぐに(せいぜい数週間後までに)出る急性障害と、数年、場合によっては数十年後に出る晩発性障害がある。
 急性障害は250ミリシーベルト以上浴びると出るといわれ、やけど、出血(内臓からも)、けいれん、脱毛、目の水晶体混濁、意識混濁、白血球減少、永久不妊などがある。さらに多量に浴びた場合は死に至る。
 晩発性障害としては、ガン、白血病、白内障、胎児の障害、寿命短縮、遺伝障害などがあるが、これらが発現したとしても、その原因を数十年前に浴びた放射線だと特定することは難しい。統計的に、放射線を浴びた人たちの間で、これらの障害の発生の確率が高くなるとされている。

 自然の中にも、地球の外から来る宇宙線や土や岩石などに天然の放射性物質が含まれており、私たちは絶えず1年間に0.005シーベルト(5ミリシーベルト)ほどの微量の放射線を浴びている。人間の細胞には放射線が情報テープにつけた傷を治す修復酵素があるが、それでもなお天然の放射線によって一部のガンが引き起こされていると考えられている。
 人工的な高濃度の放射線を浴びた場合、この修復酵素では間に合わない。
 生物は放射線には大変弱いのである。

●放射線に汚染されたゴミが積もっていく
  原子力を使うことによって放射線に汚染されたゴミが大量に廃棄されるが、どう処理したら安全かがわかっていない。
 1人が1年間に使う電気を原子力発電で生産するために出る放射性物質のゴミを、まあ安全というくらいまで水で薄めようとすると、100万トンの水が必要と計算されている。千年たっても1000トン、百万年たっても10トンの水が必要。
 2万4千年たっても半分しかこわれないプルトニウムをどう処理できるだろう。だれもその安全な処理方法を知らない。
 事故が起きれば放射線がもれて、事故のたびに積もっていくのだ。情報テープの傷もどんどん増え、突然変異が起こってしまう可能性も蓄積していくだろう。
 私たちは、捨てかたもわからないゴミを自分の欲望や快楽のためにどんどんつくりだして、地球を汚しているのだ。
 人間は原子力に手を出してはいけない。原子力は禁断の木の実だ。


 長くなってしまってごめんなさい。