北京・胡同窯変

北京。胡同歩きが楽しい。このブログは胡同のあんな事こんな事を拙文と写真で気ままに綴る胡同お散歩日記です。本日も歩きます。

第206回 北京・中鮮魚巷(前) 植物紋様の美しい雀替や蘇式彩画に出合いました。

2018-10-08 10:05:26 | 北京・胡同散策
今回は、中鮮魚巷(Zhongxianyuxiang/ヂョンシエンユィシヤン)を散策してみました。

場所は、次ぎの地図をご覧ください。


上の地図は、2007年4月に発行された『北京胡同志』(主編段柄仁/北京出版社)所収「建国門地区」
より。緑色の部分が「中鮮魚巷」です。


中鮮魚巷には、出入口が二箇所あり、
一つは蘇州胡同沿いの北口、もう一つは北京駅西街沿いの南口。

当日は、南出入口から歩き始めました。



この日は、国慶節休みに入る二日前。
青空の下、国旗がひるがえっていました。
国慶節は十月一日、国慶節休みは十月一日から七日までになっています。





なんと奥床しいことでしょうか。
左手にヘチマが頭上を覆う路地がありました。



この路地の斜め前方にも、路地。





横批には「吉星高照」と書かれていました。






こちらは旅館のようです。





「天賜庭院精品酒店」。


住所は、中鮮魚巷10号院。
宿泊料金は、400元から900元ぐらい。


この旅館の前辺りには公共トイレ。
トイレの脇には、物置が並んでいます。



ホテルの横。



国旗がひるがえっています。



ひるがえった国旗が電線にからまってしまいました。



この日は青空ではあったのですが、その方向、強弱が一定していない風が吹いていました。

こちらのお宅は中鮮魚巷8号院。



玄関前には、椅子とテーブルが置かれています。
電気メーターが9台。電気メーターの数は、この敷地内に暮らす戸数をしめしています。

外壁には
「居民重地
禁止喧嘩」
と書かれたプレートが貼ってありました。



旅先という非日常の中、解放感にひたった近くのホテルの観光客が、路上でついつい大声で騒いで
しまう、おそらくそんなところではないでしょうか。

貼られたプレートの新しさから見て、上のような文言の書かれたプレートを貼らなくてはならないのは、
おそらく数年前から見られるようになった国内および国外への旅行ブームの影響かと思われます。

自戒を込めて、誇張を恐れずに言えば、この旅行ブームでニコニコ顔なのは、主に旅行している観光客
自身や宿泊施設の経営者とその関係者、そして断るまでもなくインパウンドがどうしたとかアウトバウ
ンドがなんたらかんたらなどとかしましい旅行会社とその関係者、また、「北京の人気スポットはここ!」
あるいは「胡同にあるお洒落なレストランはここ!」などと銘打ちながらも、実は胡同それ自体のことなど
はどうでもよく、しかもどこまで実感に基づいて書いているのかまことに怪しげな観光地飲食店情報満載
の旅行ガイド本関係者だけ、と言ってよく、観光地で観光客などとは無関係に日常生活を送っている人たち、
あるいは日常生活を営む場所である胡同で暮らす多くの人たちにとって観光客やその関係者はどのような
位置づけがなされているのか、いったい観光客とは何者なのか。

わたし自身を含め、観光客やそれに関連する人たちの質が問われる今日的な問題をこの一枚のプレートは
ささやかながら提議している、と言って良いかもしれませんね。そして、このプレートに書かれた文言が
ありがたいことにいささかなりとも旅行者の質の向上に一役買っていることは、言うまでもありません。

と、しまりもなく長々と書いてきたものの、このプレートをきっかけにしてもう少し書けば、思えば胡同
は今までも常に“何者”かと闘ってきたし、今も闘っているし、これからもきっと闘っていくのではないで
しょうか。

ちなみに、「喧嘩」という字は、日本語の意味とは違い、「がやがやと騒がしい。大声で叫ぶ」と言った
意味の言葉です。


さて、上にご紹介したプレートの前は19号院。



国旗がひるがえっています。



門墩(mendun)。





これだけ立派な門構えのお宅なので、玄関を入って正面に外部からの視線の遮断、魔除けの
働きを持つといわれる「影壁'yingbi/インビー)」があってもおかしくないのでは、と思っ
たのですが、この19号院にはそれがないのが意外でした。

もともとなかったのか、解放後取り払われてしまったのかは不明です。



さらにおじゃましてみました。





見上げると、傷んではいるし、地味なデザインでもあるのですが、落ち着きのある洒落た電燈設備の一部が
ありました。



もし、この電燈設備の一部を取り付けたのが、この四合院住宅に住んでいたもとの住民だとすると
これから中庭におじゃまするのが、いっそう楽しみになってきました。







まずは、西側東向きの住宅を拝見しました。







植物紋様の美しい雀替(じゃくたい)が目に飛び込んできました。

雀替とは、梁などの横架材と柱が直角に交わるところに置かれ、横架材と柱を連結する働きを持つ
建築部材の一つ。



繊細な曲線の流れるような形状の植物紋様にしばし時の経つのも忘れてたたずんでしまいました。

眺めているうちに「ゴシックの影響かな?」とも思ったのですが、本当のところは不明です。



しかし、ゴシック建築を彩る植物紋様と四合院住宅に見られるそれとの関係について、
一度はちゃんと向き合う必要が個人的課題としてわたしにはあるようです。


次に、北側南向きの住宅を拝見しました。



出入口や写真右側に見られるガラス窓のデザインが素敵ですよね。




上を見上げると、民間住宅に見られる蘇式彩画がありました。
描かれているのは、中国の山や湖のようです。



東側にも彩画がありました。



こちらに描かれているのは、植物模様。



この四合院住宅の施主や彩色した職人たちの意思とはかかわりなく、2018年の今は、色彩鮮やかだっ
たにちがいない昔日の美しさは失われ、彩色された当時の美しさとは異質な、時の経過を想い起こさ
せる深い味わいや幽玄の美しさをたたえていました。


こちらの知識や経験の不足によって見落としてしまったこと、他の事情によって記録することの
出来なかったことがまだまだたくさんあったかと思いますが、当日はこの辺でもと来たところに
もどりました。

次ぎの写真正面に見えているのは、東側西向きの住宅の一部です。
住宅の一部が新しい材料で改修されています。









いったいどういうカラクリのために生じた現象かはわからないのですが、中庭にいた時には無風状態
だったのにもかかわらず、玄関前に戻ってくると中庭にいたときとはまったく違い、国旗が北からの
風にぱたぱたと音をたててひるがえっているのが、不思議でした。



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