語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】教養強化のため新聞記事をどう活用するか

2018年03月04日 | 社会
 (1)新聞情報をどう活用するか。
 原則・・・・迷ったら捨てる。
 迷うかどうかの基準をどこに置くか。
 「仕事に必要か」を基準にする・・・・と、圧倒的大多数のビジネスパーソンは、国際問題に関する記事、哲学・思想・歴史に関する書評は「捨てる」のボックスに入れられてしまう。

 (2)では、「興味のある記事や書評を読む」を基準にすればよいか。
 一般論として興味ある部分についての知識をつけていくことは重要だ。しかし、それにも適切なアプローチがある。
 宮崎駿監督アニメ『風立ちぬ』(2013年公開)は、圧倒的大多数の日本人に受け入れられた。
 <アプローチ その1>現下の日本人の心理を知るために、このアニメを見たり、『風立ちぬ』に係る新聞の論評を読むことには意味がある。
 そこで、「美しい戦闘機を作る」という堀越二郎・技師の美意識が戦争とどう結びついていくかについて考えることは重要だ。零戦は、日中戦争で重慶に無差別爆撃を行った海軍の96式陸上攻撃機の護衛をした。中国からすると、日本人が東京を空襲した戦略爆撃機B29に対するのと似たイメージで零戦が受け止められた。中国人が『風立ちぬ』を見た場合、日本人と同じような感情移入はできないだろう。
 こういう方向で、新聞記事を読み、思考を掘り下げていくことには意味がある。同じ現象が異なって解釈されることを汁のは、国際ビジネスに役立つからだ。
 <アプローチ その2>『風立ちぬ』を見て零戦について詳しく調べる、というアプローチもある。11型、21型、32型、52型、53型、54型のそれぞれの性能は・・・・というような細かい知識を増やす。
 標準的なビジネスパーソンには無意味な作業だ。「総合知に対立する博識」(中世ヨーロッパの格言)というが、細かいデータをいくら記憶しても、教養にはつながらない。ビジネスに役立つ知識にもならない。ただし、プラモデルや戦史について趣味として知るのであれば、話は別だ。

 (3)「仕事に必要になる」事柄以外の新聞記事は、基本的に教養を強化するために読む。
 そこでの基準は、次の(a)と(b)との間でバランスを取ることになる。
  (a)どれくらい新聞を読むのに割く時間があるか。
  (b)自分が持つ興味。

 (4)日本の政治、外交、社会、経済に大きな影響を与える事柄に対し、興味を持つことが重要だ。
 以下、北朝鮮の動きを例にとる。
 12月12日、張成沢(チャンソンテク)・北朝鮮前国防委員会副委員長(67歳)が処刑された。

 <12日に開かれた特別軍事裁判で、張氏がクーデターを画策する「国家転覆陰謀行為」を認めたとして死刑判決が下され、ただちに執行されたとしている。事実上のナンバー2だった張氏の処刑で今後、側近らの粛清が続くとみられ、金正恩(キムジョンウン)第1書記の独裁体制が強まる見通しだ>【注1】
 <故金正日(キムジョンイル)総書記の妹の夫で、正恩氏の義理の叔父にあたる張氏は正恩氏の「後見人」とされてきたが、反党・反革命的な分派行為や不正・腐敗行為があったとして、8日の朝鮮労働党政治局拡大会議で党行政部長などすべての職務から解任された>【注2】

 13日の各紙には、裁判所に連行される張市の写真(朝鮮労働党中央機関紙「労働新聞」電子版の2面に掲載された)が転載された。
 注意深く見ると、左ほおが青紫色に変色している。かなりひどい拷問を受けている(推定)。独裁国家でも、このような拷問の痕跡が残るような証拠写真を公表することは、まずない。国際的に非難されることが必至だからだ。そのような計算ができないほど、北朝鮮当局は焦っている。

 <張成沢は、政変を起こす時点と政変以後にはどうしようと考えたのかに対して、「政変の時期ははっきりと定めていなかった。しかし、一定の時期になって経済が完全に倒産し、国家が崩壊直前に至れば、わたしがいた部署とすべての経済機関を内閣に集中させてわたしが総理になろうと思った。わたしが総理になった後は、今までいろいろな名目で確保した莫大な資金をもって、ある程度生活問題を解決してやれば人民と軍隊はわたしの万歳を叫ぶであろうし、政変は順調に成功するものと打算した」と白状した>【注3】

 この弾劾文から、「経済が倒産し、国家が崩壊直前に至る」可能性があることが浮き彫りになった。
 北朝鮮の構造的危機はかなり深刻なことが外国に知られてしまう・・・・点でも、張氏の弾劾に焦る北朝鮮当局が、かかる弾劾文を発表することで、国際的に金正恩政権の安定性に疑念が生じることを計算できないほど慌てていることがわかる。
 こんな国家が、核兵器と弾道ミサイルを保有している。北朝鮮が、冷静な判断ができずに韓国や日本に対して、軍事的長髪行動を取る可能性も排除できない。
 だから、北朝鮮関連の新聞記事や書評を読む必要が生じるのだ。

 【注1】記事「北朝鮮、張成沢氏の死刑執行 「国家転覆を画策」」(朝日デジタル 2013年12月13日11時49分)
 【注2】前掲記事
 【注3】記事「千万の軍民のこみ上げる憤怒の爆発、希代の反逆者を断固と処断」(2013年12月13日付け「ネナラ」)・・・・「ネナラ」は北朝鮮政府が運営しているポータルサイト

□佐藤優「教養を強化するため新聞記事を読む ~知の技法・出世の作法 第324回~」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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