語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~

2012年06月25日 | 社会
(1)ハチの一刺し
 6月14日発売の「週刊文春」の記事【注】が、静かだが確実に政界の地殻変動を加速させている。 
 小沢の妻の手紙は、過去に政界を揺るがした雑誌報道と二重写しになる。
 (a)1974年、児玉隆也「淋しき越山会の女王」(「文藝春秋」)は、田中角栄・元首相の金庫番の存在を明かし、立花隆「田中角栄研究-その金脈と人脈」(同誌)とともに田中の首相退陣の引き金となった。
 (b)1989年6月、「サンデー毎日」は宇野宗佑・首相(当時)の女性スキャンダルを報じ、その1ヵ月後、参院選で惨敗した宇野は在任期間わずか69日で退陣に追い込まれた。
 (a)(b)とも、雑誌に報じられた直後には政治問題化していない。その後の展開が両首相を追い詰めていったのだ。
 田中は、外国人特派員協会で外国人記者の(雑誌報道に基づく)厳しい質問をきっかけに行き場を失った。
 宇野は、「サンデー毎日」の記事を「ワシントン・ポスト」「ヘラルドトリビューン」などが相次いで報じたのを受け、衆参院の本会議で野党議員が取り上げて政治問題化した。
 ちなみに、ロッキード裁判で、田中の元秘書の元妻が5億円の授受を認める爆弾証言をし、その後の記者会見で元妻は証言の動機を語った。「ハチは一度刺して死ぬ。私もその覚悟です」
 小沢の妻の「離縁状」も、イメージダウンは計り知れず、「ハチの一刺し」になる可能性がある。

 【注】「【原発】放射能から逃げ回る小沢一郎 ~妻からの「離縁状」~

(2)「大角連合」の復活
 「週刊文春」の記事は、「小沢斬り」を迫っていた自民党に意外な波紋を投じた。「小沢抜き」で勢力を大幅に減らした民主党との連携が自民党の基本戦略だったが、目算が狂って、割れ方が小さくなる可能性が残ったのだ。ただし、自民党も、ここまで来れば引き返すことはできない。
 有力な側近やブレーンはいないし、党内少数派グループの野田が、一体改革関連法案をめぐる国会審議をここまで持ち込めた鍵は、自民党にあった。
 野田は、自民党の有力者に電話をかけまくったのだ。その相手のうち、
 (a)額賀福志郎・額賀派会長の背後には、青木幹雄・元官房長官の存在がある。青木は、消費税を導入した竹下登の秘書から国政に駒を進めた。輿石東・民主党幹事長と太いパイプがあり、青木の個人事務所には斎藤勁・官房副長官らが出入りしている。
 (b)古賀信・古賀派会長は、戦後日本で初めて大型間接税の導入を試みた大平正芳・元首相の最後の弟子だ。岸田文雄・自民党国対委員長は古賀の側近だ。
 要するに、野田との修正協議を実質的に主導したのは、かつての①旧経世会(現額賀派)と②宏池会(現古賀派)だった。長く保守本流として君臨してきた①と②は、小泉純一郎・元首相による「排除の論理」の前に、党内野党に転落した。
 しかし、今、①②の源流、田中と大平による「大角連合」が復活、野田との守勢協議で再び党運営の主導権を握りつつある。逆に、小泉政権で国対委員長を務めた中川秀直らは、修正協議に異を唱えて党内反主流派に押しやられた。

(3)財務省と与党のスクラム
 「大角連合」に、小渕恵三政権時代から与党入りした公明党が、最終的に加わった。
 民自公に財務省の野望が加わってできあがったのが、一体改革に係る3党合意だ。合意形成の手法と合意文の構成には、自公政権下の財務省と与党がスクラムを組んで政策を推進する旧態依然の政権運営が反響する。
 事実、消費税率2段階引き上げしか、合意では明確に結論が出ていない。他の重要課題はすべて先送りされた。増税だけでも実現したい財務省には都合がよい(「増税食い逃げ合意」)。
 もっとも、先送りは同時に今後の強力継続を意味する。わけても年末の税制改正を共同作業で行うならば、事実上、大連立に向けた「準備協議」に入るに等しい。今回の修正協議を経て、小沢抜きの「疑似大連立」ができた、と見てよい。
 しかし、現段階では、野田の独り勝ちだ。野田が解散に動かなければ、自民党は参院の法案採決に「待った」をかける。
 政局は、解散総選挙をめぐる攻防に移った。

 以上、後藤謙次「幕上がる政界再編劇 小沢自滅で“議事大連立”」(「週刊ダイヤモンド」2012年6月30日号)に拠る。
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