語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」

2015年04月22日 | ●佐藤優
 (1)ヒラリー・クリントン・前国務長官が、4月12日、米大統領選挙(2016年)に立候補する、と表明した。
 オバマ大統領に対する国民の失望感が強い状況で、民主党には勢いがない。
 もっとも、現在、米国人口の37%が非白人(黒人、ヒスパニック、アジア系など)だ。2050年には非白人の人口比率が過半数になると目されている。
 このような状況で、白人エリート層と大企業家、さらに宗教右派(ティーパーティがその代表)を支持基盤とする共和党は、現在の路線を大胆に変更しない限り、非白人層を取り込むことができない。
 対する民主党候補には、非白人票の大多数と白人の中産階級や知識人が投票する。
 大統領選挙においては、民主党が有利な状況なのだ。

 (2)民主党に対して厳しい立場をとる米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、翌13日の社説でクリントンを激しく批判した。
 <ヒラリー氏は個人としてよりも、民主党とリベラル派の影響力維持と資金集めのために作られた組織の「顔」として立候補する。かつてのファーストレディーの有名な言葉をもじって、これを「巨大な左翼の陰謀」と呼んでも良いかもしれない(訳注:ヒラリー氏はかつて夫のクリントン元大統領を攻撃する勢力を指して「巨大な右翼の陰謀」と呼んだ)。ヒラリー氏が集票マシンのトップに上り詰めたのは、個人的な資質や本人の政策からではなく、民主党は彼女のほかに候補がいないと思っているためだ。
 では、クリントン氏は何を掲げて戦うのだろうか。米国初の女性大統領というのが立候補の主な理由付けのように見える。選挙戦では、家族休暇の義務化や3~4歳児(プレキンダーガーテン)教育の一般化、チャイルドケアについて持論を展開することになろう。彼女は2008年の大統領選挙では女性であることを強調するのをためらった。だが今、現在の民主党を特徴づけている、社会的少数派などアイデンティティーに基づく集団の利益を重視した「アイデンティティー政治」で、性別は重要な意味をもっている。クリントン氏は08年にも当然のこととして出馬した。出馬した際のモットー「私は勝つために出る」を覚えているだろうか。そして皮肉なのは、その必然性がたとえ彼女自身はそうではないように装っていたとしても、おそらく今回は本当だということだ。>【注】

 (3)ヒラリー・クリントンは、
   (a)積極的格差是正策(アファーマティブ・アクション)、同性婚の承認などの「アイデンティティ政治」で、自分の権力基盤の拡大を図ることは間違いない。
   (b)内政面で、オバマ・現大統領とクリントンとの間に大きな違いはない。
   (c)外交面では、大きな違いが出てくる。自由と民主主義という米国の理念を、力を行使してでも実現すべきである、という新保守主義者(ネオコン)と共通する外交哲学をクリントンは持っている。クリントンは、「イスラム国」やイランに対し、オバマ・現大統領よりも遥かに厳しい姿勢で臨むことになる。

 【注】社説「「ヒラリーマシン」に頼る民主党、歴史の封印は困難」(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2015年4月 13日)

□佐藤優「ヒラリーとオバマの「大きな違い」 ~佐藤優の人間観察 第110回~」(「週刊現代」2015年5月2日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 


コメント   この記事についてブログを書く
« 【詩歌】現代社会の落とし穴... | トップ | 【詩歌】戦士のうた ~礁湖... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

●佐藤優」カテゴリの最新記事