語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>除染ボランティアの被曝は「自己責任」

2012年01月29日 | 震災・原発事故
 昨年8月下旬、国の原子力災害対策本部が「除染に関する緊急実施基本方針」を発表した。
 同年9月、この「方針」に基づき、福島市が「ふるさと除染計画」を9月に発表した。

 この「計画」に先立ち、福島県は「線量低減化活動支援事業」を開始した。市町村による除染(業者に委託)とは別に、公共空間の除染に当たる地元自治会やPTAに最高50万円を助成する。
 しかし、住民の手による自発的な除染は、予想以上に難航し、なかなか成果が上がらない。
 福島県民は、東京電力や国の被害者である自分たちがなぜ除染までしなければならないのか、という意識が強い。自治体による除染で発生する土砂の仮置き場の確保も難しい。高圧洗浄機によって屋根を洗浄した結果、隙間から放射性物質を含んだ水が入りこみ、屋内の放射線量が上がったケースもある。除染に対する考え方は一様ではない。【福島県災害対策本部関係者】

 そんな中、急遽持ち上がったのがボランティアによる除染活動だ。
 それを見る県民は複雑な心境だ。
 ボランティアには本当に頭が下がる思いだ。他方、除染されると、もう「避難」という選択肢がないのか、と途方に暮れる。うちのような共働きでは、自主避難という選択肢はないから。【福島県大波地区に暮らす主婦】

 福島以外の被災地で活動したボランティアでさえ、除染活動に疑問を抱く。
 地元の人の顔が見えない。石巻では、被災者と一緒に家屋の掃除をしたり、泥だしをした。共同作業の中で、被災地の体験を直に訊くことができた。だからこそやり甲斐や充実感が生まれる(それが目的とは言わないが)。今回出会った地元の人は、挨拶に立った自治会長だけ。しかも、形式的な挨拶だった。【除染ボランティア】

 除染の効果自体、疑問だ。
 除染の前と後では、確かに空間線量の数値は下がる。しかし、周囲を見渡せば、途方もない雑木林だ。雨が降るとセシウムを含んだ水が排水溝をたどって生活圏に戻ってくる。1ヵ月もすれば線量が元に戻る場合もある。また、所有者の同意の下に除染を行う私有地はよいが、そうでない場所の除染はどうするのか。とにかく、何もかも矛盾だらけだ。【福島市災害ボランティアセンター職員】

 国は、ボランティアを行政の道具と位置づける。
 除染以外の選択肢がない以上、ボランティアに参加してもらわないと人手が足りない。行政の代わりに、不満を抱える住民のガス抜きの役割を担ってもらえば助かる。【環境省の除染担当官】

 震災支援に関与するボランティア団体やNPOの間でも、除染ボランティア派遣については意見が分かれる。大半は、否定的だ。
 現場でボランティアを束ねるリーダーは、除染のやり方に矛盾や疑問を感じても、原則行政の立場を尊重しなければならないので何も言えない。そもそも、ボランティアは行政に縛られるものではなく、単なる下請け労働力でもない。行政と対等のパートナーシップを結び、適材適所で連携してこそ成果を上げことができる。福島への支援は必要不可欠だが、除染をボランティアでやらなければならない理由がよくわからない。【山本隆・ピースボート災害ボランティアセンター代表理事】

 全国のボランティアの窓口、全国社会福祉協議会もまた、福島のケースはあくまで特殊なものだ、という。除染に係る国の方針が明確には定まっていない中、全国の社協が被災地沿岸部で行った震災支援と同じように一斉に動くことはない、と。
 ボランティアの原則は、個人の自主性であり、自己責任だ。今後、除染が必要な地域は拡大し、相当なマンパワーを必要とするだろう。かといって、除染を行政ではなくボランティアが行うのか。前代未聞の除染ボランティアは、ボランティアの可能性であり、限界かもしれない。【後藤真一郎・全国ボランティア・市民活動新興センター副部長】

 国もまた、健康リスクに係る自己責任を強調する。
 警戒区域以外は安全地域と認識している。被曝しても「ただちに」人体に影響はない。ボランティアの自主性に委ねられることだ。【環境省水・大気環境局総務課】

 以上、中原一歩(ライター)「「被曝は自己責任」の不安」(「AERA」2012年1月30日号)に拠る。
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