語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発で働く作業員の現実

2011年03月27日 | 震災・原発事故
 地震の翌日、ある作業員にその友人経由で東電の下請け会社からメールが来た。
 「現在の報道は非常にセンセーショナルで、当社が確認したところでは、そこまで深刻ではないとの回答を東電サイドから得ています。今後、多数の方々のお力を必要といたします。これまでのベースから日給を3倍をめどにご賛同いただける方々を募集しております」
 3倍なら日給5万円だ。より危険な区域を担当したり、経験が豊富な場合は10万円という噂も、その作業員は聞いた。下請け会社の話では、原子炉への海水注入を迫られた際、東電側は言い放った。
 「この原発にどれだけカネを使っているのか、知っているのか。原発がなくなれば、お前らの仕事もなくなるぞ。海水を入れて廃炉にするなんて、とんでもない」
 はたして、3月11日、福島第一原発の冷却装置が壊れて炉心の冷却ができなくなったことが判明したとき、菅首相は海水を炉内に注水するよう指示したが、東電は拒否した。また、米国が原子炉冷却に係る技術支援を申し入れたものの、東電側が東電だけで対応できると強調したため、政府が支援を断ったと報じられた【注】。

 以上、「週刊朝日」取材班・堀井正明/三嶋伸一/大貫聡子/長井貴子/今西憲之/シャノン・ヒギンス「3.11東北関東大震災M9.0 負けないぞ!ニッポン」(「週刊朝日」2011年4月1日号)に拠る。ただし、【注】のくだりは、「サンデー毎日」・武内亮/ジャーナリスト・山田厚俊「『官邸vs.東電』不都合な真実」(「サンデー毎日」2011年4月3日号)に拠る。

   *

 福島原発で働く者から、佐藤栄佐久・前福島県知事(刑事被告、上告中)が在任中、内部告発が30件以上あった。
 佐藤前知事のもとへ来たのは、原子力安全・保安院に告発すれば「握りつぶされるから」だ。
 その内容は、電力自由化という時代の流れの中で原発の定期検査の期間が次第に短くなり、個々の作業員にとって負担が重くなっている。コスト管理が厳しくなった。・・・・という訴えが多かった。「安全性がどこかへ飛んでしまった中で、現場の職員は苦労しています。これ以外にも、たとえば未成年を働かせているとか、東京・山谷から(日雇い労働者を)1日万円で連れてきている、ガイガーカウンター(放射線量計測器)を外して仕事をさせられている--などという噂も耳に入ってきました」
 
 以上、「サンデー毎日」・青木英一「原発政策、政治家は関与できず霞が関の独裁だ」(「サンデー毎日」2011年4月3日号)に拠る。

   *

 日本の原発の設計も優秀だが、施工段階でおかしくなる。
 かつては、現場作業には、棒心(ぼうしん)と呼ばれる職人、若い監督より経験を積んだ職人が班長として必ず付いた。職人は自分の仕事にプライドを持ち、事故や手抜きは恥だと考えていたし、事故の恐ろしさもよく知っていた。
 しかし、今では全くの素人を経験不問で募集している。95%以上まるっきりの素人だ。農夫や漁師が仕事が暇な冬場などにやる。いわゆる出稼ぎの人だ。そういう経験のない人が、怖さを全く知らないで作業をする。
 素人は、事故の怖さを知らない。なにが不正工事やら手抜きやら、全く知らないで作業している。それが今の原発の実情だ。
 現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように工事がマニュアル化された。図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積木を積み重ねるようにして合わせていく。自分が何をしているのか、どれほど重要なことをしているのか、全く分からないままに作っていく。事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつだ。
 「例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、1歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。本人は針金を落としたことは知っていたのに、それがどれだけの大事故につながるかの認識は全然なかったのです。そういう意味では老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も素人が造るという意味で危ないのは同じです」

 以上、「原発がどんなものか知ってほしい」に拠る。
 筆者の平井憲夫氏は、1級プラント配管技能士、原発事故調査国民会議顧問、原発被曝労働者救済センター代表、北陸電力能登(現・志賀)原発差し止め裁判原告特別補佐人、東北電力女川原発差し止め裁判原告特別補佐人、福島第2原発3号機運転差し止め訴訟原告証人。1997年逝去。
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