語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】子どもに貧困を押しつける日本 ~再分配機能の不全~

2015年01月04日 | 社会
 経済大国であるはずの日本で、貧困問題がますます深刻になっている。
 これは周知の事実だが、あらためて統計データを突きつけられると、そのひどさに愕然とする。
 山野良一『子どもに貧困を押しつける国・日本』(光文社新書)の帯には、
   過去最悪!6人に1人(16.3%)の子どもが貧困状態
と書かれている。

 厚生労働省は、「子どもの相対的貧困率」を発表している。今年7月に発表されている数字が16.3%だった。
 6人に1人の割合で、子どもが貧困状態に置かれている。
 この結果は、データを取り始めた1985年以来、過去最悪の記録だ。

 325万人もの子どもが貧困状態に陥っていることになる。
 子どもについては、日本は経済大国どころか、貧困国の惨状を呈している。
 少なくとも子ども社会には、資産市場のプレーヤーばかり意識するアベノミクスが無理やり作り上げた株高の高揚感は無縁だ。
 「子どもに貧困を押しつける国・日本」とは,言い得て妙だ。

 最近の30年間ほどのデータによれば、「景気の波」と「貧困率」との関係は曖昧である、と本書は指摘している。
 日本では1980年代半ばから貧困率がほぼ一貫してゆるやかに上がり続けてきた。
 <例>1980年代後半・・・・世の中は「狂乱」と呼んでもいいようなバブル経済に沸き立っていた。一方で、貧困率も確実に上昇していた。狂乱バブルの中でさえ、相対的に貧困な人、貧困な子どもの割合は増え続けた。

 本書の著者は、いくぶん控えめに自分の意見を述べている。
 <現在、景気さえ回復すればすべてがうまくいうように政治家の方たちは力説しています。しかし、ここ20~30年間の子どもの貧困率を見る限りでは、好景気になったとしても、不利な条件を背負っているしんどい子どもたちには何ももたらさないかもしれません。>

 日本経済を鋭く分析した卓見だが、著者は経済の専門家ではない。「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークの創設者にして、現在は世話人だ。
 「現場の人」である著者は、国の政策がまったく正反対の方向を向いていること、政府が貧困者を増やすことに手を貸してきた事実をデータで示している。
 他国と比較しても、日本には際だった特徴がある。政府による再分配機能がほとんど機能不全に陥っているのだ。

 本書には、2000年代半ばのデータで、先進16か国の貧困率を比較してOECDの資料が提示されている。
 それぞれの国の再分配前後の貧困率がグラフで示されている。日本だけ、再分配後の貧困率が、再分配前の貧困率より高い。
 まさしく「政府のおかげで貧困率が増えている」状態だ。

 <親たちではなく、政府や社会の責任の方が重い。そうした厳然とした事実を、これらの統計は示しているのではないでしょうか。>

□佐々木実「子どもに貧困を押しつける国・日本 病名は「再分配機能の不全」」 ~佐々木実の経済私考察~」(「週刊金曜日」2014年12月19日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント   この記事についてブログを書く
« 【食】新大陸からの贈りもの... | トップ | 【経済】今導入すると格差が... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

社会」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事