語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【日本への遺言】日本人はステレオタイプの意見だけ ~先入観と固定観念~

2016年08月11日 | ●野口悠紀雄
 <日本人は、ステレオタイプの浅い意見した持てなくなった。
 例えば政府経済政策の評価だ。最近になってこそ「アベノミクスは破綻した」と言われるようになったが、実のところ、最初から格別の内容はなかった。企業利益増も株価上昇も、ひとえに円安のためだ。そして、円安はアベノミクスの成果ではなく、世界的な投機資金の動きによるものだ。その証拠に、最近では世界経済の変化によって円高になり、その結果、昨年夏頃には2万円を超えていた日経平均株価も1万6千円台に下落した。アベノミクスは幻に過ぎなかったのだ。
 日本銀行が国債を購入するだけで実体経済が改善することなどありないとは、冷静に考えればすぐわかるはずだ。だから、いまのようになることは、最初から予想できた。それにもかかわらず、新聞やテレビは、金融緩和によって日本経済が活性化すると囃し立てた。政府が言っていることを、そのまま鵜呑みにしたのである。
 誰もが同じ意見だと冒頭で述べたが、こうなったのは、どのメディアも同じように平板なことをしか伝えないからだ。ニュースを伝える側が、先入観と固定観念に凝り固まっており、その範囲の意見しか受け入れず、異質の意見は切り捨てる。
 例えば、「TPPやEUのような経済統合は正しい」という観念を疑わず、それを前提にした意見しか認めない。取材に来る若い記者に普通とは違う意見を述べると、驚いた顔をして当惑するだけで、全く理解してくれない。「ETAやTPPは貿易の自由に反する」とか、「日銀が金融緩和をしたというが、市場に流通するマネーはほとんど増えていない」と言っても、まったく理解されない。政府・日銀の暴走を許した第一の責任は野党にあるが、マスメディアの責任も大きい> 

□野口悠紀雄「先入観と固定観念 ~戦前生まれ115人から日本への遺言~」(「文藝春秋」2016年9月号)
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 【参考】
【日本への遺言】大豆で日本は復活する ~大豆100粒運動~

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