語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【堤未果】世界が危惧する日本のジャーナリズム ~「監視大国」米国以下~

2014年03月03日 | 社会
 (1)ジャーナリストの安全への脅威が、世界的に拡大している。
 先日、国連総会でジャーナリストの安全は、確保に係る初の決議が採択された際、パリに本部を構える「国境なき記者団(RSF)」は、加盟国が保護義務を果たしているかどうかの監視を呼びかけた。
 そのRSFが、「報道の自由度インデックス」を発表した。世界18か国における報道の自由度を順位付けた報告書だ。

 (2)米国は、46位。10年ほど前ブッシュ政権下における令状なしの監視システムが明らかになり、エドワード・スノーデン・元CIA職員の内部告発で政府による無差別監視が世界に暴露された。諜報機関による世界的通信傍受と、内部告発者への弾圧・脅迫は今も続いている。
 だが、政府の情報統制に係る世論の批判は、近年急激に拡大。米国内のIT大手企業(フェイスブック、ヤフー、グールグル、マイクロソフトなど)は、米国大統領および議会に、「これ以上のスパイ行為や国家安全保障局(NSA)への顧客データ提出強要を止める」よう要求する書簡を提出した。

 (3)46位の米国より「報道後進国」の烙印を強く押されたのが日本だ。 
 2010年は11位だったが、原発事故の翌年に22位に下がり、2013年はさらに大幅に急落して53位。今回、59位にまで下落した。
 今では、主要先進国で唯一、カテゴリー「顕著な問題がある」に該当。東アジアでは、韓国・台湾を下回る自由度とされている。
 閉鎖的な記者クラブ制度(従来から指摘されている)に加え、原発事故報道の自由度の欠如、原子力関連産業への取材内容の検閲、フリージャーナリストたちへの独自取材規制、および「特定秘密保護法」の成立が主な理由だ。
 2013年11月27日、RSFは「特定秘密保護法」について次のように批判した。
 <あらゆる不都合な情報を国家秘密に指定できる法律を成立させる日本政府は、福島第一原発事故の影響について、国民の間で怒りとともに高まっている「透明性」の要望に、どう応えるつもりなのか>

 (4)米国では、憲法に国民の権利として記載された「報道の自由」が、「愛国者法」を始めとする情報統制法や政権への権力集中によって暴力的に侵害されている。ジャーナリストたちが、批判の声をあげている。

 (5)日本ではどうか。
 日本国憲法には「報道の自由」は存在しない。あるのは、第21条で定められる「知る権利」を充足させるための、報道機関の自由だ。
 マスメディアは、誰の人生を取り上げ、誰を無視するかを決める権力を持っている。何に対して同情の涙を流させ、何を取るに足らないものとして無視させるのか、誰を英雄にし、誰を悪人として描くのか、記号でしかない数字にどんな意味をつけるのか。
 「報道の自由」は、社会が求め、守るべき価値があると認められて初めて正統性を得る。それは、次の2つだ。
  (a)権力の監視
  (b)真実の伝達

 (6)先日、在米独立系ジャーナリストのエイミー・グッドマンが、福島第一原発事故の取材ため来日した。彼女は、「独立ジャーナリズムの意義」を次のように語った。
 <マスメディアが無視するであろう海の向こうの人々を当事者として取り上げることで、数字だけでは見えないリアリティと連帯感を生み出せる>

 (7)いま、諮問会議で運用基準を審議中の「特定秘密保護法」についえ、安部総理が尊重するよう言及した「報道の自由」とはいったい何に対しての「自由」を指すのか。
 同法成立直前、マスコミ各社は「国民の知る権利」を主張した。急落し続ける「報道の自由」というコインの裏側で、横臥し続ける「報道しない権利」のほうはどうか。
 年末の施行に向けた特定保護法の行方を含め、世界の厳しい眼が我が国に注がれている。

□堤未果「「監視大国」アメリカ以下! 世界が危惧する日本のジャーナリズム ~ジャーナリストの目 第196回~」(「週刊現代」2014年3月8日号)
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