語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【心理】欲しいものは大きく、欲しくないものは小さく見える

2016年12月26日 | 心理
 多湖輝は、今年(2016年)3月6日に物故した心理学者。1966年に発表した思考パズル本『頭の体操』がベストセラーとなり、以来約40年間に合計23巻が刊行された。心理学に係る啓発書も多く、『多湖輝の心理学教科書 人間関係をラクにする100の心理法則』もその1冊。(1)「欲望・感情」、(2)「行動・動作」、(3)「知覚・認識」、(4)「学習・記憶」の4大テーマの下、100の「法則」をやさしく解説する。この解説の語り口が、「頭の体操」的楽しさに満ちているから読みやすい。応用例も2題付する。

 〈例〉(3)の法則53「欲しいものは大きく、欲しくないものは小さく見える」は・・・・
 <人間の目はカメラと違う。物理的・生理的に目のレンズや網膜が対象をとらえていたとしても、それが「見えた」「見た」という認識にいたるには、心理的条件がからんでくる。人間は結局、「体の目」ではなく「心の目」でものを見ているのだ。
 だから、同じ対象でも、その時々の欲求によって、見えたり見えなかったり色や形まで微妙に変化する。このような現象を心理学では「センソリー・アクセンチュエイション(感覚強調)」という。
 お腹が空いていれば、ラーメンの匂いに敏感になるし、またおいしくたべられることは、誰しも体験していることだろう。知覚はその時々の欲求の強さに従って、鋭敏化するのである。新聞などを自分と同じ名まえが目につきやすいのも、同じ理由からである。
 これに関して、アメリカでおもしろい実験がある。子どもたちに額の異なる貨幣を見せて、目に映る大きさと実際の大きさを比較したところ、額の大きな貨幣の大きさを、実際より大きく見たという。しかも、低所得層になればなるほど、その傾向が顕著だったそうだ。(中略)
 ある人など、お金が無くなったとたん。ふだんなにげなく眺めながら歩いていた通勤路に、こんなにたくさんのサラ金の看板があったのかと驚いたという。
 その意味では人間の目は正直だ。心では隠そうとしても、貨幣の実験同様、欲しいものが大きく見え、欲しくないものは小さくしか見えないのである。

 〈応用例1〉新聞に料理記事が覆いと思ったら、腹が減っているのに気づいた。
 〈応用例2〉失恋したら、電車の中がカップルばかりに見えた。>

□多湖輝(千葉大学名誉教授/東京未来大学名誉学長)『多湖輝の心理学教科書 人間関係をラクにする100の心理法則』(KKロングセラーズ、1999)
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