語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】著者が語る『アベノミクス批判 四本の矢を折る』

2014年12月24日 | 批評・思想
 (1)本書【注】を書いた動機は三つある。
  (a)自分自身の興味・・・・①株価は必ず上がるし、②為替は動く。そう見て、外国人投資家(市場を動かす主因)を注視していた。その結果、2012年10月から大量の買い入れが入り始めた。さらに、2012年末には、財務省による表に出ない為替介入があった(調べて分かった)。つまり、株価上昇や円安は、安倍政権の経済政策とは無関係だ。それを明らかにするのが本書の目的の一つ。
  (b)マクロ分析による政策科学(人口減少の影響を考慮したもの)によって論じる。これが本書の理論的新しさだ。
  (c)後述。→(6)参照。

 (2)アベノミクス主導者やアベノミクス賛同者は、理論あるいは現実を知らない。
 <例>金融政策・・・・利子率が下がったときに投資が増えるかが大きな問題だが、結論は実証されている(英国「オクスフォード調査」や、それを範にした日本の経済企画庁(現・内閣府)の調査)。それを知らないとすれば、まったくの不勉強だ。

 (3)要するに、安倍政権の政策は、財政では何もできないから(税金が取れないから)、金融で何とかしろ、ということだ。
 だが、結果は、外国人投資家を儲けさせただけだ。

 (4)安倍首相は経済成長に固執している。
 しかし、政策科学を適用すれば、この先日本は、縮小均衡になるのが明らかだ。
 それに合わせて早く準備しなければ、企業も、地方も、国も危ない。
 成長などということを論じている場合ではない。

 (5)そもそも、鉄が鉄を呼ぶような成長は、その国において1回限りだ。
 日本では1960年代がそうだった。
 米国のIT革命も、また今もっとも技術革新の可能性が高い医療も、有効需要に波及しない。
 今後も成長はあるだろう。しかし、それは輸出か、公共投資によるもので、長続きはしない。そういう好機があったら、蓄えて縮小に備えるべきだ。
 ちゃんと対応すれば、日本はけっこうよい社会になる。

 (6)安倍首相は、日中国交回復のころの先人の英知を捨てて、反中路線を採り、集団的自衛権で武力による紛争解決の道を進もうとしている。
 日本にとって決して良いことではない。
 日中国交回復のお手伝いを少しやり、経緯を知る者として、そのことを言っておきたい。

 【注】伊東光晴『アベノミクス批判 四本の矢を折る』(岩波書店、2014)

□伊東光晴「著者が語る『アベノミクス批判 四本の矢を折る』」(「週刊ダイヤモンド」2014年12月27・2015年1月3日号)
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