語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【隠蔽】年金申請書類を紛失、言い逃れのテクニック ~日本年金機構~

2013年09月21日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)またしても日本年金機構で、旧社会保険庁時代の不祥事に匹敵する不祥事が発覚した。
 年金(遺族年金を含む)受給申請書類を適切に処理しないまま、店晒しにしていたのである。
 当然、老後の生活を揺るがし、世帯主を喪った遺族の生活を圧迫した。

 (2)機構本部発表の「プレスリリース」(8月9日付け)によれば、これら不祥事は、兵庫事務センター(書類を集中的に処理する事務センターの一つ)で発生していた。
 同事務センターが過去2年半に受け付けた書類のうち、少なくとも250件が未処理だったことが判明。
 このうち、受け付けた書類そのものを紛失し、処理しようにも処理できないケースが57件もあった。これらについては、書類の再提出を求める、という負担を年金請求者に負わせている。
 最悪なことに、その間に年金を受給できないまま死亡していた人まで出ていた。

 (3)本来なら、事態を把握した時点で機構本部のとるべき措置は、
  (a)まず国民に向けて情報公開し、謝罪することだ。
  (b)同時に、他にも書類を紛失した事務センターがないかを調査し、
  (c)専用の相談窓口を設けて、少しでも不安を感じて問い合わせてきた人への相談体制を充実させることだ。

 (4)ところが、機構本部は、
  (a)「処理の遅れたお客様対応に忙しかった」という屁理屈をひねり出し、
  (b)今年1月中旬に事態を把握しながら8月9日まで7ヵ月間も「隠蔽」を決め込んだ。
  (c)その間、何をしていたかというと、関西地区の職員を駈り出し、密かに事案の処理を急いでいた。

 (5)要するに、機構本部は、
  (a)自己保身には本能的なまでの抜け目なさを発揮し、
  (b)迷惑をかけた年金加入者には頬かむりを決め込んだ。
  (c)そして、呆れるばかりの不誠実、事なかれ主義よりも悪質なのは、「隠蔽」によって、公的年金制度の信頼を破壊的なほど揺るがせてしまった。・・・・そのことに、機構本部は気付いていない。

 (6)岩瀬達哉・社会保障審議会日本年金機構評価部会委員は、「プレスリリース」が公表された当日に開催された同部会の席上で、リリースではよく分からなかった事実関係を機構側に質した。再発防止策をたてるにあたり、事実関係の把握は、最低限、必要なことだからだ。
 特に集中的に質したのは、57件の申請書類を紛失したことに係る説明だ。常識的に考えて、57件もの書類を紛失するのは、職員が故意に捨てるか、不正に持ち出して紛失するか、「犯罪的行為」がなければ発生しないはずだ。
 この点、機構側はどのような調査を行い、どのような結果を得ているのか。
 ところが、何度同じ質問を試みても、機構側は「いまだ調査中」といった趣旨の回答を繰り返すばかりだった。挙げ句のはて、人を喰った説明までやらかした。
 「書類がロッカーやキャビネットの隙間に落ちていた、ということも過去にはあった。また、書類を管理するロッカーが不足しているところもあり、キチンと管理できなかった可能性もある」
 では、兵庫事務センターでは新たにロッカーを購入した事実はあるのか、と問うと、「それはわからない」と回答するのであった。
 要するに、
  (a)一般論を交え、
  (b)論点を攪乱するばかりで、
  (c)ついぞまともな説明をしなかった。

□岩瀬達哉「謝罪より保身で被害拡大 7ヵ月も隠蔽されていた日本年金機構の“犯罪行為" ~ジャーナリストの目 第174回~」(「週刊現代」2013年9月14日号)
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