語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【後藤謙次】小池都知事に立ちはだかる二大障害 ~公明党の小池離れと官邸との溝~

2017年11月28日 | 社会
 (1)「秋の日はつるべ落とし」--。そんな秋の夕日と重なるのが「希望の党」共同代表だった東京都知事の小池百合子。11月14日夕、衆議院第1議員会館で開かれた希望の党の両院議員総会で自らの進退に触れた。
 「創業者の責任として代表でスタートしたけれど、これからは皆さまにお任せする」

 (2)小池が絶大な人気を背景に、国政への進出を明言したのは9月25日。首相の安倍晋三が衆院解散を表明する記者会見に先んじて小池が声を上げた光景は強烈だった。
 「私がしっかりと旗を掲げる。結党宣言だ。希望をもっと持ちたい。そのようなことで党名を付けた」
 この記者会見が「小池劇場」のピークであった。
 今年7月の東京都議選では「都民ファーストの会」のブームを盛り上げ、自民党に取って代わって都議会第1党の座に躍り出た。まさに向かうところ敵なし。いつしか小池の国政進出、そして「日本初の女性首相の誕生か」などと、小池への注目度は日を追うごとに高まった。そこで浮上したのが、希望の党の結党であり、民進党代表(当時)の前原誠司との合流だった。

 (3)「好事魔多し」。小池が発した一言が事態を暗転させた。
 「前原代表がどういう発言をしたのか知らないが、(合流希望者について)『排除されない』ということではございません。排除いたします。取捨選択というか絞らせてもらいます」
 この一言でつかみかけた「女神の後ろ髪」はスルリと小池の手から離れた。結党宣言からわずか4日後。ここから小池の負のスパイラルが始まった。
 小池は過去の成功体験から、発言は鋭角的断言型が世論の喝采を浴びると思い込んでいた節があった。だが、小池の口から出た「排除の論理」は小池の必勝パターンとは懸け離れたものだった。小池に支持が集まったのは、強大な権力を握る安倍自民党にたった1人で立ち向かう「ジャンヌ・ダルク」を思わせる姿にあった。
 ところが、「排除の論理」で小池が強者の側に立ってしまった。小池から人心が離れていくのは当然であった。逆に小池とたもとを分かった枝野幸男が立ち上げた立憲民主党が勢いを得て、野党第1党の座に就いた。

 (4)小池は、衆院選が終盤に差し掛かった段階で撤退を決めていた【小池側近】。「選挙戦を終えると、その足でパリに旅立ったのが何よりの証拠」とこの側近は語る。あとは撤退の段取り、体裁をどう整えるかしかなかった。結局、希望の党が獲得したのは50議席にとどまった。しかも、このうち9割は民進党出身議員。代表を継続しても、自民党で要職をこなしてきた小池にとっては、価値観や文化があまりに違う議員との政治活動に展望はなかった。
 さらに小池には大きなプレッシャーがのしかかった。各メディアの世論調査で「都知事に専念すべき」が7割以上を占めていることだ。
 とどめを刺したのが12日投開票の東京・葛飾区議選。都民ファーストの会から5人が立候補したが、当選したのはたった1人。しかも元民進党の議員。「小池失速」を決定的なものにした。

 (5)ここまで勢いを失った小池が都知事として求心力を回復できる保証はない。中でも二つの障害が立ちはだかる。
 第一、公明党の「小池離れ」だ。夏の都議選を小池との選挙協力で臨んだ公明党。都民ファーストの会に次ぐ第2党の座の確保に成功したが、自民党を敵に回した代償は大きかった。衆院選での後退につながったからだ。現に国政でも公明党の存在感に陰りが出始めている。都議会公明党幹事長の東村邦浩も共同通信の取材に対してこう答えている。
 「小池氏は都政を踏み台にした。今後は知事与党ではなく、是々非々で判断する」
 既に衆院選の段階で都議の音喜多駿と上田令子が都民ファーストを離れている。政府高官は「これからも離脱者が出る」と語る。都議会の足元が崩れては「都政専念」が絵に描いた餅に終わりかねない。

 (6)第二は、さらなる難題だ。首相官邸との溝だ。中でも昨年の都知事選に端を発した官房長官の菅義偉との確執解消は容易ではない。
 都政最大の課題は残り3年を切った東京五輪・パラリンピックを成功させることと、懸案の築地市場の豊洲移転問題をいかにスピーディーかつ円滑に決着させるかだが、いずれもパフォーマンス優先の小池の手法が自らの手足を縛って身動きが取れないのが実情だ。
 これを前に進めるにはとりわけ官邸の協力は欠かせない。ところが、選挙が終わって間もなく約1カ月というのに安倍や菅とのエールの交換すらない。もともと菅は都知事と国政の「二足のわらじ」を目指した小池に極めて厳しい見方をしていた。
 「できるはずがないじゃないか」
 小池の代表辞任を聞くと、「常識」と言い放った。

 (7)両者の勝敗は決した。小池が膝を屈して官邸に足を運べるかどうか。ますます菅が政権内での求心力を高めている中で、小池にとって「官邸の壁」は精神的にも大きな負担になっているはずだ。
 結局、小池の新党騒動は民進党を4分割しただけに終わった。
  (a)参院議員と地方議員が残った民進党
  (b)立憲民主党
  (c)元首相の野田佳彦や元代表の岡田克也らが集結する衆院会派の「無所属の会」
  (d)希望の党

 (8)中でも希望の党は、混乱収拾の出口が見えてこない。代表選で早くも立候補した玉木雄一郎と大串博志との間で憲法改正など基本政策をめぐって主張が大きく割れた。
 玉木が大勝して改憲勢力が主導権を握ったが、亀裂は残ったままだ。チャーター・メンバーの細野豪志らは人事で冷遇された。小池という核を失った希望の党の迷走はなお続く。その先には「分裂」の2文字が見える。

□後藤謙次「公明党の小池離れと官邸との溝/都知事に立ちはだかる二大障害 ~永田町ライブ!No.365」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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【中国】世銀ランキングが示す中国のビジネス環境鍵は「時間」の読み方

2017年11月27日 | 社会
 (1)10月末、世界銀行は15回目となるビジネス環境ランキングを発表した。中国の順位は習近平政権が始まった2013年から18も上昇したが、なお78位と厳しいものであった。

 (2)国家工商行政管理総局(中国の政府機関)によると、14年に行われた企業登録円滑化措置や商事制度改革などによって、国民の起業意欲は刺激されている。習氏が総書記に就任する直前の12年9月末と比較すると、17年9月末の企業総数は116.5%増の2,907万社、登録資金総額は242.3%増の274兆元(約4,658兆円)となった。
 17年の起業数は年間600万社のペース、個人事業主を入れると1,800万件のペースで、明らかに世界最速だ。しかし、ランキングは78位にとどまっている。なぜこのように低いのか。
 同ランキングでは、起業のしやすさを①スタート、②立地、③金融、④日々のオペレーション、⑤ビジネス環境の安全性の五つの面から評価している。
  ①と②に関しては、ビジネスを始めるための手続き自体は減っているのだが、手続き完了、建設許可、電気利用許可などにかかる時間が長い。筆者も北京に滞在するためビザや労働許可、口座開設などの各種の手続きをしているが、当人が実在するか否か、書類が正しいか否かなどのチェックが厳しい。
  多くの書類は正しい書き方というものが示されておらず、間違いがあればやり直しだ。手続きをする方だけでなく、チェックする方も間違う。詳細に管理して間違い・不正を防止しようという政府当局の姿勢に、ノウハウは必ずしも整っていない。
  ③については、資金調達が68位と、総合ランキングより高い評価となっているが、少数投資家の保護では119位と低い評価になっている。中国では、投資先の企業が経営危機に陥ったとき、資金力のある主要な株主はさっさと売り逃げし、一般の少数株主が損失を被るようなことが少なくない。そうした点が評価の低さにつながっている。
  ④については、税の受け払いや輸出入において時間がかかるということが評価を下げている。最近、中国はさまざまなものをどんどん電子化し、スピードを速めているというイメージがある。しかし税金については、電子的に申請できても実際の払い戻しには時間がかかる。輸出入では輸入に関する書類検査、通関手続き・検査の時間が長いとの評価だ。これらは中国のビジネスでの不確実性を高めている。
  ⑤では、契約執行への評価は5位と高い。破綻処理も56位で、回収率は37%と低いものの、執行時間や制度面への評価は低くない。「決めたことはやる」という状況は担保されている。

 (3)以上を見ると、中国のビジネスで最も読みにくいのは時間だ。一見定型化されている手続きでも、定型化が不十分であったり、制度や執行の状況が細かく変わったりするため、「何が正しいか」がよく分からなくなるのだ。
 中国でビジネスを展開するためには、意思決定は素早く行い、実行には十分な時間を確保することが肝要だろう。

□「【from 中国】世銀ランキングが示す中国のビジネス環境鍵は「時間」の読み方」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月2日号)
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 【参考】
【米国】ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~ハリウッドのパンドラの箱~
【米国】とメキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品 ~国境の街の反応は?~
【中国】日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由 ~日系コンビニ初の南京出店~
【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由
【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~
【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~
【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~

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【米国】ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~ハリウッドのパンドラの箱~

2017年11月25日 | 社会
 (1)「恋におちたシェイクスピア」「パルプ・フィクション」などで知られる米映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏をめぐるセクハラ(sexual harassment)疑惑が表面化したことで、ハリウッドが蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。
 米NBCテレビの人気バラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」も10月14日、皮肉たっぷりに同氏のセクハラ疑惑を取り上げた。コメディアンのケイト・マッキノンさんは老女優に扮して「ハリウッドでのセクハラは古くて新しい問題」と痛烈に批判した。
 ハリウッドで暴行を受けているのは有名女優だけではない。被害女性はどこにでもいる。パンドラの箱(Pandora's box)は開いた。そしてパンドラは怒っている。
 その後、まさにパンドラの箱が開いた状況になった。

 (2)米ニューヨーク・タイムズ紙が、独自の調査報道でワインスタイン氏の性的暴行(sexual assault)などを最初に明らかにしたのが10月5日。すると、グウィネス・パルトロウさんやアンジェリーナ・ジョリーさんら著名女優が、次々と被害に遭ったと名乗り出たのだ。
 被害者の女優が今まで黙っていた背景に何があるのか。いわゆる「キャスティングカウチ(casting couch)」だ。プロデューサーら実力者が女優に対して役と引き換えに性的関係を迫る行為のことだ。性的関係を受け入れなければハリウッドでは成功できない--。このように女優側は考えるわけだ。
 ワインスタイン氏以外のスキャンダルも次々と明らかになっている。その結果、米アマゾンの映画・ドラマ子会社、アマゾン・スタジオのトップを務めるロイ・プライス氏は休職に追い込まれ、「ラッシュアワー」などを手掛けた売れっ子監督のブレット・ラトナー氏は米映画大手ワーナー・ブラザースとの契約を切らなければならなくなった。

 (3)ソーシャルメディアを舞台に「Me Too(私も)」運動が広がっており、これからも被害者側からの告発が続きそうだ。
 ハッシュタグ「#MeToo」を使って「私も被害者」と名乗り出ているのは女優にとどまらない。男優もいるし、アーティストもいる。そのうちの一人はミュージシャンのレディー・ガガさんだ。
 ハリウッドでセクハラを助長する性差別主義(sexism)が根強いのはなぜなのか。
 地元紙の米ロサンゼルス・タイムズは「ハリウッドの隅々まで男性支配が徹底しているため」と指摘する。根拠にしたのが南カリフォルニア大学(USC)の調査だ。それによると、2016年に公開されたヒット作のうち監督の95%、脚本家の87%、プロデューサーの79%が男性だったという。
 だからこそ、ハリウッドは映画界の巨匠ロマン・ポランスキー氏にかねて同情的だったのだろう。性的虐待事件を起こして国外逃亡していた同氏が8年前にスイスで身柄を拘束されると、釈放を求める動きがハリウッドで広がったのである。その中心人物がワインスタイン氏だった。
 だが、パンドラの箱は開いた。ハリウッドでも男性支配の構図がいよいよ崩れ始めるかもしれない。

□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Pandora's box in Hollywood(ハリウッドのパンドラの箱) /ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~Key Wordで世界を読む No.166~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
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【米国】とメキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品 ~国境の街の反応は?~

2017年11月22日 | 社会
 (1)「メキシコとの国境に巨大な壁を建てて不法移民をシャットアウトする」
 そう公言して大統領になったトランプ氏。その壁の試作品8点が、カリフォルニア州のオータイメイサ地区に建設された。
 現地には荒涼とした平原が広がる。高さ9メートルの壁の試作品が並ぶ場所は公道から1キロメートル以上離れた所にあり、公道から壁は見えない。封鎖された入り口には監視カメラがあり、国境警備隊が24時間体制で警備している。今後数カ月で試作品8点の壁の強度をテストし、採用するタイプを決めるという。
 目と鼻の先のメキシコから国境を越えてくる貨物トラックが行き交うこの街には、事故車や中古車を激安で販売する店舗が並び、メキシコからの客でにぎわっている。その他には州刑務所があるぐらいで閑散としている。

 (2)街角のどこを探しても壁の建設に反対してデモをする市民の姿は見当たらない。
 大統領自らが壁の試作品の写真をツイッターで発信したほどホットな話題なのに、なぜ地元は静まり返っているのか。サンディエゴを拠点とする市民団体、「ボーダー・エンジェルス」のエンリケ・モロネス氏いわく、
 「壁の試作品に対して数千人規模で反対デモなどしたら、壁に全米の注目が集まってしまう。それではトランプの思うつぼ。私たちは壁の建設に強く反対するからこそ、あえてデモをしない戦略」

 (3)米国とメキシコの間の国境の長さは約3,200キロメートル。その3分の1にはすでにフェンスが設置されている。フェンスがない地域の多くが砂漠地帯だ。そこをメキシコ側から徒歩で渡るのが不法入国の主要ルートだが、「1994年以降、1万人以上がこの砂漠越えで命を落とした」とモロネス氏。大リーグ球団パドレスのマーケティング担当をしていた彼は、市民団体を立ち上げ、砂漠を歩いては、水のボトルをあちこちに配置してきた。
 「不法移民の命を助けることで、不法移民に加担している」と保守派のFOXニュースで糾弾されたモロネス氏は「水を置くのは命を救うため。摂氏45度の砂漠を歩く幼い子どもや母親が脱水症状で死んでいく。それを黙って見ていろと言うのか」と、砂漠に落ちていた子ども用のスニーカーの片方を見せながら反論する。米政府が壁を強化すれば、監視の目をかいくぐれる僻地の砂漠での死者が増えるだけで、移民問題の根本的解決にはならないとモロネス氏は言う。

 (4)米国内の不法移民の数は1,100万人規模だ。メキシコ人の不法移入は年々減少し、中南米からの不法移民の割合が高まっている。ドラッグや犯罪者の流入を国境で阻止すると公約し、保守派の支持を取り付けたトランプ大統領にとってみれば、壁の建設は支持率を左右する死活問題だ。だが、220億ドルと試算される壁建設の資金にいまだ米議会の承認が下りない。さらに、トランプ氏自らが選んだ国土安全保障省のトップ候補が「国境全体に壁を張り巡らせる必要はない」と発言したばかりだ。
 米軍の施設が多数あるサンディエゴは、ロサンゼルスよりも保守派の地盤が強いが、住民に聞いてみると「“美しい”壁より医療に税金を注入して」「壁の下にトンネルを掘れば入ってこられるから意味がない」という声も多かった。

□長野美穂(ロサンゼルス在住ジャーナリスト)「米・メキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品/国境の街の反応は?」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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【中国】日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由 ~日系コンビニ初の南京出店~

2017年11月20日 | 社会
 (1)日系コンビニエンスストアの中国における2016年末の店舗数は、セブン-イレブンが1,371、ファミリーマートが1,810、ローソンが1,003。いずれも日本の店舗数の1割程度にすぎない。それが、近年急激に増加している。
 その中で最近話題なのが、日系として初めて南京に進出したローソンだ。

 (2)ローソンが南京に進出したのは2017年8月。オープンするや否や大量の客が押し寄せ、2時間で日配食品は完売、2日目以降も爆発的に売り上げ、1日当たりの売上高(日販)が11.8万元(約200万円)に達する店舗も現れた。これはローソンが中国に進出して以来の最高記録である。
 中国の一般的なコンビニの日販は6,000元(約10万円)程度で、比べものにならない水準だ。さらに、2カ月後には別の店舗でなんと20万元(約340万円)の売り上げを突破した。ローソンの日本での全店平均日販55万円の6倍もの数字をたたき出したことになる。

 (3)現地では(2)を「ローソンの南京現象」と呼んでいるが、一体何が起こったのか。
 南京でのエリアフランチャイジーである南京中央商場集団の副総裁は、大きく三つの要因を挙げる。
  (a)南京は人口800万人の大都市だが、コンビニの多くは洗練されておらず、24時間営業の店舗もない、など消費者ニーズを満たしていなかった。そこに目を付け、ローソンは一部で24時間営業の店舗を出店したところ、消費者に受け入れられた。
  (b)南京中央商場集団が店舗開拓・運営やマーケティング、物流など現地オペレーションを担当し、ローソンが商品、運営指導、コールドチェーン設備、商品棚等の管理を担当した。この歯車がかみ合った。
  (c)コンビニという業態やローソンの認知度を高めるため、SNSや屋外広告、有名人の活用やネットアイドルによる試食など、あらゆるチャネルを通じてプロモーションを行ったことが功を奏した。

 (4)その他、営業していく中で見えてきたのが、南京ではスイーツや弁当といった食品に対するニーズが高いことが挙げられる。これらの売上高に占める比率は、上海の40%に対して南京は60~70%と高く、また商品の味とコストパフォーマンスも南京人にぴたりとはまった。南京地場のコンビニではローソンが提供しているような商品を提供できていないことも勝因だ。
 今後の南京での展開は、
   ・来年の出店計画は120~150店舗
   ・このうちフランチャイズ店は80~100店舗
と計画している。そして3~5年かけて全体で300~500店舗まで増やしていく計画だ。

 (5)南京現象といわれるだけあって、現時点でフランチャイズへの加盟希望者はなんと3,000人近くもいるという。
 中国ではフランチャイズに加盟しさえすればもうかるという安直な考えの人も少なくない。どれだけ効率よく管理していけるか、という課題はある。
 だが、これだけの希望者が殺到している現状を見ると、少なくともローソン側が選べる立場にあることは間違いない。
 店舗数では、ローソンはセブン-イレブンとファミリーマートの後塵を拝している。今後、南京現象を全国に広げることができるか。

□呉 明憲(TNCリサーチ&コンサルティング代表取締役)「日系コンビニ初の南京出店/日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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 【参考】
【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由
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【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~
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【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由

2017年11月17日 | 社会
 (1)このところタイとマレーシアで、外国人労働者に関連する規制が強化されている。
 タイ・・・・2017年6月23日、外国人を不法に就労させた場合、雇用主に40万~80万バーツ(約130万~260万円)の罰金を科す規制を施行した。
 しかし、多数の外国人が急激に出国するなど混乱が見られたことから、政府は施行を18年まで先送りし、7月24日から8月7日まで不法就労者の合法化登録を臨時で受け付けた。
 不法就労者68万9,091人の合法化を審議した結果、1万8,445人が不可となった。
 不法就労者は200万人に達していたとの見方もあり、年末に問題が再燃する可能性がある。

 (2)マレーシア・・・・三つの措置が導入された。
  (a)17年2月から、不法滞在外国人にE-Kadと呼ばれる一時的滞在許可証の発行を開始し、その申し込みを6月末で締め切った。E-Kadの有効期限は18年2月15日で、その間に合法的な労働者として正規の手続きを取るよう政府は求めている。なお、有資格者が60万人と推定されるのに対し、約16万人が申し込むにとどまった。締め切りを受けて、政府は不法就労の取り締まりを強化し、7月上旬までに外国人2,000人以上と44事業主を逮捕した。
  (b)10月2日から、外国人労働者の健康診断の際に、入国時に採取した指紋と照合することとした。身代わり受診をできなくして、健康基準を満たさない不法就労者を取り締まる。
  (c)18年から、外国人労働者の福利厚生について企業に責任を持たせるため、年次雇用税について労働者本人負担から企業負担に移行する。さらに19年には税額を引き上げる予定だという。

 (3)両国が規制強化に動いているのは、外国人労働者の劣悪な待遇が問題となったからだ。米国の人身取引報告書の14年版で、両国は4段階のうち最低ランクに格下げとなり、米国との通商協定を締結できなくなった。
 マレーシアは15年と17年に計2段階、タイも16年に1段階引き上げられ、最低ランクから脱した。
 それでも、両国で奴隷状態にある人の人口に占める比率は比較的高く、さらなる改善が求められる状況だ。

 (4)17年4月に今度は欧州議会が、20年以降欧州に輸入されるパームオイルは、生産過程で環境保護や人権保護の基準に合致したものに限ると決議した。
 マレーシアはパームオイルの主要輸出国であり、欧州向けにも人権侵害状態の改善を示す必要に迫られている。

 (5)外国人労働者に関する規制強化で、両国では労働者不足が顕在化している。このため、
  (a)タイ・・・・これまで肉体労働者と家政婦に限ってきた合法外国人労働者の受け入れを、他の職種にも広げることを検討し始めた。
  (b)マレーシア・・・・これまで業種別に外国人雇用比率が制限されていたが、輸出品の生産ラインについては外国人100%も認めることを検討している。
 それでも、両国の労働集約産業に、一定の打撃が及ぶことは避けられまい。
 また、両国で就労する外国人労働者からの本国への送金も下押し圧力を受ける。このため、カンボジアやミャンマーなど、労働者の主要な送り手国の経済への悪影響も生じる可能性があろう。

□稲垣博史(みずほ総合研究所アジア調査部主任研究員)「タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
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【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~

2017年11月14日 | 社会
 (1)2017年6月にセルビアの新首相に就任したブルナビッチ氏は、同性愛者であることを公表している。
 9月にはLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の祭典「ゲイ・プライド」にも参加した。これは同性婚や反差別などの法的権利を求める社会運動だ。
 しかし、セルビアではいまだ国民のほぼ半数が同性愛は直さなければいけない「病気」だと思っている(セルビアでは2008年まで、同性愛は「病気」だと公式に定義されていた)。10年のゲイ・プライドでは、ホモフォビア(同性愛者嫌悪)との衝突で150人が負傷し、14年まで祭典が中止されていたくらいだ。

 (2)セルビアではヴチッチ大統領が実権を握っている。そのヴチッチ氏が、昨年政治に参加したばかりの同性愛者であるブルナビッチ氏を、41歳の若さで首相に据えたのは、欧州連合(EU)に加入するためのアピールだろう。
 人権問題がEU加盟の足かせとなっているのはトルコだけではないのだ。

 (3)東欧ではいまだに宗教の力が国民の意識に大きな影響を与えている。
 特にポーランドではカトリック教会の影響力が強大で、同性婚に対しては攻撃的な姿勢を持っている。同国のLGBTへの差別に対する法律・規制はないに等しく、LGBTへの暴力や偏見は野放し状態だ。学校でもLGBTに対して否定的な教育を行っている。このため、ポーランド国民は17%しか同性婚を容認していない。
 また、ポーランドとラトビアでのホモフォビアは、国家主義と反EU運動にもつながっている。EUに加盟する前は同国に同性愛者などいなかったと、あたかも同性愛がEUの疫病であるかのような扱いをしているラトビアに至っては、同性婚を容認している国民は12%しかいない。

 (4)他方、西欧で最もリベラルなオランダでは82%、スウェーデンでは70%が同性婚を容認している。
 ドラノエ・元パリ市長、リビングストン・元ロンドン市長、01~14年の長期にわたってベルリン市長を務めたヴォーヴェライト氏など、要職に就いた人たちも自分がLGBTであることをカミングアウトしている。
 西欧・北欧では意外にも右翼がLGBTに対して理解を示し、場合によっては積極的にLGBTの権利をサポートしている。
 これは右翼の政治的な標的である移民の大多数がイスラム教徒だからだ。イスラム教では国によって強弱の差はあるものの、同性愛は憎悪の対象であり、死刑となる国もある。そのイスラム教との対峙をアピールするためもあり、西欧・北欧の右翼はLGBTを擁護する姿勢を崩していない。

 (5)米シンクタンクのピュー研究所によると、LGBTを容認する国は宗教色の弱い、豊かな西欧・北欧が占めている。その反面、宗教色の強い、貧しい東欧ではLGBTに対する偏見は根強い。また、東欧の国々がEUに加盟すると人権保護の意識が高まる、との希望的観測をする向きもあるが、EUにはLGBTの人権保護を強制する力はない。これらの国々がより豊かになり、民主的になるのを待つしかないだろう。
 LGBTの人権保護への捉え方の大きな隔たりは、EUにおける恒久的ともいえる東西の分裂をそのまま表している。

□竹下誠二郎(静岡県立大学経営情報学部教授)「もう一つの東西分裂 LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~

2017年11月12日 | 社会
 (1)10月25日、北京・人民大会堂。習近平・総書記が他の6人を引き連れて新たな政治局常務委員をお披露目した。李克強首相は続投、他の5人は政治局委員から昇格した。
 序列3位の栗戦書はパープル、序列5位の王滬寧がブルーのネクタイを着けて登場した。他の5人のそれはレッドを基調としている。
 5年前のお披露目会見では、中央規律委員会書記として“反腐敗闘争”を担当した序列6位の王岐山だけがブルーのネクタイを着けていた。
 彼ら3人の共通点は習との距離の近さ、そして習にとっての重要さである。習第1次政権において、栗と王は内政・外遊を問わず、常に習に付いていた。気兼ねなく習と接し、互いに何でも言い合える関係。「自分たちは特別なのだ」。レッドではないネクタイの色がそう物語っている印象を与えた。

 (2)今後、栗は国家安全、王はイデオロギーという、習が党の正統性を確保するために最重要視する分野を主に担当しつつ、常に習と行動を共にしていくに違いない。この人事から、習第2次政権も引き続き政治・経済・社会の各方面への統制が徹底される状況が続くであろう。
 王に代わって中央規律委員会書記として反腐敗闘争を担当するのは趙楽際。習と同じ陝西省の出身で、第1次政権では中央組織部長として「習に近い人間を中央の要職に引き上げるという意味で習を大いに助けてきた」【党中央幹部】。今期常務委員の中では最年少(60歳)だが、習と歩調を合わせつつ同闘争を“安定的”に実施していくものと目されている。

 (3)5年前の第18回党大会の時点ですでに常務委員入りが囁かれていた汪洋も、無事に常務委員入りを果たした。序列4位ということで、セオリー通りにいけば全国政治協商会議主席に就任する見込みだが、これまで国務院副総理として米中経済戦略対話を担当し、米国側からの信頼も厚い汪が、党の正統性という意味でもますます重みを増している対米関係で、どのような役割を担うのか注目される。
 外交という意味では、楊潔篪(よう・けつち)元外相が国務委員から政治局委員に昇格した。職業外交官が序列25位内に入ったのは故銭其琛(きしん・せん)以来であり、習政権が政治的に対外関係を重視している、換言すれば、外交政策を政治の論理でトップダウン化しようとしている意思の表れだとみることができる。日本の対中外交としては、より習と近いポジションで動けるようになった楊と、対話のチャネルと信頼関係を築くべきであろう。

 (4)経済政策は引き続き李が責任者として執行していくが、発言力は限られるだろう。今回の第19回大会で「習近平新時代における中国の特色ある社会主義思想」が行動指針として党規約に盛り込まれたことで、習が全ての分野で絶対的地位に在ることが制度化された。そんな習の分身である栗と王が経済政策を実質統括し、今回政治局委員に入った、習のマクロ経済ブレーンである劉鶴あたりが発言権を持っていくだろう。
 供給側構造改革を推し進めるという意味でも、習への権力集中の制度化が吉と出るか、凶と出るか。

□加藤嘉一(国際コラムニスト)「新任常務委員お披露目/ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月11日号)
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【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~

2017年11月11日 | 社会
 (1)10月22日の衆議院議員選挙では、「お願い」が多く、北朝鮮問題を語る候補が極めて少なかった。日本単独では何かをするのは難しいが、最大の外交問題として、その現状や国際的な取り組みについて語るべきではないか。日本の国会議員は、「平和」に慣れ過ぎていないか。

 (2)9月下旬、ワシントンで、米下院議員のテッド・ヨーホー・アジア太平洋小委員会委員長(フロリダ州選出)を記者団が取材した。9月15日、北朝鮮が発射した大陸間弾道ミサイルが北海道上空を通過し、襟裳岬の東約2,200キロメートルの太平洋上に落下した直後だ。米国民が、「今や、北朝鮮は、アジアだけの問題ではない」と自覚し始めた。
 同議員によると、選挙区であるフロリダ州で、7万5,000人の共和党員、民主党員、無党派層に電話調査をした結果、現在最も憂慮すべきこととして、北朝鮮問題が「ナンバーワン」に浮上した。
 「テロリズムなどの国家安全保障問題は、過去も常にナンバーワンだったが、北朝鮮に特定してというのは初めて」(同議員)

 (3)また、米大統領に対して「緊急時の特権」として連邦議会が承認する軍事力行使権使用承認(AUMF)についても、驚くほどあっさりと踏み込んで答えた。
 「AUMFが議会に要求されれば、おそらく可決されるだろう。現段階で、金正恩・北朝鮮最高指導者がやっていること以上に挑発的なことがあるとは思いたくはない。だが、万が一、北朝鮮が今よりもっと挑発的なことをすれば、私たちは何をするべきか、予想し、そして決めなくてはならない。しかし、その前に日本、韓国、同盟国、そして私たちの軍隊を攻撃するという布告があるだろう」
 ヨーホー・下院議員がここまで答えるということは、連邦議会全体での認識とみてもいいだろう。また、上下院議員は、与野党いずれであっても、有権者にこれだけの説明をする用意はあるということだろう。

 (4)さらに、現在の大統領がトランプ氏という従来の政治家ではないことで、「レッドライン(軍事行使に移る限界)」をどこに置くかも、これまでとは異なってくる。
 「過去の政権では、レッドラインは、見えないインクで描かれていた。しかし現在の政権は、何かをなすべきだと判断すれば、行動する政権だ」
 「例えば、シリアで4,000~5,000人の市民が化学兵器で虐殺されたという証拠が挙がった際、化学兵器使用禁止の条約があり、多くの国が署名していた。しかし、どの国も国際連合も何もしなかった。だから、トランプ大統領がミサイル攻撃を実行した」
 北朝鮮が核兵器を保有し、しかも、水爆実験まで行ったとなれば、米政権の出方は、日本を含め全世界が注視するところだ。

 (5)ヨーホー議員は、最終的には国際社会が経済制裁の重要性を理解するべきだと強調しながらも、これだけのことを話した。
 取材は、わずか20分。しかし、北朝鮮問題に対する有権者の懸念への答えを、明確に示した20分だった。

□津山恵子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)「トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン/北朝鮮は世界の問題に」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月4日号)
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2017年11月11日 | 社会
 (1)10月10日、英国の航空・防衛大手BAEシステムズは、来年1月から国内で約2千人の人員整理に着手する方針を発表した。本件は、7月に就任したウッドバーン新CEOが進める構造改革の一環と位置付けられている。

 (2)英国のGDPに占める製造業の比率は10%(2015年時点、以下同じ)で、ユーロ圏の17%や日本の20%と比べて小さい。
 しかし、航空、防衛、製薬といった先端分野では世界トップクラスの企業が存在している。特にBAEシステムズは、米国のロッキード・マーチン、ボーイングに次ぐ世界第3位の軍需企業であり、英国最大の製造業の一つに数えられる。同社の国内従業員数は約3万5千人と、英最大手自動車メーカーのジャガー・ランドローバーとほぼ同規模であるだけに、今回の人員整理計画は大きな波紋を呼んでいる。
 部門別の人員削減数は、航空機部門が1,400人、艦船部門が375人、サイバー/インテリジェンス部門が150人で、航空機部門の比率が高い。その背景にあるのは、戦闘攻撃機ユーロファイター・タイフーン(以下、ユーロファイター)の受注減少だ。ユーロファイターは、英・独・伊・スペインの4カ国が共同開発した機体で、これらの国では2000年代前半から導入が始まったほか、オーストリアや、サウジアラビアなどの中東諸国でも採用されている。
 ただし調達のピークは過ぎており、BAEシステムズの受注残は、現在確定しているものに限ると19年にはゼロになる見通しだ。9月にカタールがユーロファイターの購入を決定したことはプラス材料だが、今のところ導入スケジュールは未定であり、またサウジからの追加発注獲得交渉も遅延している。特に、サウジとカタールは6月に国交を断絶し、関係が大幅に悪化しているため、カタールへのユーロファイター供給が今後のサウジとの交渉に悪影響を及ぼす可能性も懸念されている。

 (3)人員整理計画に対して労働組合は強く反発しており、最大野党である労働党も政府に支援を要求している。しかし、ペリー産業担当大臣は、一企業の経営合理化の取り組みに政府が介入するのは適切でないとして、関与しない方針だ。

 (4)本件に関連して、雇用喪失という短期的な影響だけでなく、英国の戦闘機開発・生産能力の低下という中長期の影響も懸念されている。
 英国は、次世代戦闘機として米国等と共同開発したF35を導入するが、同機の開発主体はロッキード・マーチンであり、BAEシステムズを含む英国企業は部品の約15%と制御システムの一部を供給するにとどまる。
 また、ドイツとフランスが7月に発表した新型戦闘機の共同開発計画も英国にとっては打撃だ。ユーロファイターの共同開発時には方針の違いからフランスが離脱し、英独が開発の主軸となったこととは対照的な動きだ。直接には言及されていないが、英国の欧州連合(EU)離脱決定以降の英・大陸欧州間の隙間風や、マクロン・フランス大統領誕生を契機とした独仏の接近といった、欧州の外交的地殻変動の影響は否定できない。

 (5)航空機部門はBAEシステムズの売上高の半分以上を占めるため、その動向は同社の今後の命運を大きく左右することになるだろう。

□高山真(三菱東京UFJ銀行経済調査室ロンドン駐在)「英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ/英国のEU離脱も影響か」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月11日号)
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【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~
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【後藤謙次】安倍首相が描く改憲スケジュール ~高村正彦・党副総裁の続投表明~

2017年11月01日 | 社会
 (1)「幕が上がったときには芝居は終わっていた」
 永田町の常套句どおりの展開で衆院選挙はゴールを迎えた。首相の安倍晋三が衆院解散を最終決断し、新聞各紙が報じたのが9月17日。わずか1カ月余で終幕。
 しかも、これほどの目まぐるしいテンポで場面転換が連続したのは過去に例がない。安倍の「不意打ち解散」→小池百合子・東京都知事の動き→民進党代表の前原誠司との共演。一時は主役の座を小池が独占した。

 (2)「小池劇場」は連日札止め。小池が旗揚げした希望の党の「電波ジャック」に安倍が出る幕はなかった。安倍は街頭演説の場所すら事前に公表することなく、ゲリラ的に行うほど追い詰められていた。いわば歌舞伎座は小池に占拠され、“旅回り”を余儀なくされた。
 ところが小池の「排除の論理」が致命的な結果をもたらした。小池劇場に前原が率いる民進党の全員合流構想が頓挫したからだ。枝野幸男・元官房長官の立憲民主党、野田佳彦・前首相ら無所属グループに3分裂。
 この時点で安倍が主役の座を奪い返した。そして脇役トップに枝野が躍り出た。
 安倍は野党側の内紛、分裂に助けられ「漁夫の利」を手にした格好だ。前原が当初もくろんだ「1対1の対決構図」は完全に崩壊した。ここから選挙後の水面下の動きが始まった。分岐点は公示日翌日の10月11日だった。この日午前中にマスコミ各社と自民党本部が実施した全選挙区の情勢調査の結果が出そろい、「自公圧勝」の4文字がくっきりと浮かび上がった。

 (3)この日に放送されたテレビ朝日の「報道ステーション」は安倍と小池が攻守所を変えたことを象徴した。安倍に冗舌さが戻り、控えめな小池が目に付いた。安倍は初めて選挙後について語った。
 「外交の現場に行くと国民の信任を得たリーダーは強い影響力を持つんです」
 その上で米大統領、ドナルド・トランプの来日、11月11日からベトナムのダナンで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合への出席など外交日程に触れた。安倍の意をくんだかのように、ホワイトハウスは16日になって11月5日からの大統領の訪日を正式に発表した。さらに来日時に、北朝鮮に拉致された横田めぐみの両親、滋・早紀江夫妻にトランプが面会することも同時に公表された。選挙戦の終盤に差し掛かったところで放たれた絶妙のアシストボールといえた。

 (4)外交日程だけではない。安倍は番組の中で、憲法改正問題に関連して高村正彦・自民党副総裁の続投を表明した。
 「国会議員でなくても副総裁は務められる。任期の間は務めてもらいたい」
 高村はこの衆院選を機に政界引退を表明しており、常識的には副総裁を辞めるものとみられていた。高村の任期は2018年9月の自民党総裁選まで。非議員の副総裁は「余人をもって替え難い」(自民党幹部)重要な使命を帯びる。高村は説明するまでもなく安倍が執念を燃やす憲法改正をめぐる党内調整の中心的存在。図らずも安倍が高村続投を表明したことで、安倍が選挙後に憲法改正に向け本気で取り組む意向を示すことになった。

 (5)これまでも安倍は憲法改正に向けて着々と手を打ってきているが、選挙後は与党の自公に加え、希望、日本維新の会が改憲勢力に名を連ねる可能性が高く、総仕上げの段階に入るに違いない。自民党は選挙公約の柱に「憲法改正を目指す」と書き込んだ。さらに改正の対象として「自衛隊の明記」「教育の無償化」「緊急事態対応」「参院の合区解消」--を挙げた。これも初めてのことだ。
 この4項目のうち、安倍が目指す改憲の核心が憲法9条改正にあることは言うまでもない。安倍は9条に関して第1項の「戦争放棄」と第2項の「戦力不保持」をそのまま残し、新たに自衛隊の存在を憲法上に明記する「加憲」の考えを明らかにしている。
 この加憲方式はもともと公明党が「環境権」など時代とともに新たに生まれた価値観、概念を盛り込むことを意図したもので、9条改正については慎重な姿勢を貫く。今回の選挙公約でも直接9条には触れず、別紙の中に書き込んだ。
 「多くの国民は自衛隊の活動を支持し、憲法違反の存在と考えていない」
 憲法解釈を変更して安保法制を制定した段階で、9条改正の意味は薄れたと解しているからだ。しかし、仮に自民党が希望と維新と連携して9条改正に向かうとなると、連立与党を構成する立場として極めて難しい立場に追い込まれる可能性が出てくる。

 (6)安倍は8月3日の内閣改造後の記者会見で、「初めにスケジュールありきではない」と明言、改憲論議に一時的にストップを掛けた印象を与えていたが、選挙情勢の好転により再び、「スケジュールありき」に転じたとみていい。
 それでは安倍はどんなスケジュールを描いているのだろうか。まずは2018年9月の自民党総裁選で3選を果たすことが次の大きなハードル。それを越えると2019年の参院選が視野に入ってくる。
 参院は今も改憲勢力が憲法改正発議に必要な3分の2以上の議席を有しているが、19年参院選ではこれを維持できる保証はない。つまりこれから先2年間の政治スケジュールを俯瞰すると、19年参院選と同時に憲法改正の国民投票が見えてくる。「安倍改憲」はそこまで来ている。

□後藤謙次「党副総裁の続投表明に透ける首相が描く改憲スケジュール ~永田町ライブ!No.361」(「週刊ダイヤモンド」2017年10月28日号)
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 【参考】
【後藤謙次】自民党優位、希望の党苦戦の裏で注目高まる無所属ネットワーク
【後藤謙次】「希望の党」の失言が引き起こした民進党解体 ~政治は一言で動く~
【後藤謙次】選挙戦の主導権握った小池新党 ~舞台裏は「細川劇場パート2」~
【後藤謙次】前代未聞の「トランプ解散」へ ~日程に伴う大きな北朝鮮リスク~
【後藤謙次】再々改造は権力構造を変える ~事実上の「古賀・菅連合内閣」~
【後藤謙次】急浮上する電撃解散説 ~ダブル補選と内閣支持率急落の絡み合い~
【後藤謙次】反自民の受け皿になれないし、小池知事との連携も困難 ~民進党~
【後藤謙次】内閣改造は「専守防衛」でも活路が見えない「守りの安倍」
【後藤謙次】経世会(額賀派)・宏池会(岸田派)・石田茂 ~都議選大惨敗後の動き~
【後藤謙次】安倍首相の改憲案の前倒し発言 ~「年内解散」に向けた思惑~
【後藤謙次】支持率急落で首相が「反省の弁」 ~それでも止まらぬ内部文書流出~
【後藤謙次】憲法改正発議までの長い道のりが賭のリスクに ~天皇退位・総裁選・衆院選~ 
【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~
【後藤謙次】安倍1強時代を揺るがすリスク ~森友学園問題で一躍「渦中の人」~
【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~
【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~
【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花
【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~
【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~
【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~
【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた

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【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~

2017年10月29日 | 社会
 (1)神戸製鋼所による検査データ改ざんや日産自動車の不適切検査のニュースは、東南アジアのメディアでも連日大きく取り上げられている。
 今やアジアでも見慣れたお決まりポーズ「平身低頭」の画像とともに、「チーティング・スキャンダル」などという不名誉な見出しが紙面やインターネット上を席巻。かつては日本の技術や厳格さを信じていたアジアの人々に、「もはや日本の大手企業も信用できない」という負のイメージが刷り込まれ続けている。
 三菱自動車、タカタ、東芝などの不祥事の記憶が新しい(まだ終わっているわけではない)中、アジアで事業展開する日本企業の人々からは、「いい迷惑だ」「もううんざりだ」との声が上がる。一方で、「他人事ではない」との不安も垣間見える。

 (2)スキャンダル性が高いがゆえにニュース性が高くなる。実直で生真面目だとみられている人が世界中の人たちをまんまと騙せば、その対比・乖離ゆえに衝撃的なストーリーになりやすい。日本のビッグネームによる不祥事が海外メディアで大きく取り上げられる理由の一つは、その「意外性」だ。
 シンガポールにいるさまざまな国籍の実業家やジャーナリストから、「日本企業は一体どうしたのか?」という質問をよく受ける。技術的欠陥、データ改ざん、ルール違反、粉飾決算など問題の現れ方に違いはあるものの、これだけ矢継ぎ早に大企業の大不祥事が起こり、謝罪会見の様子が頻繁に流れると、もはや個別企業による単発的な問題というふうには見てくれない。
 突き詰めれば、ちまたで言われている通り個別の企業統治の問題なのだろう。だが、海外においては、「果たして日本企業、日本人は信用できるのか?」という疑念を抱かれる。

 (3)いま日本企業は、モノやサービスを成長著しいアジア市場にも積極的に販売しようと四苦八苦している最中だ。自動車、家電、食品などの消費者向けにせよ、機械、部品、素材などの企業向けにせよ、日本や欧米市場と比べて価格や仕様の水準が総じて低いアジア市場での販売は楽ではない。
 日本企業が政府と共に戦略的に売り込もうと躍起になっているインフラ建設にしても然り。価格が少々(あるいは相当)高くても日本が選ばれるとすれば、それは技術水準もさることながら、品質・工程管理やアフターケアがしっかりしていて、安心して任せられると信じているからだろう。
 ところが、日本企業全体のイメージに傷が付けば、アジア市場での闘いはますます厳しくなる。日本が強調したい優位性に対して、疑いの目が向けられかねないからだ。

 (4)日本企業が設定する基準や目標が多くの面で厳し過ぎる、現実的ではない、という意見もある。そうなのかもしれない。東京大学工学部卒のマレーシア人経営者が、日本企業がアジア企業のようにもう少し「柔軟」「いいかげん」であれば、多くの問題は問題とならない、と語っていた。アジアの空気を長く吸っていると、不思議と納得してしまう。
 しかし、いずれにせよ、何とかしなければいけない。個別企業の努力も必要だろうが、日本の産業界全体の問題である。この正念場を乗り越えなければ、アジア市場はさらに遠のく。

□矢野暁(シンガポール在住企業アドバイザー)「度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜/アジア商戦にも逆風」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月4日号)
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 【参考】
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
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【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~


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【後藤謙次】5連勝を呼び込んだ「進次郎節」 ~内容的には「薄氷の勝利」に近い~

2017年10月29日 | 社会
 (1)「手を合わせて拝みたいぐらいの数字だ。希望の党に感謝したい」
 衆院選の開票が進んだ10月22日深夜、自民党の最高幹部は思わず本音を漏らした。
 首相の安倍晋三が繰り出した“禁じ手”ともいえる「奇襲解散」。だが、選挙戦序盤ではそれをはるかに凌ぐ勢いが東京都知事、小池百合子の希望の党にはあった。安倍が受けた衝撃は半端ではなかった。多くの自民党議員が下野を覚悟したはずだ。
 「総理が自公で過半数の233議席を目指すと言ったのは掛け値なしの本心だ」
 前記の幹部はこう語る。

 (2)ところが、逆転大勝利。振り返って最大の功労者として小泉進次郎の名前を前記の幹部は挙げた。
 自民党で今や発信力と好感度で彼の右に出る者はいない。その小泉の発信力が「小池劇場」の崩壊を呼び込んだというのだ。小泉は9月28日昼の衆院本会議で解散が断行されると、国会議事堂の廊下で記者や多くのテレビカメラに向かって小池を挑発した。
 「小池さんに出てきていただき、夢と希望を語る自民党と、希望を語る希望の党、希望対決でいいじゃないですか。(小池は)いつ出馬表明するのか。もう都議会に心はないんじゃないか」
 小池は希望の党の結党と党代表への就任を宣言していたものの、衆院選への出馬については言葉を濁す。小泉はそこを突いた。小池も反論せざるを得なくなった。
 「進次郎さんが(出馬しろと)キャンキャンはやし立てるが、お父さん(元首相の小泉純一郎)と約束しているから出馬はない。知事としてやっていく」
 ここから小池は出口のない迷路に入り込んでいく。そこに「排除の論理」が飛び出す。小池の勝ちパターンはジャンヌ・ダルクのように強い敵にたった独りで立ち向かうことにあったが、小池の誤算が始まった。

 (3)逆に小池の上から目線、おごりが元官房長官の枝野幸男を中心とする立憲民主党を誕生させた。選挙の主役は完全に枝野に移った。小池とタッグを組んだ前原誠司・民進党代表がもくろんだ「1対1の与野党対決」の構図は音を立てて崩れ落ちた。選挙の意味合いも「政権選択選挙」から「安倍信任選挙」に大きく変わった。しかも大都会はともかく、地方の有権者には「安倍1強」に不満があっても受け皿がない。今回の衆院選を総括すれば「敵失による自民大勝」ということに尽きる。
  (a)現に、スキャンダルで民進党を離党して無所属で立候補した山尾志桜里が僅差で勝ち残れたのは、山尾以外に野党が候補者を立てずに自民党の鈴木淳司(比例復活当選)との「1対1」の戦いになったからだった。
  (b)新潟で自民党が苦戦したのにも、共産党を巻き込んだ野党共闘の成立が背景にあった。

 (4)小池と前原の思惑は無残に砕け散った。前原は失敗を認め代表辞任の意向を示し、小池には希望の党内から代表更迭の声が上がる。都知事としての職務遂行すら危ぶまれる事態に追い込まれた。

 (5)確定議席で自民党は選挙公示前の議席と全く同じ284。だが、比例代表での得票率を見ると自民約33%に対して立憲民主約20%、希望約18%。これに無所属当選者の得票を加えると自民党を大きく上回る。外見上は「大勝」とはいえ、内容的には「薄氷の勝利」に近い。「選挙に負けて勝負に勝った」というのが実態に近い。選挙中にも内閣支持率が下がっていたことがそれを証明する。
 確かに安倍はこの衆院選の結果、2012年12月の衆院選で政権復帰を果たして以来、衆院3回、参院2回の選挙5連勝を成し遂げた。近く発足する内閣は「第4次政権」。戦後では「第4次」を冠した政権を担ったのは吉田茂だけ。
 しかし、選挙に大勝したものの次の政策目標が見えてこない。安倍の宿願ともいえる憲法改正も議席数から見れば可能性は高いように思えるが、それほど単純なことではない。「自民独り勝ち」が逆に、改憲の阻害要因になる可能性が高いからだ。
  (a)足元の公明党の動向だ。公明党は今度の選挙で公示前議席の34から5議席も減らして29議席。7月の東京都議選で公明は小池と組んで勝利して都政与党の座を占め、一方で国政では安倍連立政権の一翼を担う。代表の山口那津男は「国政は国政、都政は都政」と語るが、有権者の目には「いいとこ取り」としか映らない。自民党の首相経験者の一人も「やがて都政では小池知事と距離を置き始める」と指摘する。
  (b) 改憲勢力として「安倍応援団」とみられる日本維新の会も議席を減らした。

 (6)自民党内でも、今回の衆院選で自公の選挙協力が円滑に行われなかったことを認める幹部が多い。1999年10月に自公連立が始まってから既に18年。「制度疲労」が起きても不思議はない。
 憲法改正をめぐっても微妙な温度差がある。とりわけ安倍が目指す9条改正でその差が浮き彫りになる。公明党には憲法改正について一貫した考えがある。衆院選後も山口は繰り返した。
 「幅広い合意形成が大事だ。野党第1党の理解を得て合意できることが望ましい。国民の理解が伴うことも重要だ」

 (7)山口が危惧した、野党第1党に改憲に反対する立憲民主党が躍り出たことが大きな意味を持つ。その立憲民主党が選挙後の野党再編の中核になるのは確実だろう。
 立憲民主党にも希望の党にも行かず、無所属で当選した野田佳彦・前首相、岡田克也・元外相、玄葉光一郎ら実力者をブリッジに希望の党の一部と再結集を目指す動きが早くも表面化している。玄葉はこう語る。
 「立憲民主が左に行き過ぎず、希望が右に行き過ぎなければ政権の大きな受け皿ができる」

 (8)加えて安倍にとっての最大の敵は目に見えない国民世論の動向だろう。
 憲法改正も国会の発議まで持ち込んでも、国民投票という最大のハードルが待ち構える。英国のEU離脱をめぐる国民投票で国論が二分され、キャメロン政権が吹き飛んだことは記憶に新しい。国民投票の怖さを安倍も十分知っている。つまり安倍が高い内閣支持率を維持し続けなければとても改憲はおぼつかない。なおかつ、その前に来年9月の自民党総裁選が立ちはだかる。
 自民党幹事長の二階俊博は「ポスト安倍は安倍」と明確に安倍の3選を支持しているが、安倍自身は「全く白紙」を繰り返す。その一方で今回の選挙戦を通じて「次の顔」が明確になってきたのも事実だ。
  (a)筆頭は石破茂(60)・元自民党幹事長
  (b)岸田文雄(60)・政調会長
  (c)野田聖子(57)・総務相
  (d)新顔といってもいいかもしれない河野太郎(54)・外相

 (9)そして安倍にとって思わぬ「落とし穴」が潜む。
  (a)長期政権に対する「飽き」だ。安倍がどんなに優れたリーダーであったとしても、これだけはコントロールできない人間の感情が支配する領域に属するからだ。しかも具体的な処方箋があるわけではない。さらにこの選挙を機に前総裁の谷垣禎一ら党の“重し”が次々と政界を去ったことも安倍にとって目に見えない不安材料といっていいだろう。
  (b)不透明感を増す外交も安倍にとって重い。とりわけ国家主席の習近平への権力集中が進んだ中国とどう向き合うのか。11月5日には米大統領のドナルド・トランプが初来日する。
  (c)日米同盟の強化はともすると日本外交の自由を奪うことにもなりかねない。安倍を教科書のない政権運営が待ち構える。安倍は支え棒のない不安定な高いはしごの上にいるような状況に身を置くことになった。

□後藤謙次「5連勝を呼び込んだ「進次郎節」/吉田政権以来の第4次内閣発足 ~永田町ライブ!No.362」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月4日号)
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【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
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【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
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【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~

2017年10月28日 | 社会
 (1)「日本人は『世界一の味覚』を持ち合わせている」
 そう信じて疑わない日本人は、多いかも。
 確かに、昆布などから抽出されるグルタミン酸、鰹節などから抽出されるイノシン酸、椎茸などから抽出されるグアニル酸をはじめ、複数の旨みを感じ取り、それらを掛け合わせることで、さらに強い旨みを引き出す日本料理は繊細だ。それを“DNAレベル”でキャッチしている日本人の味覚は、研ぎすまされているといえる。
 また、四方を海に囲まれ、生魚を食べ続けてきた日本人の「魚の鮮度」に対する要求レベルは世界一だろう。味噌や醤油といった酵母を使った発酵調味料のバリエーション、それらに対する思いやこだわりは世界の中でも相当なものだろう。

 (2)自らの味覚に「自信や誇り」を持つことは大切なことだ。
 しかし、その自信の一方、日本人は隣国中国人の「食生活の環境」を、どのような目で見ているだろうか。
 「空気が悪く、劣悪な環境で、偽装された危険な食品を食べている、少し可哀想な人たち」
 少し言い過ぎかもしれないが、そんなネガティブなイメージを持っている人が大半なのではないか。

 (3)だが、中華料理は4000年の歴史を誇る世界三大料理の一つである。強い火力で仕上げるダイナミックなイメージがあるが、実は同じ炒めるにも「炒(チャオ:油少なめで炒める)」と「爆(バオ:より強火で一気に炒める)」がある。
 煮るにも「煮(ジュ:煮る)」「炖(デゥン:煮込む)」「熬(アオ:ぐつぐつ煮る)」と、細かく火力を使い分けて調理する繊細な面も持ち合わせている。
 中国語で風味を表現する言葉に、「香味(シアンウェイ)」と「腥味(シンウェイ)」がある。一般的に、心地いいと感じる香りを「香味」、不快に感じる香りを「腥味」と使い分けているのだが、注目すべきは「腥味」だ。通常あまり使わない漢字だが、日本語でも「腥」は「腥(なまぐさ)い」と読む。
 日本人がキャッチしていない生臭さ「腥味」。
 〈例〉卵とミルク風味の「カステラ」。誰もが聞いただけでイメージできる、この美味しそうな匂いに対し、「生臭い」と感じる日本人がいるだろうか。
 中国人は、このカステラの中の卵に、“生臭いニオイ”を感じ嫌う人が多いのだ。

 (4)藤岡久士氏が、上海の中心部にある久光百貨店という商業施設内に「どら焼き屋」を開店したとき、「どら焼き」の皮にこの「腥味」を感じると指摘されて売れず、対応に苦労した。
 彼らは、同じく、「海の魚」をはじめ多くの海産物に対しても「腥味」を強く感じると指摘する。
 多くの日本人が好む海の魚が持つ磯の風味も、中国人には生臭いと感じる部分があるらしい。
 中国で、「いりこ」や「あご」を使った魚介系の出汁(だし)が敬遠されるのは、この「腥味」に起因するところが大きい。
 一方で、中国人は「雷魚」や「草魚」、「鮒」や「鯉」といった、日本人が泥臭く感じて、広く食用としては流通していない淡水魚の中に、海の魚よりも魚本来の“味(風味)”を感じるという。日本人とは、無意識にキャッチする風味が異なるのだ。

 (5)もっとも現在では、中国でも海の魚は珍重され、高値で取引されている。
 この現象だけ取り上げると、歴史的に周囲を海に囲まれた日本人は、海の魚を食べることができたが、中国は海産資源が乏しいため、川や沼に生息する泥臭い魚を食べざるを得なかったと分析することもできる。

 (6)しかし、食文化というのはその土地や地域で長い年月を掛けて培われてきたものである。
 単純に日本人の物差しで測れるものではないというのが俯瞰した物事の見方ではないか。
 すなわち、恐らく中国人は泥臭い川魚を海の魚の代替として仕方なく食べているのではなく、「それが好きで食べている」と考えるのが素直な捉え方だろう。
 「魚の鮮度」を語り、こだわる日本人は多いと思うが、「鶏の鮮度」を語る日本人はどれだけいるだろうか。
 もちろん、日本人が鶏肉にこだわりがないわけではない。日本には多くの地鶏が存在し、それぞれが飼料や飼育方法にこだわり、「歯ごたえ」や「旨み」「香り」といった自慢の味を武器にしのぎを削っている。
 一方、中国に日本のような地鶏ブームは存在しない。その代わり、鮮度には非常にうるさいのだ。
 このように言うと、中国に比べ日本は衛生管理に優れており、そもそも鮮度の悪い鶏が存在しないため、鮮度を語る習慣がないと受け止める方もいると思うが、そうではない。
 SARS(サーズ)が猛威を振るい、生きた動物の食用取引が規制された2003年まで、中国では鶏は購入時にその場で絞めてもらうのが普通であった。
 彼らは日本人が知らない、「活き絞め」の鶏の美味しさをよく知っているのだ。

 (7)しばしば日本国内でも繰り広げられる、「どこの地域の人の舌が一番肥えているか」という論議。
 実際のところ、美味しい不味いは趣味嗜好の問題である。
 稀に万国共通で美味いものは美味いというロジックが成り立つ食品がある一方、その地域の歴史や文化と共に培われてきた味覚は、当然、地域によって異なるということを理解すれば、新たに見えてくることもあろう。
 とはいえ、人が自らの味覚に「自信と誇り」を持ち続ける限り、この手の論議が語り尽くされることはあるまい。

□藤岡久士(ゼロイチ・フード・ラボCEO)「中国で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月4日号)
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【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~

2017年10月25日 | 社会
 (1)中国経済が「新常態(中高速の経済成長)」に入ってはや5年。従前、年200万社弱で推移していた起業は、2017年は年600万社ペースに加速している。個人事業主としての起業を含めると年1,800万件ペースだ。
 足元の起業は2割が工業、8割がサービス業で、工業では食品、通信機器関連、雑貨などが多く、ロボットや電気自動車などは注目されているが、全体から見れば少数だ。サービス業では、小売りや飲食、個人向けサービスが多い。電子商取引や宅配の普及によって、工業では商品作りが容易になり、家計では買い物が容易になった。こうした新しい環境が起業を活発にしている。

 (2)起業後の状況を見ると、小売り・飲食と比べれば数は少ないが、ハイテクベンチャーの活動が活発だ。未公開企業のデータベースサービスのCB Insightsによると、9月時点での株式評価額10億ドル以上のスタートアップ企業、いわゆるユニコーンは、世界で214社ある。米国の108社に続き、中国は55社で2位につけるまでになった。日本はメルカリの1社だけだ。

 (3)ハイテクベンチャーで最も注目されている人工知能(AI)産業では、世界の投資の5割を米国が占めるが、中国も3割を占め、米中2強時代を迎えている。筆者は7月に、アリババ本社がある浙江省杭州市で開催された「中国人工智能大会」に参加したが、世界レベルの研究者や若手技術者、華僑ビジネスマンが多く参加していた。中国のAI産業は、シリコンバレーの技術を直接持ち込んでいるというのが実態に近いが、シリコンバレーには中国人が多く、途切れない人材、情報の往来が、今の展開に結び付いている。

 (4)起業の地域分布を見ると、最も数が多いのは広東省であり、昨年79万社が誕生した。上位は江蘇省、山東省など人口の多い省が占めるが、ハイテクベンチャーでは北京市、広東省、浙江省が3大地域だ。ユニコーンでは上位5社のうち3社が北京市の企業である。
 他方、昨今北京市は「ハイテクハブ」と化している。中国のシリコンバレーと呼ばれる北京・中関村のハイテク企業は、市外の支社が1万2,000に達し、全国展開を加速させている。
 中国の起業ブームでは、設立された企業の7~8割は数年で廃業・倒産している。今年6月には、通販大手京東グループが2月に設立した中古品取引企業が閉鎖され、年初開業のシェアバイク「悟空」も破綻した。

 (5)ベンチャーキャピタル(VC)に持ち込まれる新事業のうち投資が実施されるのはわずか1%。生き残るのはさらに少ない。しかし、8割が数年で消失しても100万社、VCが投資するような企業でも数千~数万社が残る計算になる。9月19日付の「人民日報」は、中国のインキュベーター(起業を支援する企業)を卒業した企業は8.9万社で、そのうち上場企業は1,871社と紹介している。

 (6)なお、課題となっているのは人材確保だ。ブレーンとなる高度人材も労働者も不足している。年700万人を超える大学新卒や帰国人材の争奪戦が起きており、各地の地方政府は給与補填や住宅補助などの誘致策を打ち出すまでになっている。

□鈴木貴元(丸紅(中国)有限公司経済調査総監)「ユニコーンが55社/加速する起業ブーム/課題は人材の確保」(「週刊ダイヤモンド」2017年10月28日号)
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 【参考】
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
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